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5章【外交編・モットー国】
16 指名手配
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「はっはっはっ……っはぁ……っ」
「〈まだそこへばるとこじゃないぞー。しっかり走れー〉」
(うぅ、つらい……)
現在砂浜でランニング中。なのだが、普通の砂地とは違って柔らかくサラサラとした砂に足を取られて思いのほか体力を奪われる。
「〈一歩一歩が深すぎる。さっさと走れー〉」
「〈は、はーい!!〉」
自分から言い出した手前、あまり強くは言えないがキツすぎるのではないだろうか。だが、隣で私同様に走っているメリッサは涼しい顔をして並走しているのを見て、自分の体力のなさに打ちひしがれる。
「〈メリッサ、疲れない?〉」
「〈……慣れてる〉」
(慣れてるのかぁ……)
ということは、私よりも体力がある気がする。考えてみれば、師匠のとこに長くいるんだし、師匠の年も考えればサポートで色々することもあるだろう。
私よりもまだ若いというのに、この体力差を見せつけられると張り合うよりも自分の衰えを感じてしまった。
(いやいや、私だってまだ10代だし!メリッサに負けててどうすんのよ)
自らに言い聞かせて、再び士気を取り戻して走り出す。その後日がてっぺんに昇りきるまで、延々と砂浜を走らされたのだった。
「〈うーーーーー、疲れたぁ……〉」
「〈何をそんな腑抜けたことを言っておる。さて、昼食作りは任せたぞ〉」
「〈え!?私がやるの!??〉」
「〈何を言ってるんじゃ、当たり前じゃろう。強くなりたいんじゃろう?であれば、こんなトレーニングのあとでぐうたらしてる暇はないじゃろう?〉」
「〈はーい……〉」
師匠は言いたいことだけ言うと、そのままどこかへ行ってしまう。
なんだか程のいい小間使いにされてる気もしないでもないが、ここで不満を言っててもしょうがないのでとりあえず疲労で重くなった身体を奮い起こし、立ち上がった。
「〈あたしも手伝う〉」
「〈ありがとう。じゃあ、メリッサには豆を潰してもらおうかしら〉」
「〈ん。得意〉」
「〈それは頼もしいわね〉」
小さな身体で皮を剥いた豆を力いっぱいヘラで潰すメリッサ。やはり普段から手伝いをしているのだろう、多少拙さはあるものの慣れた様子で豆をすり潰していく。
「〈いつもお手伝いしてるの?〉」
「〈ん。じーちゃん、たまに具合悪いときあるから〉」
「〈そうなの?それって病気とか……?〉」
「〈わかんない。でももう治らないんだって〉」
「〈そう……〉」
(師匠、自分の死期も悟って……)
恐らくもう自分は永くないのだとわかって、私にメリッサを託したということか、と複雑な気分になる。
年齢も年齢だ、持病がいくつあっても不思議ではない。そもそも長寿の部類に当たるだろう。こうして身を隠しながら生ているのもきっと身体に支障をきたす一因にはなっているはずだ。
「〈ステラが私を旅に連れていってくれるの?〉」
「〈えぇ、そうよ〉」
既に師匠から話をしてくれたらしい。どういう風に話したかは不明だが、旅というくらいだから明るいイメージで話したのだろう。
……きっともうこれが師匠との永遠の別れになるだろうことは、メリッサが気づいていないのだと思うと胸がギュッと苦しくなった。
「〈あたし、お城とここにしか住んだことないし他のところ行ったことないから、楽しみ〉」
「〈そうなの?〉」
「〈ん。へーしに見つかると大変だし、あたしはしめーてはいされてるから、あんまりうろうろしちゃダメだってじーちゃんに言われてた〉」
(指名手配)
まさか自分以外にも指名手配がいるだなんて。というか、師匠から聞いてないぞ、この情報。あとで師匠に問い詰めなくては。
指名手配が2人に怪我人1人で遠路国境を越え、ブライエまで。しかも、2人は女でそのうち1人は子供だ。
「大丈夫かしら……」
急に不安に思いながらそう呟くと、メリッサは他国語でわからなかったせいか、首を傾げていた。
「〈まだそこへばるとこじゃないぞー。しっかり走れー〉」
(うぅ、つらい……)
現在砂浜でランニング中。なのだが、普通の砂地とは違って柔らかくサラサラとした砂に足を取られて思いのほか体力を奪われる。
「〈一歩一歩が深すぎる。さっさと走れー〉」
「〈は、はーい!!〉」
自分から言い出した手前、あまり強くは言えないがキツすぎるのではないだろうか。だが、隣で私同様に走っているメリッサは涼しい顔をして並走しているのを見て、自分の体力のなさに打ちひしがれる。
「〈メリッサ、疲れない?〉」
「〈……慣れてる〉」
(慣れてるのかぁ……)
ということは、私よりも体力がある気がする。考えてみれば、師匠のとこに長くいるんだし、師匠の年も考えればサポートで色々することもあるだろう。
私よりもまだ若いというのに、この体力差を見せつけられると張り合うよりも自分の衰えを感じてしまった。
(いやいや、私だってまだ10代だし!メリッサに負けててどうすんのよ)
自らに言い聞かせて、再び士気を取り戻して走り出す。その後日がてっぺんに昇りきるまで、延々と砂浜を走らされたのだった。
「〈うーーーーー、疲れたぁ……〉」
「〈何をそんな腑抜けたことを言っておる。さて、昼食作りは任せたぞ〉」
「〈え!?私がやるの!??〉」
「〈何を言ってるんじゃ、当たり前じゃろう。強くなりたいんじゃろう?であれば、こんなトレーニングのあとでぐうたらしてる暇はないじゃろう?〉」
「〈はーい……〉」
師匠は言いたいことだけ言うと、そのままどこかへ行ってしまう。
なんだか程のいい小間使いにされてる気もしないでもないが、ここで不満を言っててもしょうがないのでとりあえず疲労で重くなった身体を奮い起こし、立ち上がった。
「〈あたしも手伝う〉」
「〈ありがとう。じゃあ、メリッサには豆を潰してもらおうかしら〉」
「〈ん。得意〉」
「〈それは頼もしいわね〉」
小さな身体で皮を剥いた豆を力いっぱいヘラで潰すメリッサ。やはり普段から手伝いをしているのだろう、多少拙さはあるものの慣れた様子で豆をすり潰していく。
「〈いつもお手伝いしてるの?〉」
「〈ん。じーちゃん、たまに具合悪いときあるから〉」
「〈そうなの?それって病気とか……?〉」
「〈わかんない。でももう治らないんだって〉」
「〈そう……〉」
(師匠、自分の死期も悟って……)
恐らくもう自分は永くないのだとわかって、私にメリッサを託したということか、と複雑な気分になる。
年齢も年齢だ、持病がいくつあっても不思議ではない。そもそも長寿の部類に当たるだろう。こうして身を隠しながら生ているのもきっと身体に支障をきたす一因にはなっているはずだ。
「〈ステラが私を旅に連れていってくれるの?〉」
「〈えぇ、そうよ〉」
既に師匠から話をしてくれたらしい。どういう風に話したかは不明だが、旅というくらいだから明るいイメージで話したのだろう。
……きっともうこれが師匠との永遠の別れになるだろうことは、メリッサが気づいていないのだと思うと胸がギュッと苦しくなった。
「〈あたし、お城とここにしか住んだことないし他のところ行ったことないから、楽しみ〉」
「〈そうなの?〉」
「〈ん。へーしに見つかると大変だし、あたしはしめーてはいされてるから、あんまりうろうろしちゃダメだってじーちゃんに言われてた〉」
(指名手配)
まさか自分以外にも指名手配がいるだなんて。というか、師匠から聞いてないぞ、この情報。あとで師匠に問い詰めなくては。
指名手配が2人に怪我人1人で遠路国境を越え、ブライエまで。しかも、2人は女でそのうち1人は子供だ。
「大丈夫かしら……」
急に不安に思いながらそう呟くと、メリッサは他国語でわからなかったせいか、首を傾げていた。
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