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4章【外交編・サハリ国】
73 友人代表
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「【では、これから施術にかかりますね】」
「【お願いします……って、マーラ様!?】」
侍女の声かけに頷き、顔を上げると見慣れた顔があり、よく見るとマーラがなぜかそこにいた。
一体急にどうしたんだろうか。
「いたら悪いですか?」
「え、いやそういうことではないですけど。てか、え、なぜここに?」
「ステラの友人ということで代表してワタクシもお手伝いに呼ばれたのですわ」
「な、なるほど」
先程、ヘナタトゥーは花嫁の身近な人がやると言っていたことを思い出す。確かに、コルジールの人達は皆男性だし、親しい友人と言われたらあのメンバーではマーラ一択になるだろう。
言い方は随分と冷たいような気もするが、わざわざ来てくれているということは一応は友人代表として来てくれているという解釈でいいのだろうか。
あまり突っ込んで聞いて不貞腐れられても困るから、あえて聞かないが。
「マーラ様は絵がお上手なんですか?」
「それなりには描けるほうだとは思いますわ」
「そうなんですね。では、お手数ですがよろしくお願いします」
身体から力を抜くと、侍女達やマーラが私の脚や腕に専用の筆を走らせる。感触としてはちょっとくすぐったい気もするが、痛みはなく、少しして慣れれば気にならないくらいだった。
下書きはなしで、みんなすべてフリーハンドで描いているから凄いと思う。一応、マーラ用に見本となるデザインの紙が用意されていて、それを見ながら筆を私の肌の上を滑らせているのだが……
(う、上手い……!)
いや、失礼ながらも言うほどでもないかとタカを括っていたが、ところがどっこいめちゃくちゃ上手い。
「マーラ様、とてもお上手ですね。普段よく絵をお描きになられてたんですか?」
「手慰み程度ですけど。これくらいでしたら誰でも描けるのではなくて?」
さらっと言われてしまって、絵画の才能が皆無な私はグサっとナイフで刺されたような衝撃を受ける。
いや、まぁ、周りみんなの実力がいかほどかは正直わからないものの、みんながこのレベルを普通に描けるのだとしたらちょっと悔しい。
絵に関しては、なぜか無機物できっちりした形のものは得意ではあるものの、こうした動植物となると途端に描けなくなる。我ながら不思議で仕方ないが、苦手なものは苦手なのだ。
だがこうしてサラサラと目の前で描かれると、素直に尊敬する。よくもまぁ、こうも見本通りに描けるものである。
「あまりじろじろ見ないでくださる?」
「あ、あぁ、ごめんなさい。つい、お上手で釘付けになってしまって」
話しながらも、するすると筆が滑らかに滑っていく。そして、腕に可愛らしい鳥が浮かび上がってくる。これは、スズメだろうか。
「そういえば、ブランシェ国王と親しくなってたんですね」
「!!」
不意に、思い出したことを口走れば筆があらぬ方向へと脱線した。明らかに動揺してる様子で、挙動がおかしくなっている。
「ななななな何ですか、突然。藪から棒に……!」
「あ、いえ。ブランシェ国王からちょっと聞いたので」
「あの方、何ておっしゃってましたの?」
「いえ。たまたま出会して会話したとしか聞いておりませんが……」
「そ、そう。えぇ、そうなんですのよ。ちょっと、たまたま出会しましてね、ふふふ」
非常に焦った様子で失敗した箇所を拭いている。この様子的に明らかに何かあっただろう、とも思うが、多分マーラにこの件を追及しても頑なに言わなそうだ。
ブランシェにもはぐらかされてしまったし、気にはなるが聞き出すなら別の手段を模索した方が良さそうである。
「あぁ、別にブランシェ国王とステラの間にお邪魔しようとかそういうことなど微塵も思っておりませんからね。そこはご安心くださいな。あくまでワタクシの意中にいるのはクエリーシェル様、ただお1人ですので」
「はぁ、……そうですか」
(別にそこは気にしてないけど。いや、むしろクエリーシェルを諦めてくれらほうがこちらとしてはありがたいが)
そう、本音を言うわけにもいかないので大人しくしておく。
「【お願いします……って、マーラ様!?】」
侍女の声かけに頷き、顔を上げると見慣れた顔があり、よく見るとマーラがなぜかそこにいた。
一体急にどうしたんだろうか。
「いたら悪いですか?」
「え、いやそういうことではないですけど。てか、え、なぜここに?」
「ステラの友人ということで代表してワタクシもお手伝いに呼ばれたのですわ」
「な、なるほど」
先程、ヘナタトゥーは花嫁の身近な人がやると言っていたことを思い出す。確かに、コルジールの人達は皆男性だし、親しい友人と言われたらあのメンバーではマーラ一択になるだろう。
言い方は随分と冷たいような気もするが、わざわざ来てくれているということは一応は友人代表として来てくれているという解釈でいいのだろうか。
あまり突っ込んで聞いて不貞腐れられても困るから、あえて聞かないが。
「マーラ様は絵がお上手なんですか?」
「それなりには描けるほうだとは思いますわ」
「そうなんですね。では、お手数ですがよろしくお願いします」
身体から力を抜くと、侍女達やマーラが私の脚や腕に専用の筆を走らせる。感触としてはちょっとくすぐったい気もするが、痛みはなく、少しして慣れれば気にならないくらいだった。
下書きはなしで、みんなすべてフリーハンドで描いているから凄いと思う。一応、マーラ用に見本となるデザインの紙が用意されていて、それを見ながら筆を私の肌の上を滑らせているのだが……
(う、上手い……!)
いや、失礼ながらも言うほどでもないかとタカを括っていたが、ところがどっこいめちゃくちゃ上手い。
「マーラ様、とてもお上手ですね。普段よく絵をお描きになられてたんですか?」
「手慰み程度ですけど。これくらいでしたら誰でも描けるのではなくて?」
さらっと言われてしまって、絵画の才能が皆無な私はグサっとナイフで刺されたような衝撃を受ける。
いや、まぁ、周りみんなの実力がいかほどかは正直わからないものの、みんながこのレベルを普通に描けるのだとしたらちょっと悔しい。
絵に関しては、なぜか無機物できっちりした形のものは得意ではあるものの、こうした動植物となると途端に描けなくなる。我ながら不思議で仕方ないが、苦手なものは苦手なのだ。
だがこうしてサラサラと目の前で描かれると、素直に尊敬する。よくもまぁ、こうも見本通りに描けるものである。
「あまりじろじろ見ないでくださる?」
「あ、あぁ、ごめんなさい。つい、お上手で釘付けになってしまって」
話しながらも、するすると筆が滑らかに滑っていく。そして、腕に可愛らしい鳥が浮かび上がってくる。これは、スズメだろうか。
「そういえば、ブランシェ国王と親しくなってたんですね」
「!!」
不意に、思い出したことを口走れば筆があらぬ方向へと脱線した。明らかに動揺してる様子で、挙動がおかしくなっている。
「ななななな何ですか、突然。藪から棒に……!」
「あ、いえ。ブランシェ国王からちょっと聞いたので」
「あの方、何ておっしゃってましたの?」
「いえ。たまたま出会して会話したとしか聞いておりませんが……」
「そ、そう。えぇ、そうなんですのよ。ちょっと、たまたま出会しましてね、ふふふ」
非常に焦った様子で失敗した箇所を拭いている。この様子的に明らかに何かあっただろう、とも思うが、多分マーラにこの件を追及しても頑なに言わなそうだ。
ブランシェにもはぐらかされてしまったし、気にはなるが聞き出すなら別の手段を模索した方が良さそうである。
「あぁ、別にブランシェ国王とステラの間にお邪魔しようとかそういうことなど微塵も思っておりませんからね。そこはご安心くださいな。あくまでワタクシの意中にいるのはクエリーシェル様、ただお1人ですので」
「はぁ、……そうですか」
(別にそこは気にしてないけど。いや、むしろクエリーシェルを諦めてくれらほうがこちらとしてはありがたいが)
そう、本音を言うわけにもいかないので大人しくしておく。
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