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4章【外交編・サハリ国】
10 現状把握
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「船長、起きてください、時間です!」
カンカンカンカン……っ!
船長室に入室する前にノックをしたものの返事がないので、とりあえず仮眠室に入って手近にあった鐘を鳴らしてみる。
「ん?んあ、あぁ……っ!い、今起き……っあ、あれ?なぜ嬢ちゃんがここにいるんだ」
慌てて起きたせいか、いつにも増して髪はボサボサで服は乱れ放題な船長が飛び起きる。案外、船長は寝汚いタイプらしい。この先程鳴らした鐘も、恐らく普段から彼が起きてこないから設置されているのだろうことが推察される。
「ちょっと船長に用事があると言ったら起こすのを仰せつかりました」
「あぁ、あいつら起こすの面倒だからって嬢ちゃん使ったな……。あ?で、話って何だ。急用か?」
頭をガシガシと掻きながらこちらを見る船長。寝汚いわりには寝起きはよく、機嫌も悪くなさそうである。ちなみに態度が悪いのは元々だ。
「まぁ急務といえば急務ですが、とりあえず身なりを整えていただければと」
「あ?別に普段と変わらねぇけど……」
「よだれ出てますし、さすがにそれはちょっと見苦しいです。いくら身内ばかりとはいえ、それなりに身繕いはされたほうがよろしいかと思いますよ」
「へーへー、承知でさーね」
渋々と言った様子で備え付けられている割れた鏡で身嗜みを整え始める船長。普段そんなことに気をつけてないことはわかるが、一応自分も淑女としてそれくらいは物申しておきたかった。
「これでどーよ」
「大丈夫です。で、お話なんですが」
「あぁ、どうした」
単刀直入に切り出す。船長ももったいぶって話されるよりもその方がいいのだろう、すぐに話に乗ってきた。
「最近、物がなくなることが頻発してると聞きまして」
「あーー、あれな。パリスがセイレーンが紛れ込んだと大騒ぎしてるやつ」
頭をガシガシと掻きながら苦笑してるが、やはり多少なりとも懸念していたらしいことが見て取れた。
「実際に船内の状況はどうなんですか?」
「あーー、いいか悪ぃかで言ったら悪いな。最初は誰かしらがやっちまったのかと思ったが、明らかに配分考えずに食糧は減るし、色々なくなってるもんもあって、それぞれ疑心暗鬼になってるところもあるからな。できりゃ、早々に片付けたい案件ではあるなぁ」
確かに、身内の犯行かと疑心暗鬼になる心理もわからなくない。閉鎖空間で限られた人数しかいないのだから、どのような心理に陥っても仕方ないだろう。
そしてもし内部犯でなければ、第3者が紛れ込んでいるということだ。
私としてはその可能性のほうが高いと思うが、いかんせん乗船の際に人数を数えているわけだし、それなのに別の誰かがいるかもしれないというのは心霊系の類が嫌いな人物にとっては恐怖でしかないだろう。
どちらにしろ、船員達の士気に関わることなので、解決するなら早めでないとならない。
「そうですよね。ちなみに、何か他に情報ってありますか?」
「ん?そうだなぁ、見たやつは髪長い女だって言ってたが。ちなみに、あんたじゃねぇんだろ?」
まさかのキラーパスにびっくりするものの、現状この船での女は私だけだ。確かに疑われても無理はない。
「ち、違いますよ。私はそこまで食い意地張ってませんし、取る理由がないですから」
「だよなぁ。っつーわけで、多分お前さん以外に女がいるようだ。それはそれで厄介だから、できれば嬢ちゃんが見つけてくれりゃあありがたいがねぇ……」
「まぁ、そうですね。……どなたかが隠してるわけでないのなら」
そう。私以外にもし女性がいて、しかも誰かが見つけて監禁などしてる場合は厄介だ。男性が多く、肉体労働ばかりしている男性がそういう欲を持て余すことなど想像に難くない。
なので、いくら侵入者が悪いとはいえそういう捌け口にされてたりなどしていたら後味が悪い。そのため、できれば見つけるのは船員ではなく私やクエリーシェル、ヒューベルトが最も適していた。
「とにかく、承知しました。早急に探し出そうと思いますので、ちょっとお手伝いなどできませんがよろしいでしょうか?」
「あぁ、別に嬢ちゃん達を元々運航に関して頭数に入れちゃぁいねーから、気にすんな」
「ありがとうございます。早速確認してきます」
「あー、頼んだ。船員達にはなるべく客室とかの方にはいかせねぇようにはしとくわ」
「ありがとうございます」
重ねて礼を言うと、そのまま頭を下げて船長室を出る。あまり大きくない船とはいえ、隠れられたり逃げられたりしたら厄介である。
(手分けして探さなきゃな)
まずはクエリーシェルとヒューベルトを呼んで話さなくては、と彼らを先に探しに行くのだった。
カンカンカンカン……っ!
船長室に入室する前にノックをしたものの返事がないので、とりあえず仮眠室に入って手近にあった鐘を鳴らしてみる。
「ん?んあ、あぁ……っ!い、今起き……っあ、あれ?なぜ嬢ちゃんがここにいるんだ」
慌てて起きたせいか、いつにも増して髪はボサボサで服は乱れ放題な船長が飛び起きる。案外、船長は寝汚いタイプらしい。この先程鳴らした鐘も、恐らく普段から彼が起きてこないから設置されているのだろうことが推察される。
「ちょっと船長に用事があると言ったら起こすのを仰せつかりました」
「あぁ、あいつら起こすの面倒だからって嬢ちゃん使ったな……。あ?で、話って何だ。急用か?」
頭をガシガシと掻きながらこちらを見る船長。寝汚いわりには寝起きはよく、機嫌も悪くなさそうである。ちなみに態度が悪いのは元々だ。
「まぁ急務といえば急務ですが、とりあえず身なりを整えていただければと」
「あ?別に普段と変わらねぇけど……」
「よだれ出てますし、さすがにそれはちょっと見苦しいです。いくら身内ばかりとはいえ、それなりに身繕いはされたほうがよろしいかと思いますよ」
「へーへー、承知でさーね」
渋々と言った様子で備え付けられている割れた鏡で身嗜みを整え始める船長。普段そんなことに気をつけてないことはわかるが、一応自分も淑女としてそれくらいは物申しておきたかった。
「これでどーよ」
「大丈夫です。で、お話なんですが」
「あぁ、どうした」
単刀直入に切り出す。船長ももったいぶって話されるよりもその方がいいのだろう、すぐに話に乗ってきた。
「最近、物がなくなることが頻発してると聞きまして」
「あーー、あれな。パリスがセイレーンが紛れ込んだと大騒ぎしてるやつ」
頭をガシガシと掻きながら苦笑してるが、やはり多少なりとも懸念していたらしいことが見て取れた。
「実際に船内の状況はどうなんですか?」
「あーー、いいか悪ぃかで言ったら悪いな。最初は誰かしらがやっちまったのかと思ったが、明らかに配分考えずに食糧は減るし、色々なくなってるもんもあって、それぞれ疑心暗鬼になってるところもあるからな。できりゃ、早々に片付けたい案件ではあるなぁ」
確かに、身内の犯行かと疑心暗鬼になる心理もわからなくない。閉鎖空間で限られた人数しかいないのだから、どのような心理に陥っても仕方ないだろう。
そしてもし内部犯でなければ、第3者が紛れ込んでいるということだ。
私としてはその可能性のほうが高いと思うが、いかんせん乗船の際に人数を数えているわけだし、それなのに別の誰かがいるかもしれないというのは心霊系の類が嫌いな人物にとっては恐怖でしかないだろう。
どちらにしろ、船員達の士気に関わることなので、解決するなら早めでないとならない。
「そうですよね。ちなみに、何か他に情報ってありますか?」
「ん?そうだなぁ、見たやつは髪長い女だって言ってたが。ちなみに、あんたじゃねぇんだろ?」
まさかのキラーパスにびっくりするものの、現状この船での女は私だけだ。確かに疑われても無理はない。
「ち、違いますよ。私はそこまで食い意地張ってませんし、取る理由がないですから」
「だよなぁ。っつーわけで、多分お前さん以外に女がいるようだ。それはそれで厄介だから、できれば嬢ちゃんが見つけてくれりゃあありがたいがねぇ……」
「まぁ、そうですね。……どなたかが隠してるわけでないのなら」
そう。私以外にもし女性がいて、しかも誰かが見つけて監禁などしてる場合は厄介だ。男性が多く、肉体労働ばかりしている男性がそういう欲を持て余すことなど想像に難くない。
なので、いくら侵入者が悪いとはいえそういう捌け口にされてたりなどしていたら後味が悪い。そのため、できれば見つけるのは船員ではなく私やクエリーシェル、ヒューベルトが最も適していた。
「とにかく、承知しました。早急に探し出そうと思いますので、ちょっとお手伝いなどできませんがよろしいでしょうか?」
「あぁ、別に嬢ちゃん達を元々運航に関して頭数に入れちゃぁいねーから、気にすんな」
「ありがとうございます。早速確認してきます」
「あー、頼んだ。船員達にはなるべく客室とかの方にはいかせねぇようにはしとくわ」
「ありがとうございます」
重ねて礼を言うと、そのまま頭を下げて船長室を出る。あまり大きくない船とはいえ、隠れられたり逃げられたりしたら厄介である。
(手分けして探さなきゃな)
まずはクエリーシェルとヒューベルトを呼んで話さなくては、と彼らを先に探しに行くのだった。
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