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4章【外交編・サハリ国】
3 嵐
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「舵の固定ーー!大きい波が来るぞ!みんな掴まれぇーーーーー!!振り落とされるなよーーーーーー!!」
予想してたよりもずっと激しい波が来る。ゴォゴォと唸るような強い風に殴りつけるような豪雨。バリバリバリと聞いたことのない轟音を伴う雷鳴と共に、稲妻が近くでいくつも落ちていく。
水面はどす黒く濁り、落雷が水面を照らすが底なし沼のように何も見えなかった。まるで早く何かを飲み込もうとする怪物かのように感じる。
(何これ……凄い)
視界は非常に悪く、さらに波の激しさも相まって、自分が船に立てているのかさえわからないほどの嵐だった。一瞬でも気を抜けば、こんな己のヒョロヒョロで細くて軽い身体などあっという間に吹き飛ばされるだろう。
船はギシギシと悲鳴を上げ、身体が何度も跳ね上がるほどの揺れ。船体がまるで弄ばれているかのごとく、シーソーのように前後左右に激しく不安定に何度も傾く。
雨でぐっしょりと濡れてしまった身体は重く、強風もあってとても寒いが、それどころではなく立っているのに必死だった。
「リーシェは戻れ……!」
「いえ!こういう時は人数が必要ですから!!」
「だが……!!」
「ケリー様はそちらのロープをめいいっぱい引っ張ってください!!」
ほぼ叫びながら自分が握っているロープをしっかりと握り締める。ギリギリギリ、と徐々にロープが引っ張られてしまってはいるものの、どうにか掴んで離さないように意識を集中させる。
(握る握る握る。離さない離さない離さない……!)
「いいか、一気にここを抜けるぞ!」
船長に呼応するように「おおおぅ!!!」と船員達が声を上げる。さすがに熟練された船乗り達のようで、連帯感を感じた。
ごうんごうん、ギギギギ……!
ざっぱぁぁぁ……ゴォォォォ……!!
バリバリバリ!ピシャーン……ドォーン……!!!
一体何の音なのかさえわからない音が、あちらこちらから聞こえる。騒音だらけで船長の声を聞き漏らさないように、神経を集中させる。
嵐を切り抜けるには、この一帯を抜けるのが手っ取り早い。そのため、下手に居座るよりも風を受けて一気に加速して進むのがよいのだが、それが意外に難しい。
そもそも風を真正面からきちんと受けきれないと、船体がねじ切れるように崩壊する。浮力と重力、さらに風と波を予測して角度を意識して進行しないとあっという間に海の藻屑となってしまうのだ。
そのため、船長の号令は絶対だった。そして、連携がきちんと取れないと船は瞬く間に沈没してしまうので、いくら聞き取れなかったからと言ってぼんやりしていたら命取りなのだ。
もちろん、この高等技術のためには人員は多ければ多いほど良いので、私に船室に戻って嵐をやり過ごすという選択肢はなかった。
「面舵いっぱーーーーーい!帆を吹っ飛ばされるなよー!!!」
「あいあーい、キャプテン!!!」
船が一気に傾く。ふわっと身体が浮くのを感じて、「ヤバっ!」と思った瞬間、後ろから手が伸びてくる。
「飛ばされる気か……!」
「すみません、ありがとうございます……!!!」
クエリーシェルがすんでのところで掴んでくれたおかげで、身体が海の中に放り出されずに済んでホッとする。
「しっかりと掴まっていろ!」
「ありがとうございます!」
クエリーシェルにくっつき、適当にあったロープを身体と船体に巻きつける。何かあれば船と共に道連れであるが、そもそもこんなところで沈没したら誰も助からない。
(こんな嵐乗り切れずに、皇帝が倒せるか……!!)
マストに落雷しないことだけを祈る。もしマストに落雷して火事にでもなったら操舵どころではなくなってしまう。不運なことにならぬように祈り続けながら、私はクエリーシェルと共に船長の指示に従い、ロープを操っていく。
嵐を抜けた頃にはもう全員ヘトヘトで、日差しが眩しく甲板にへばっていると、船長から怒号が飛び、みんなで慌てて船の状態を確かめるのだった。
予想してたよりもずっと激しい波が来る。ゴォゴォと唸るような強い風に殴りつけるような豪雨。バリバリバリと聞いたことのない轟音を伴う雷鳴と共に、稲妻が近くでいくつも落ちていく。
水面はどす黒く濁り、落雷が水面を照らすが底なし沼のように何も見えなかった。まるで早く何かを飲み込もうとする怪物かのように感じる。
(何これ……凄い)
視界は非常に悪く、さらに波の激しさも相まって、自分が船に立てているのかさえわからないほどの嵐だった。一瞬でも気を抜けば、こんな己のヒョロヒョロで細くて軽い身体などあっという間に吹き飛ばされるだろう。
船はギシギシと悲鳴を上げ、身体が何度も跳ね上がるほどの揺れ。船体がまるで弄ばれているかのごとく、シーソーのように前後左右に激しく不安定に何度も傾く。
雨でぐっしょりと濡れてしまった身体は重く、強風もあってとても寒いが、それどころではなく立っているのに必死だった。
「リーシェは戻れ……!」
「いえ!こういう時は人数が必要ですから!!」
「だが……!!」
「ケリー様はそちらのロープをめいいっぱい引っ張ってください!!」
ほぼ叫びながら自分が握っているロープをしっかりと握り締める。ギリギリギリ、と徐々にロープが引っ張られてしまってはいるものの、どうにか掴んで離さないように意識を集中させる。
(握る握る握る。離さない離さない離さない……!)
「いいか、一気にここを抜けるぞ!」
船長に呼応するように「おおおぅ!!!」と船員達が声を上げる。さすがに熟練された船乗り達のようで、連帯感を感じた。
ごうんごうん、ギギギギ……!
ざっぱぁぁぁ……ゴォォォォ……!!
バリバリバリ!ピシャーン……ドォーン……!!!
一体何の音なのかさえわからない音が、あちらこちらから聞こえる。騒音だらけで船長の声を聞き漏らさないように、神経を集中させる。
嵐を切り抜けるには、この一帯を抜けるのが手っ取り早い。そのため、下手に居座るよりも風を受けて一気に加速して進むのがよいのだが、それが意外に難しい。
そもそも風を真正面からきちんと受けきれないと、船体がねじ切れるように崩壊する。浮力と重力、さらに風と波を予測して角度を意識して進行しないとあっという間に海の藻屑となってしまうのだ。
そのため、船長の号令は絶対だった。そして、連携がきちんと取れないと船は瞬く間に沈没してしまうので、いくら聞き取れなかったからと言ってぼんやりしていたら命取りなのだ。
もちろん、この高等技術のためには人員は多ければ多いほど良いので、私に船室に戻って嵐をやり過ごすという選択肢はなかった。
「面舵いっぱーーーーーい!帆を吹っ飛ばされるなよー!!!」
「あいあーい、キャプテン!!!」
船が一気に傾く。ふわっと身体が浮くのを感じて、「ヤバっ!」と思った瞬間、後ろから手が伸びてくる。
「飛ばされる気か……!」
「すみません、ありがとうございます……!!!」
クエリーシェルがすんでのところで掴んでくれたおかげで、身体が海の中に放り出されずに済んでホッとする。
「しっかりと掴まっていろ!」
「ありがとうございます!」
クエリーシェルにくっつき、適当にあったロープを身体と船体に巻きつける。何かあれば船と共に道連れであるが、そもそもこんなところで沈没したら誰も助からない。
(こんな嵐乗り切れずに、皇帝が倒せるか……!!)
マストに落雷しないことだけを祈る。もしマストに落雷して火事にでもなったら操舵どころではなくなってしまう。不運なことにならぬように祈り続けながら、私はクエリーシェルと共に船長の指示に従い、ロープを操っていく。
嵐を抜けた頃にはもう全員ヘトヘトで、日差しが眩しく甲板にへばっていると、船長から怒号が飛び、みんなで慌てて船の状態を確かめるのだった。
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