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2章【告白編】
25 大切なもの
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ポトフにソテーにサラダに、あとはパンとデザートができれば昼食の完成だ。ロゼットもポトフの味見をして、いい塩梅だったのか、盛り付けを始める。
デザートはリンゴパイだが、今焼いてるパンのあとに焼けば食後にちょうどいいだろう。パンは旬のクランベリーを使ったパンだ。そろそろの仕上がりで、キッチン内にはいい匂いが立ち込めている。
「そういえば、船旅って約1年間でしたっけ?そんなにリーシェさんがいないのは、私も寂しいです」
「すみません、ご一緒できなくて」
「いえいえ、そういうことではなくて。単に寂しいんです。ほら、1年って長いでしょう?あぁ、でも、留守はお任せください!私とバースが責任持ってしっかりこなしますので」
「ありがとうございます。でも、長くて1年ですので、早ければ半年で帰ってきますよ」
さすがに、今回の船旅に連れて行けるメンバーは限られている。長い船旅に耐えられ、かつ能力や知識を持ち合わせている人しか連れて行けない。そのため、ロゼットには留守番を任せることになった。もちろんバースもだ。
一応、グリーデル大公達にも話を通してあるので、私の素性はある程度知られてしまったものの、このクエリーシェルの城にダリュードやマルグリッダを派遣してくれるということで、ロゼットやバースのことを気にかけてくれることになった。
(誰が敵かわからないけど、それはそれで疑心暗鬼になってしまうのは相手の思うツボ。信頼できる人は多いに越したことはない)
グリーデル大公は多少の驚きはあったものの、私の素性に関して、そこまで驚愕はしなかったそうな。クエリーシェルがある程度話していたのかと思っていたけど、そうではないらしい。
曰く、そういう素養が漏れているとのこと。あまり意識してはなかったが、それはそれでちょっとまずいかな、という危機感を多少感じた。
「私、そんなに立ち振る舞いが違います?」
「まぁ、うーん、メイドというよりかは、貴族寄りではあるかな?」
「そうなんですね……」
クエリーシェルに確認したが、歯切れ悪い感じで返される。ということは、クエリーシェルにも、私の素性をバラす前から何かしら疑念は抱いていたということだろう。
自国ではじゃじゃ馬と評されていたが、それでもやはりマナーや立ち振る舞い等は厳しく躾けられていたので、自分ではわからなかったものの、目につくくらいにはそれなりの振る舞いをしていたらしい。
(ちょっと気をつけないと)
とりあえずコルジールでの振る舞いは今後の課題として、あとは船旅の準備だ。人材も、この情勢で多くの手練れは連れて行けないし、船酔いも心配だ。船酔い用の薬もある程度用意しておかないと。
(武器も薬も食糧も、あれにこれにそれに……)
メンバーの選定に、積荷の準備、航路や各国への手土産。考え過ぎて頭がパンクしそうだ。自ら提案したとはいえ、なかなかハードではある。
戦況もいつ変わるかわからないし、できるだけ早くは帰ってきたい。だからあまり寄り道等はできないし、下手に海賊なんかに襲われて誰かが負傷しても困る。
自分も足手まといにはなりたくないので、「乙女の嗜み」を用意するだけでなく体力や武芸の腕を磨かなくては。芸は身を助けるというし、実際に一見無駄なような知識や芸が役立っている人生なので、引き出しは多ければ多いほどよい。
(なんだか、安らかに死ぬことから遠ざかっているけど、これはこれで充実している気がする)
今まで、ただ生きていただけの人生が色づいていくのがよくわかる。何も希望もなく、ただ静かに生を終えれば良かったと思っていたのに、案外私は貪欲だったらしい。
生きるなら精一杯、自分がやれることをやりたい。それが人のためになったら尚良い。そして今は、この国を守り抜きたい、とそう思う。
(私はこの国で骨を埋める覚悟をした。そのためには生半可な覚悟ではダメだ)
やるなら徹底的に。そうしなければ、今回の船旅は全く意味をなさない。これは命がけの仕事であり、コルジールという国家の命運がかかっている。
住んでいるからわかる、この国の良さ。今まで様々な国を渡り歩いてきたけれど、その中でもこの国は特別だ。
コルジールが特別なのは、単に住みやすい、空気が馴染む、ということもある。だが、それよりも何より、クエリーシェルが私に居場所をくれたから、というのが大きい。
帰る家がある。私を待ってくれる人がいる。それだけで力が湧くし、頑張れる、やる気に繋がる。
(私はもうひとりぼっちでも、家なしでもない。ちゃんと待ってくれる人が、居場所がここにある)
だからこそ、この国を守りたい。ペンテレアの二の舞にしたくない、そう心の底から思えた。
(だから、私は行かねばならない。そして、帝国を、皇帝を倒さねばならない)
そう心の中で誓いながら、パンが焼きあがったのを確認する。ロゼットと共に完成させた昼食を食卓に並べ食事の準備を整えると、リーシェはここの主人であるクエリーシェルを呼びに行くのだった。
デザートはリンゴパイだが、今焼いてるパンのあとに焼けば食後にちょうどいいだろう。パンは旬のクランベリーを使ったパンだ。そろそろの仕上がりで、キッチン内にはいい匂いが立ち込めている。
「そういえば、船旅って約1年間でしたっけ?そんなにリーシェさんがいないのは、私も寂しいです」
「すみません、ご一緒できなくて」
「いえいえ、そういうことではなくて。単に寂しいんです。ほら、1年って長いでしょう?あぁ、でも、留守はお任せください!私とバースが責任持ってしっかりこなしますので」
「ありがとうございます。でも、長くて1年ですので、早ければ半年で帰ってきますよ」
さすがに、今回の船旅に連れて行けるメンバーは限られている。長い船旅に耐えられ、かつ能力や知識を持ち合わせている人しか連れて行けない。そのため、ロゼットには留守番を任せることになった。もちろんバースもだ。
一応、グリーデル大公達にも話を通してあるので、私の素性はある程度知られてしまったものの、このクエリーシェルの城にダリュードやマルグリッダを派遣してくれるということで、ロゼットやバースのことを気にかけてくれることになった。
(誰が敵かわからないけど、それはそれで疑心暗鬼になってしまうのは相手の思うツボ。信頼できる人は多いに越したことはない)
グリーデル大公は多少の驚きはあったものの、私の素性に関して、そこまで驚愕はしなかったそうな。クエリーシェルがある程度話していたのかと思っていたけど、そうではないらしい。
曰く、そういう素養が漏れているとのこと。あまり意識してはなかったが、それはそれでちょっとまずいかな、という危機感を多少感じた。
「私、そんなに立ち振る舞いが違います?」
「まぁ、うーん、メイドというよりかは、貴族寄りではあるかな?」
「そうなんですね……」
クエリーシェルに確認したが、歯切れ悪い感じで返される。ということは、クエリーシェルにも、私の素性をバラす前から何かしら疑念は抱いていたということだろう。
自国ではじゃじゃ馬と評されていたが、それでもやはりマナーや立ち振る舞い等は厳しく躾けられていたので、自分ではわからなかったものの、目につくくらいにはそれなりの振る舞いをしていたらしい。
(ちょっと気をつけないと)
とりあえずコルジールでの振る舞いは今後の課題として、あとは船旅の準備だ。人材も、この情勢で多くの手練れは連れて行けないし、船酔いも心配だ。船酔い用の薬もある程度用意しておかないと。
(武器も薬も食糧も、あれにこれにそれに……)
メンバーの選定に、積荷の準備、航路や各国への手土産。考え過ぎて頭がパンクしそうだ。自ら提案したとはいえ、なかなかハードではある。
戦況もいつ変わるかわからないし、できるだけ早くは帰ってきたい。だからあまり寄り道等はできないし、下手に海賊なんかに襲われて誰かが負傷しても困る。
自分も足手まといにはなりたくないので、「乙女の嗜み」を用意するだけでなく体力や武芸の腕を磨かなくては。芸は身を助けるというし、実際に一見無駄なような知識や芸が役立っている人生なので、引き出しは多ければ多いほどよい。
(なんだか、安らかに死ぬことから遠ざかっているけど、これはこれで充実している気がする)
今まで、ただ生きていただけの人生が色づいていくのがよくわかる。何も希望もなく、ただ静かに生を終えれば良かったと思っていたのに、案外私は貪欲だったらしい。
生きるなら精一杯、自分がやれることをやりたい。それが人のためになったら尚良い。そして今は、この国を守り抜きたい、とそう思う。
(私はこの国で骨を埋める覚悟をした。そのためには生半可な覚悟ではダメだ)
やるなら徹底的に。そうしなければ、今回の船旅は全く意味をなさない。これは命がけの仕事であり、コルジールという国家の命運がかかっている。
住んでいるからわかる、この国の良さ。今まで様々な国を渡り歩いてきたけれど、その中でもこの国は特別だ。
コルジールが特別なのは、単に住みやすい、空気が馴染む、ということもある。だが、それよりも何より、クエリーシェルが私に居場所をくれたから、というのが大きい。
帰る家がある。私を待ってくれる人がいる。それだけで力が湧くし、頑張れる、やる気に繋がる。
(私はもうひとりぼっちでも、家なしでもない。ちゃんと待ってくれる人が、居場所がここにある)
だからこそ、この国を守りたい。ペンテレアの二の舞にしたくない、そう心の底から思えた。
(だから、私は行かねばならない。そして、帝国を、皇帝を倒さねばならない)
そう心の中で誓いながら、パンが焼きあがったのを確認する。ロゼットと共に完成させた昼食を食卓に並べ食事の準備を整えると、リーシェはここの主人であるクエリーシェルを呼びに行くのだった。
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