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1章【出会い編】
45 また会う日まで
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ふわふわと、まるで空に浮かんでいるような感覚。
果たして自分は今どこにいるのだろうか。
真っ白な世界、ゆっくりと目を開けるとそこにはただ白一色があった。何もない。今までの人生で見たことのない光景だ。
(これって所謂、天国?)
「ステラ」
呼ばれて振り返る。そこには懐かしい顔があった。
「姉様!」
姉に向かって走り出す。勢いよく抱きつくと、姉は私を受けとめ、ギュッと抱きしめ返してくれる。
「どうしてここに?」
「どうして、じゃないでしょう?あんなに無茶をして」
「だって、捕虜にするにはあぁやって気絶させるしか方法がないし、そのためには距離を縮めないといけなかったから」
「本当、貴女は昔から無茶ばっかり!いくつ命があっても足りないわ」
姉の呆れつつも笑う顔。こうやって姉は咎めながらも、私のことを理解してくれる唯一の人だった。
「でも、私がいなくなっても父様も母様も、姉様がいるからいいんでしょ?」
昔から思っていた想いがつるんと口を滑って出てくる。
本音を吐露したのは初めてかもしれない。いつも必死にこの想いを我慢してきたから。両親は常に姉にばかり構っていて、私はいつも1人だった。
だから両親に構ってもらいたくて、好奇心のままに色々な知識や技術を得た。少しでも自分に振り向いて欲しくて。結局それは叶うことはなかったけれど、その経験は今生きているのは事実だ。
「そんなことないわ。いつも貴女のことを心配していたでしょう?」
「それこそ、そんなことないわ。いつも私のことを手に負えない、困った娘だと嘆いていたし」
「違うわ、ステラ。貴女は私よりも誰よりも有能過ぎたのよ。飲み込みは早い、身体能力も高い、賢過ぎて理解をできる範疇を超えてしまったの。それでいつもお父様もお母様も悩んでいたわ。私達はどうやってステラを導けばいいのかって」
「嘘……」
信じられなかった。まさか、そんな、だって私はいつも遠巻きにされてて。
「貴女との距離感に悩んでいたのよ。ステラはとても素直じゃないから。お父様もお母様も貴女から嫌われているんじゃないかって、いつも不安がっていたのよ」
確かに思い至ることは多々ある。勝手に我慢して勝手に偏屈になって、勝手に自暴自棄になって。
……全て私が招いていたことなのか。
「ステラだけじゃない。お父様もお母様もみんな悪いわ。誰かが素直に言えば良かっただけなのだから。そういうところは貴女、2人によく似たのね」
「姉様、私……」
「マシュ族の元に向かいなさい、って言ったのも、本当はお母様なのよ。お母様の遠縁がマシュ族だから。私がステラに言った方が、素直に言うことを聞くだろうからって」
「そんな……っ!」
「ちゃんと貴女は愛されていたわ。今も、ずっと近くで見守っているもの」
目頭が熱くなる。
抑えていた感情も涙も溢れ出してくる。
幼子のように、私はわぁわぁと感情のままに嗚咽を上げながら大泣きすると、姉はまた抱きしめて背をさすってくれる。
「貴女を帝国との争いに巻き込んでごめんなさい。全ては私が元凶なのに、ステラには辛い思いをさせたわ」
「ううん、姉様は悪くない。優しい嘘をついただけなのだから」
「ステラ、私の最期の願い覚えてる?」
「うん、生きて、って」
未だに覚えている。いつものように笑って私を送り出してくれた。
「あの男の人、とても貴女のこと大事にしてくれてるみたいね」
「ケリー様のこと?」
「えぇ、きっと彼となら幸せに生きられると思うわ」
「また、もう姉様ったら、私をからかっているんでしょう?」
「ふふ、どうかしら?なんたって私は千里眼を持つ女よ?」
ぺちん、と鼻を弾かれる。姉もアーシャもみんな私をこうやってからかう。
「だからまだ、ここには来ちゃダメ。貴女を待ってる人がいるから」
「幸せにね」との言葉でそのまま背中をグッと押される。先程までふわふわと浮いていたような感覚から、途端空から落ちるように堕ちていく。
「ありがとう、姉様」
そして、そこで私の意識は途切れた。
果たして自分は今どこにいるのだろうか。
真っ白な世界、ゆっくりと目を開けるとそこにはただ白一色があった。何もない。今までの人生で見たことのない光景だ。
(これって所謂、天国?)
「ステラ」
呼ばれて振り返る。そこには懐かしい顔があった。
「姉様!」
姉に向かって走り出す。勢いよく抱きつくと、姉は私を受けとめ、ギュッと抱きしめ返してくれる。
「どうしてここに?」
「どうして、じゃないでしょう?あんなに無茶をして」
「だって、捕虜にするにはあぁやって気絶させるしか方法がないし、そのためには距離を縮めないといけなかったから」
「本当、貴女は昔から無茶ばっかり!いくつ命があっても足りないわ」
姉の呆れつつも笑う顔。こうやって姉は咎めながらも、私のことを理解してくれる唯一の人だった。
「でも、私がいなくなっても父様も母様も、姉様がいるからいいんでしょ?」
昔から思っていた想いがつるんと口を滑って出てくる。
本音を吐露したのは初めてかもしれない。いつも必死にこの想いを我慢してきたから。両親は常に姉にばかり構っていて、私はいつも1人だった。
だから両親に構ってもらいたくて、好奇心のままに色々な知識や技術を得た。少しでも自分に振り向いて欲しくて。結局それは叶うことはなかったけれど、その経験は今生きているのは事実だ。
「そんなことないわ。いつも貴女のことを心配していたでしょう?」
「それこそ、そんなことないわ。いつも私のことを手に負えない、困った娘だと嘆いていたし」
「違うわ、ステラ。貴女は私よりも誰よりも有能過ぎたのよ。飲み込みは早い、身体能力も高い、賢過ぎて理解をできる範疇を超えてしまったの。それでいつもお父様もお母様も悩んでいたわ。私達はどうやってステラを導けばいいのかって」
「嘘……」
信じられなかった。まさか、そんな、だって私はいつも遠巻きにされてて。
「貴女との距離感に悩んでいたのよ。ステラはとても素直じゃないから。お父様もお母様も貴女から嫌われているんじゃないかって、いつも不安がっていたのよ」
確かに思い至ることは多々ある。勝手に我慢して勝手に偏屈になって、勝手に自暴自棄になって。
……全て私が招いていたことなのか。
「ステラだけじゃない。お父様もお母様もみんな悪いわ。誰かが素直に言えば良かっただけなのだから。そういうところは貴女、2人によく似たのね」
「姉様、私……」
「マシュ族の元に向かいなさい、って言ったのも、本当はお母様なのよ。お母様の遠縁がマシュ族だから。私がステラに言った方が、素直に言うことを聞くだろうからって」
「そんな……っ!」
「ちゃんと貴女は愛されていたわ。今も、ずっと近くで見守っているもの」
目頭が熱くなる。
抑えていた感情も涙も溢れ出してくる。
幼子のように、私はわぁわぁと感情のままに嗚咽を上げながら大泣きすると、姉はまた抱きしめて背をさすってくれる。
「貴女を帝国との争いに巻き込んでごめんなさい。全ては私が元凶なのに、ステラには辛い思いをさせたわ」
「ううん、姉様は悪くない。優しい嘘をついただけなのだから」
「ステラ、私の最期の願い覚えてる?」
「うん、生きて、って」
未だに覚えている。いつものように笑って私を送り出してくれた。
「あの男の人、とても貴女のこと大事にしてくれてるみたいね」
「ケリー様のこと?」
「えぇ、きっと彼となら幸せに生きられると思うわ」
「また、もう姉様ったら、私をからかっているんでしょう?」
「ふふ、どうかしら?なんたって私は千里眼を持つ女よ?」
ぺちん、と鼻を弾かれる。姉もアーシャもみんな私をこうやってからかう。
「だからまだ、ここには来ちゃダメ。貴女を待ってる人がいるから」
「幸せにね」との言葉でそのまま背中をグッと押される。先程までふわふわと浮いていたような感覚から、途端空から落ちるように堕ちていく。
「ありがとう、姉様」
そして、そこで私の意識は途切れた。
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