アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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脱出

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 ラセルは闘技場の通路で王子と別れ際に半ば強引に手を引かれてハグをされた。

「お前は良いやつだ……帝国を信じるな、直ぐに逃げ出せ」

 王子はハグをしながらそう囁いた。

「は?」

「さらばだ」

 ラセルが呆然としていると軽くウィンクをして颯爽と去っていく。

 呆然とラセルが考え込んでいると副将軍のミランがやってきてラセル達を連れて行った。

「先程の試合は大変素晴らしいものでした!我々も非常に驚きました」

「そう……ですか」

 ラセルはその台詞を胡散臭く感じる。

 それは、王子の台詞が記憶に新しいからかも知れなかったが。

「是非、ラセル様のお力をお借りしたいと帝国一同願っております」

 そのミランの言葉に演技じみたものを感じてしまう。

 それは王子の台詞とは無関係にラセルの超感覚がそれと伝えていた。

「帝国内部に巣くう人身売買シンジケートを壊滅していただけたら、莫大な報酬をお支払いする用意が御座います」

 ……いま、コイツは嘘をついている、と超感覚が教えてくれた。

「ふ~ん、僕らに出来ることなんてそれ程はありませんよ?」

 ラセルは敢えてボケてみる。

「いえいえ、ご謙遜なされなくとも宜しいのですよ、あのようなお力が有れば犯罪組織など取るに足りないと確信しております」

 ミランの言葉が益々胡散臭くなりラセルは確信した。

「それで、僕らをどこに連れて行くつもりですか?」

「はい、こちらの先に御座います応接間で暫くお待ち頂きたく思うところであります……」

 ミランが帝宮の中に入ってから奥の地下通路に繋がる扉を開けて降りるとラセルは思わず笑った。

「ははは……ご冗談がキツイですね」

「いえ、冗談ではありませんよ……応接間はこの先にございます」

「随分と見くびられたものだ」

「……」

 ……どこの世界に、地下室に応接間があるというのだろう。

 ラセル達は余程の世間知らずと思われたのか……?

「ジェイルオン!」

 ミランが突然魔法を唱えると、辺り一帯が魔法の結界で閉ざされた。

 ズーン……

 背後から轟音がなり、巨石が落下して通路が閉ざされた音が鳴る。

 振り向くと後ろに居たはずの副官の姿は無く、分厚い魔法障壁が周囲を包んでいる。

「やはりな」

 パキイ!

 バシュン……

 目の前のミランはリターナーを使い消え失せた。

 リフレクトマントで抜けようと試みたがそれは特殊な磁場で拘束されていて上手く抜けられない。

「なるほどね」

「ラセル様……」

 隣のミレーネが少し心配そうにラセルを見つめていた。

 ラセルは彼女を軽く抱きしめ、約束をする。

「大丈夫、必ず抜けられる」

「はい、信じておりますラセル様」

 ミレーネはラセルを見返して答えた。


「少し離れていて」

 ラセルはミレーネと少し距離をとり、次元刀を抜刀して前方を軽く薙ぎ払う。

 スパッ……

 刀で撫でたところの魔法壁が切り裂かれて実体の通路が向こう側に見えていた。

「行けそうだ」

 スパッスパッ!

 そのまま障壁を縦横に切り裂くと限界を超えた障壁は崩壊して消えた。


「さ、行こうか」

 ラセルはミレーネの手を引いて階段を降りていく。



 暫く降りていくと死臭が漂い、そこが明らかに地下牢獄であることが判る。

 階段が終わり、通路を真っ直ぐに進むと左右に鉄格子が嵌められた牢獄がズラリと並んでいた。

 王子が逃げろと教えてくれたのに、捕まってしまったことをラセルは情けなく感じていた。


 それでアイテムマイスターのスキルを全開にして隠しトラップの探索を開始する。

 それは白の牙時代にいつもしていた事だ。

 人工的な構造物には大抵隠しトラップや隠し通路が存在することをラセルは知っていた。


「あれだな」

 地下牢の最奥の壁に設置された羊の頭を模した石像の口に腕を突っ込んで中のハンドルを掴む。

 ガガガ……

 ハンドルを引き出していくと壁の一部がズレて更に奥に続く通路が見えた。

「行こう」

 不安そうにしていたミレーネの手を引いて隙間の奥に入った。

 隙間の向こう側は隠し小部屋になっていて、簡易な木の扉がついていた。

 それを開けると外階段が現れて絶壁に張り付いている階段が延々と下まで繋がっているのが見えた。

 帝宮は途轍もない絶壁に設置されていることがそれで分かった。
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