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4.王都帰還に乗っかって

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一度達すると少し理性を取り戻したらしく、着たままだったオレの服を脱がしてくれる。

「大丈夫か?」
「ん、きもちいい……。ベイセルの、入ってると、ずーっときもちいいの……」
「タカラはかわいいな」
「嬉しい……」

穏やかな言葉を交わしながらのゆっくりセックス。激しく求められるのも良いし、ゆっくり焦らされながら気持ちいいのが続くのもいい。

「セックスって、気持ちいいんだねぇ……」
「そう言えば初めてだと言っていたか。他の奴らも味見してみるか?」
「……今はいいや」
「なら飽きるまではオレの相手だな」

しばらくは相手をしてくれるらしい。
少しは他の人も気になるけど、ベイセルがいれば他はいらない気がするんだけどな。なんで他の人を勧めるような言い方するんだろう。

ベイセルは師団長サマだし、忙しいのかなぁ。



*******



「今日はもう出発だ。私は馬だがお前は馬車だ。1人で馬には乗れないだろう?」
「うん、乗れない」

聞けばロニーも馬なので、オレは荷馬車の御者台に乗せてもらう。荷台は荷物と傷病者が乗せられている。

御者の人に挨拶をして、隣に乗せてもらった。

「タカラ殿は、師団長の伴侶になるのですか?」
「えっ!? いえ、その、そんなことはないんじゃないかな……?」
「そうなのですか?」

師団長って多分、貴族だよね? それで貴族の伴侶って、家柄とか跡取りとかいろんなしがらみがあるだろうし、突然現れた異世界人がなれるはずないよな。

しかもまだ会ったばかりで、こっちの世界の結婚がどんなものなのかも分からないし。とりあえずはセフレの1人に入れてもらえれば、とか考えている。

今は……、どうやって生きていくかだよな。

就職前の大学生だったから、コンビニバイトくらいしかしたことないし、体力もなければ読み書きもできない。

何かできるだろうか。


*******


王都までは7日間もかかった。
これでも軍用馬を使っているから少し速いらしい。ずっと座っているだけなのも暇なので、怪我人のお世話を手伝わせてもらった。傷薬を塗る時、早く治れ~! と祈りながら塗ると治りが速いのが分かり、王都に着く頃には骨折さえかなり治っていた。魔力が流れ込んだらしい。

怪我の治療に本人以外の魔力が上手く作用した例はなく、とても喜ばれた。

でもそこまで多くないらしい魔力を使うと、かなり疲れてしまう。御者台で居眠りをして何度か転げ落ちそうになったので、怪我人が減ってできた荷台のスペースで眠らせてもらった。



*******



「これが王都!」
「あぁ、そうだ」
「すごい城壁だね」
「ここに住む人々を守るためだからな」

馭者さんとおしゃべりしながら王都に入る。王都は凸凹はあるものの、ほぼ円形をしていて、周りを城壁で囲まれている。城壁のすぐ内側は広い通路になっていて、物資の輸送に使われる。その内側に倉庫と工房が並び、商店街は都の中央部にあるらしい。

農作物は他の領地から運ばれてくる。

王都の北側が高台になっていて貴族街となり、そのさらに北の山肌に王城が建っている。乗合馬車用の道もあって都市計画が徹底されているようだった。中世ではなく近世か。

道は放射状と環状が組み合わさっているけど、貴族街への出入りは1つしかない門を通らなければならず、王城へはさらに2つの門があって厳しい検問があると言う。

ここまで戻ってくる間、街に寄らなかったのでずーっと夜営だった。初めにベイセルと過ごした天幕は大きいので設営せず、見張りを立てて毛布にくるまって地面に寝る。

眠れないかと思ったけど、魔力を使って消耗するせいか、ぐっすりだった。

で。

「オレが王様に謁見? なんで?」
「師団長を救出して無事、停戦させた功労者だろ?」
「たまたまだよ? むしろ助けてもらったのはオレの方じゃん」
「他人の魔力で薬の効きが良くなる現象について、研究に協力して欲しいそうだ。それに、きちんとした身分を決めたいらしい」
「身分……。まぁ、そりゃ確かにそうかも知れないけど、作法とか分からないよ? 失礼なことして首飛ばない?」
「国王陛下はおおらかな方なので大丈夫です」

それ、王様以外はダメなんじゃ……?

とはいえ、身元不明の居候に拒否権はないと思われるので、内心ガクブルしながらベイセルについて行った。



豪華な広い部屋に入り、周りに倣って右拳を左手で包むようにして頭を下げて待つと、正面の煌びやかな椅子に人が座る気配がした。

そして顔を上げるように言われて前を見ると、ベイセルに負けず劣らずのイケオジが座っていた。王様、かっこいい!!

顔のタイプはベイセルは西洋風で、王様は東洋寄り。

王様は出兵について労い、停戦に持っていったことを褒めた。
そしてすでにオレについて報告を受けていたようで、魔法研究所と治療院での研究協力を条件に公爵である王弟殿下の養子に入るように、と言い出した。

待って!
公爵家の養子とか困るから!!

「恐れながらタカラは庶民の出で、貴族としてやっていけるとは思えません」

ベイセルがそう言ってくれて、オレは激しく肯首する。すると王様はニヤリと笑って

「ベイセル師団長とは随分、仲が良いようだからな。公爵家から嫁にやろうと考えている」
「嫁!?」
「は、いえ、その……」
「そろそろ身を固めても良かろう」

展開が早すぎる!
なんなの!?
誰か説明してくれ!!!!

とりあえず王様の言葉は提案だそうで、他にも養子に取りたいと名乗りを挙げている人がいるらしい。

仮の身分として師団長預かりにすれば急ぐ話でもないからゆっくり考えろ、だって。

最初から言ってよ!!



*******



「疲れた……」
「悪いな。私は身を固める気がないのだが、最近もう男でもいいからくっつけと言われてなぁ」

王宮を辞しての馬車の中。
慣れてるベイセルはともかく、オレ1人だけ精神的疲労でぐったりしています。

「好きな人いないの?」
「女は庇護欲はそそるがそこまで好きでもないな。かと言って大柄な男も好きじゃない。そもそも好きとか嫌いとかじゃなくて、この国に縛り付けるために婚姻させようとしているんだ。忠誠を誓っているというのに、出奔を疑われているようで不愉快だ」
「この国、同性で結婚できるの?」
「可能だ」

そうなのか。
オレ、結婚願望ないからセフレで充分だよ。

「まぁ、とにかく休もう。私の家は小さいが、歓迎するぞ」
「ありがとう。あ、ロニーは?」
「家に帰る。本来、騎士団寮に住むべきなのだが貞操が心配で特例を許しているんだ」
「美少年だもんね。だからベイセルの従卒になったの?」
「あぁ、普通は見込みのあるやつを見つけて従卒にし、個人的に鍛えるんだが、ロニーは向こうから来て『普通に騎士になったら掘られる、自分は掘りたいんだ』ってな」

まさかの攻め宣言!!

「ロニーは女の人は好きじゃないのか」
「2人の姉におもちゃにされて、女に夢は抱けないんだそうだ」
「あははははっ!!」

こちらの世界、同性の結婚は少なくても、兵士たちの間では普通に男同士で恋愛したり発散したりするらしいから、本人の希望通りになるといいな。


そんな話をしながら到着したベイセルの家は、師団長が住んでいるとは思えない、パステルグリーンの壁とオレンジの屋根の可愛らしい北欧風(?)の家。

服は遊牧民ぽいのに街並みは煉瓦造り。そしてベイセルの家は北欧風の木造(たぶん)。

「かわいい家だね」
「私は平民からの叩き上げで、あまり貴族らしい建物は好みじゃないんだ。色はメイド頭の趣味だ」
「へぇ。オレもこういう家好き」

北欧風の家とか、憧れるよな。

玄関ホールで出迎えてくれたのは、すらりとした老執事と恰幅の良いメイド頭、若いメイドが2人にひょろりとした男性使用人が1人、厳つい男性料理人が1人。

……男性使用人て、なんていうのが適切なんだろう? あ、ただ使用人でいいのか。

「お帰りなさいませ、旦那様」
「「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」」
「留守中、変わりはなかったか」
「はい」
「そうか。こちらはタカラ、私の恩人だ。しばらくうちにいるから丁重にもてなしてくれ」
「えっ!? て、丁重になんてしなくていいよ! 仕事があれば手伝わせて欲しいくらいだよ?」
「近いうちに研究所から呼び出しがあるだろうから、うちにいる時にまで働く必要はない」
「あ、そうか。……じゃあ、お願いします……」

魔力を使うとかなり疲れるもんね。真面目に研究協力するためには体調を整えた方がいいのだろう。オレは素直に甘えることにした。

ベイセルの好物だという家庭料理を食べて、シードルみたいな果実酒を飲んだ。爽やかで美味しい。

異世界に来て色々あって、長距離の移動もして、かなり疲れていたようで、オレは子供のように食事中に眠ってしまった。

恥ずかしい……。
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