森と花の国の王子

あーす。

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接近

広間での別れ

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 エルデリオンとレジィリアンスが、エウロペの先導で広間に戻ると。
広間では三重の輪が出来、皆手を繋ぎ合って、大盛り上がり。

国王と王妃は息子、エルデリオンの姿に気づくと、輪から外れてやって来る。

王妃は元気そうなレジィリアンスの姿を、嬉しそうに見つめ、声かけた。
「…あなた様のお国のダンスで、皆もとても楽しそうでしたので…。
お姿が見えなくて、心配でしたが、楽しんでいらっしゃいますか?」

レジィリアンスはほっとした様子の王妃を見つめ、心配されて嬉しくって、頷いた。
「はい。
エルデリオン様とお話ししていました」

王妃の横に立つ国王は、にこにこして告げる。
「その様子では…息子は今度は、無礼は働かなかったようだ」

エルデリオンは父のその言葉に、罰が悪そうに、頬染めて俯く。

「貴方からしたら、馬鹿息子を可愛がる馬鹿な親に見えるかもしれん。
が、一人息子で兄弟がいない。
人の心を推し量るのが苦手にならぬよう、心ある部下に面倒を見て貰っている。
本来は優しい男だから、どうか毛嫌いせず、接してやっては頂けないか?」

エルデリオンは父のその愛情溢れる言葉に、つい顔を上げて見つめた。
レジィリアンスは国王に丁寧に告げられ、少し恥ずかしげに頷くと
「はい。
とても穏やかなお方と、分かり始めたところです」
と言葉を返した。

国王は頼り無げな美少年を見つめ、目を細めた。
「…貴方が少年と言う事で…。
我々はエルデリオンが諦める事を期待し、出来るだけ…高い敷居を用意した。
だから私が、息子に強硬手段を取らせるほど、追い詰めたと言っても過言では無い。
本当に、辛い思いをさせ、詫びる事しか出来ない」

レジィリアンスは優しげな青い瞳の、国王を見つめた。
鼻髭と顎髭で顔の半分は隠れていたけれど。
細面の美男だと思った。

レジィリアンスはそれを聞いて俯き…そっ…と横の、エルデリオンを見つめた。
彼は、諦めたくなかっただけ…。
その中で、出来る事を全力でした。

父の負傷や敗戦の屈辱が、それで全て、払拭された訳では無かったけれど…。
レジィリアンスは俯くと、頷いた。

「…はい。
事情を話して頂けて、本当に感謝致します」

国王はその返答に、嬉しそうに微笑むと、頷いた。

そして、小柄なレジィリアンスに屈むと、小声で囁く。
「…息子の人柄を知っても、お国の風習に無い事は、どうしても出来ないのであれば…。
どうか優しく、息子を振ってやっておくれ」

エルデリオンはそれを聞いて、罰が悪そうな表情をした。

けれど王妃までもが。
「わたくしからも、お願い致します」
と真摯に口添えされ、レジィリアンスは思わず、頷いた。

「私はこれで退出する。
が、何かあればいつでもラステルに、申しつけておくれ。
彼は全て私に、報告するから」

レジィリアンスは頷き、王は王妃を伴って、広間に歩き始める。

「名残惜しゅうございますが、これで私達は退出いたします。
お時間のあるお方は、どうか存分に、楽しんでいって下さい」

王妃の言葉に、皆足を止め、一斉に礼を取って、頭を垂れた。

レジィリアンスは横のエウロペが頭を垂れているので、慌てて習って頭を下げた。
横の、王子エルデリオンですら。
礼を取って、頭を下げていた。

やがて王と王妃が退出すると、華やかな音楽が奏でられ、オーデ・フォール中央王国のダンス曲が流れ始める。

男女で組むと、広間の至る所で、華やかで快活な踊りが繰り広げられ始めた。

「…この踊りは、ご存知ありませんよね?」
エルデリオンに屈んで尋ねられ、レジィリアンスは頷く。

「少し…疲れたので。
帰って休みたいと思います」

エルデリオンは頷くと…レジィリアンスと並んで、広間の西扉に向かった。

西庭園で出会った、キャスリンやアナスタシアが貴公子とダンスを踊りながら、退出するエルデリオンを、切なげに見つめた。

が、エルデリオンは横にレジィリアンスを迎え、幸福そうに、広間を後にした。

レジィリアンスは広間を出る際、西庭園で出会った少女二人が、それぞれ左右のエリューンの腕に絡みついて離れず、二人はエリューンを争って口喧嘩し、両腕を拉致され、更に振り回されて困惑しきってるエリューンを見た。

テリュスも、もう一人の少女に、背を向けるのに前に回り込まれ、また背を向けた途端、前にやって来られ…。
付きまとわれて困ってる姿を目にし、背後に続くエウロペに、視線を送った。

「助け出さなくて、いいの?」

レジィリアンスの言葉に、エルデリオンも振り向く。

デルデロッテの周囲は美女がぎっしり取り巻き、一見上品で華やかな抗争が、取り巻く美女らの間で、勃発していた。

エウロペの背後にやって来た、ラステルとロットバルトはちょうどその会話を聞いた。
ラステルが横のロットバルトを見ると、ロットバルトはやれやれと、頭に手をやる。
「…では私が。
戻って、彼らを助け出します」
告げるなり、くるりと背を向け、広間に戻って行く。

エルデリオンは斜め横にやって来るラステルに、小声で
「あの様子だとデルデロッテは今夜、オレシニォン西の客用離宮には戻らないかな?」
と尋ねた。
ラステルは
「戻りたくとも、戻れないでしょう」
と告げるので、エルデリオンは頼み込んだ。
「デルデロッテは不本意かもしれないが。
助け出して、私の部屋に顔を出すよう、言ってもらえる?」

エウロペはあまりに多くの美女に取り囲まれた長身の色男デルデロッテを、気の毒そうに見たし、今夜のお楽しみからその色男を引き離す、嫌な役割を申しつけられた、ラステルに同情した。

けれどラステルは、笑顔で頷く。

エウロペはラステルの軽やかな背に視線を送り、顔を戻すとエルデリオンに見つめられているのに気づいて、思わずぼやく。
「私なら、断りますね」

エルデリオンは『無粋な命令を出す奴』と思われ、頬を染めて俯いた。

行きかけたラステルが、その会話を耳にした途端。
振り向いて、エルデリオンを擁護する。
「…デルデロッテですよ?
一時離れても。
エルデリオンの用が済んだら、約束した美女の寝室に、直行するに決まってる」

レジィリアンスはそれを聞いて、感心し、エウロペは『なるほど』と顔を下げ、エルデリオンは『やっぱり…』と、俯いた。
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