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第一章 幼少期編

第14話 その者、真紅の衣を纏いて暗黒の空間に降り立つ

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「ぐぁぁぁぁ!! 目がぁぁ! 目がぁぁ!」

「まあ痛みだけでも治してやるかの」

 何かの液体を飲まされ痛みは引いた。
 三日で魔闘術を習得する為には通常のやり方では無理なのだろうが、さすがに目を潰されるとは思わなかった。

「残りの時間はこの状態でやるのじゃ! かなり強引な手法じゃが、まあ何とかなるじゃろ」

「ならなかったら?」

「死ね!」

 バキっ!

「がはっ!」

「感覚をを研ぎ澄ませ我の魔力を感じるのじゃ」

「それ、殴る前に言ってくれない?」

 地獄の時間が始まり、残り時間も残すところ数時間となった時変化が訪れた。

(なんだこの禍々しいオーラは……これがスーの魔力? 真紅の魔力……)

 ブンッ!

「おっと! あっぶねぇ!」

「おっ! やっと視えたようじゃな?」

「真紅の禍々しいオーラの塊が向かってくるのが視えた。これがスーの魔力って事で良いのか?」

「ほう、色までわかるか。うむ! 我の魔力の色で相違ない」

 攻撃の瞬間に攻撃部位が膨張し、強度を増しているのだろう。足は移動の時、瞬間的に爆発のエフェクトがかかっていた。

「よしっ! 合格じゃ! これで魔闘術の基礎は習得した。 よう頑張ったのう」

「おっ!? おぉぉぉ!! 終わりか!」

「まあこれを飲むが良い」

 差し出されたのは確実にエリクサーだろう。もう一生分以上飲んだが一度も慣れることはなかった。

「うげぇ……やっぱりまずい……あっ見える」

 エリクサーの効果はお墨付きだが、その即効性は副作用なしで回復できるものなのか心配になる。

「これで基礎は終わりじゃが、毎日の修練を怠るでないぞ? 魔闘術を習得したと言ってもまだまだひよっこじゃ。その力を手に入れ何を成すかはお主次第じゃが、決して自惚れず常な高みを目指すのじゃ」

「スー! ありがとう! いつか必ずスーを超えてやるから覚悟しとけよ!」

「ふんっ楽しみにしておくのじゃ。さあ外に出るとしよう」

 久しぶりの外は眩しく、空気も……

「くっさ!!」

 目の前にはビックボアが三日前とは変わらない姿でお迎えしてくれた。

「忘れておったな。なあクーよ祝いじゃ! ビックボアを食すとしよう! してどうやって食べるのじゃ?」

「知らないのに食おうと思ったんかい! まあ、そうだなあ……焼くか煮るかだな」

 ビックボアの肉は脂肪が少ないが見た目に反して柔らかいらしい。基本的には焼く事が多いが煮込むと旨味成分が溢れ出しスープは黄金に輝くので貴族には大いに好まれるとの事。

「じゃあ、焼くかのう」

「え?」

「深淵を焼き尽くす焔の御霊、森羅万象の理、狂い咲けインフェルノフレア!」

 ズゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!

「………………」

 厨二的な詠唱が詠まれこの世の終わりのような炎の脅威がビックボアのみならずその先まで焼き尽くした。
 結果、ビックボアは消し炭になった。

「オイイイイイイ! 何してくれてんのぉ!!」

「焼けというたから焼いたのじゃ! 何が悪い!」

「全てだバカヤロウ! 加減をしれ!加減を!」

 高級食材そして森の消失、村から離れているとはいえこれだけの威力の爆発には気付くだろう。

「スー! ちょっと場所を移そう……」

「我の肉がぁ……」

 意気消沈のスーを連れその場を離れた。ある程度歩いた先は崖になっていた。眼下には草原の景色が広がりをみせ、太陽に照らされた小さな湖はキラキラ輝いていた。

「いつまで落ち込んでいるんだよ」

「せっかくの祝いの肉が……」

 自分でやっておいて、よくもまあそこまで落ち込めるものだ。

「ほらっ! これでも食えよ」

 取り出したのは非常食として持ってきていた干し肉。それを半分に裂き二人で分けることにした。

「なかなかの味じゃのう」

「非常食だけどな? まあ今の俺にはこのくらいがちょうど良いだろ」

「スーはこの後どうすんの?」

「我は……勇者も見たし、クーという友も出来た。名残惜しいが帰るとしようかの」

「そっか……いつかさ? 俺のいる村に遊びに来いよ?」

「良いのか?」

「大歓迎だ! まあ大したもてなしも出来ないけどそれでも良いなら」

「行く! 必ず会いに行く! いつとは約束はできぬが……必ず!」

「俺の村はここからだとほぼ真っ直ぐ南に向かって行けばあると思う」

 初めての冒険だったが、得るものが多かった。修業法もわかったし、後はがむしゃらに鍛えるだけだ。

「ではさよならじゃ!」

「スー! 友達はさよならなんて言わないんだぞ?」

「では、なんとする?」

「 "またな" だ!」

 さよならは別れの挨拶。友達に使う言葉じゃない。

「そうか……わかった! クーよまた会おうぞ」

「おう! またな!」

 去っていくスーの後ろ姿が見えなくなるまで手を振り、習ったばかりの魔闘術で村まで足速に戻るクロウであった。
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