【R18】紅の獅子は白き花を抱く

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紅の獅子は白き花を抱く

ジオークの講義①

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「なんかずるい」

 一緒にお風呂に入ろうということで浴室に入り、リシェーナの柔らかくてしっとりとした髪と滑らかで吸いつくような肌を、柔らかく洗い上げてやった――何も悪戯しなかったとは言わない――。
 リシェーナがくったりとしている間に、手早く自分の髪と身体を洗って、今は二人で寄り添うようにバスタブに浸かっているのだが…。
 正気に戻ったらしいリシェーナが、ジオークの腕の中で先のような不満を述べた。

「何がずるいの?」
 髪を纏めた項と首筋がうっすらと染まっているのが艶めかしくて、目を細めながらジオークは訊く。
 そうすれば、ジオークの太腿の上に座って膝を抱えたリシェーナが不満の続きを口にする。

「だって、どうしてあなたはお風呂に入るの」
 ジオークの位置からリシェーナの顔は見えないけれど、きっと頬を染めて眉を少し寄せてうっすらと瞳を潤ませているだろう。
 納得がいかないと羞恥が一緒になった表情。
 常よりも少し幼く見えるその表情が、とても可愛らしいのは知っている。
 だが、リシェーナの不満については察せない。

「リシェも入ってるじゃない?」
 ジオークが問うと、リシェーナはぐるっと身体の向きを変えて、ジオークを振り返った。
「違う! あなたはお風呂入ってないわたしの匂い舐める!」
 リシェーナの表情はジオークが想像した通り、とても可愛らしかった。
 いつになく興奮しているらしいリシェーナの言葉はめちゃくちゃだったが、言いたいことはわかった。

 どうやら彼女は、数日前の出来事を根に持っているらしい。
 職場は全く可愛くないし、近衛騎士団長が娘に会ってみないかとうるさいし、アガットの馬鹿が夏風邪なんて引いたのでジオークにお鉢が回ってきて大変だったのだ。
 本来は、国王の誕生会――と言ったら国王には嫌がられたが――だって、ジオークは仕事の予定ではなかったというのに。

 そういうわけで、久々の休みがもらえた数日前、ジオークは帰宅するとお風呂、リシェーナの順番でありついた。 まだ入浴していないリシェーナが、お風呂に入ってから、と口にするのを丸め込んで昼近くまでだらだらしていたのだ。 不平不満のリシェーナも可愛いからジオークとしては特に気にしていなかったのだけれど。
 リシェーナが言っているのは、この前ジオークはリシェーナがお風呂に入るのを許してくれずに色々したのに、どうして逆はさせてくれない、ということだろう。


 そんなのは、決まっている。
 するのは全く抵抗がないし、したいが、されるのにはとても抵抗があるし、させたくないというだけ。


「だってリシェはお風呂入ってなくてもいい匂いだし美味しいもん」
 ジオークが真顔で告げれば、リシェーナの顔が真っ赤に染まってぱっと下を向く。
「…やだ、そういうこと言うの」
「そういうこと言う、おれは嫌?」
 問いながら、確かにリシェーナの言うように、自分が狡いということを自覚する。
 そろり、と視線を上げたリシェーナは、少しだけ伸びをして、ジオークの唇に唇を当てた。


「…好き」


 間近で頬を染めるリシェーナが可愛くて、ジオークの頬は自然と緩む。
 彼女が自分をとても好きなことは自負している。
 彼女が、絶対に自分のことを「嫌い」とは言わないことも。
 それをわかっていて問う自分は、確かに狡い。

 ジオークが狡いことをわかっていても、好きでいてくれるリシェーナが愛しくて、ジオークはリシェーナの身体をそっと抱きしめる。
 リシェーナの肌よりも柔らかい場所が、ジオークの肌を掠めたような気がして見れば、リシェーナがジオークの鎖骨のあたりに唇を押し当てている。
 …これも、誘われているということで、いいのだろうか。

 ジオークはキスをしようと、リシェーナの頭を抱えるようにして左手をリシェーナの左頬に添えて、上向かせる。 だが、リシェーナの唇がまた不満を紡いだ。
「それに、洗うのもずるい。 わたしもあなた、洗いたかった」

 どこを、と彼女は言わなかった。
 だが、彼女の指がそっと触れた場所に、ジオークはびくりとする。

「リシェ、女の子が男のそんなところ触ったらだめだよ」
 リシェーナの手を、反応し始めている自身から外しながら、余裕なふりを装って微笑む。
 だが、リシェーナはジオークの言葉に納得しなかったらしい。
「わたし、あなたの奥さんよ? 奥さんはしていいこと」
 ジオークは、リシェーナの発言に、つい十分ほど前の自分を呪いたくなった。 「可愛い奥さんを洗ってあげるのも夫の務めだよ」なんて、口にするのではなかった。


「気持ちいいところ、教えてくれるって言った」
 決意とやる気に満ちたとても可愛らしい表情のリシェーナを、ジオークは退ける術を持たなかったのである。
 苛立ちのままに、おかしなことを口走るのではなかった、とジオークは今、反省している。
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