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37.怒り狂う父
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暴力行為の描写があります。同性愛を侮辱する言葉もありますが、作者の本音ではありません。設定の都合上の台詞です。
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「旦那様、エマニュエルという従騎士が旦那様に折り入って重要な話があると申しておりますが、どういたしましょうか?」
執事が執務室に入ってきてフェルディナントの父ロルフにそう尋ねた。
「重要な話?フン、いいだろう。聞いてみる。お前は部屋の外で待っていなさい」
「でも危険ではありませんか?彼は最近入った者です。信用できるかどうか分かりません」
「舐めないでくれ。こう見えても最近入ったぐらいの従騎士ごときに負ける私じゃない」
「し、失礼しました。ではエマニュエルを呼んでまいります」
執事に案内されて執務室に入って来たエマニュエルは、若い従騎士らしくまだ頬がバラ色であどけなさを残す美少年だった。
「エマニュエルとやら、最近我が家に入った従騎士と聞いた。一体どんな内密話があるというのだ?」
「実は見てしまったのです。神がお許しにならないような…こんなことを口に出すにもおぞましいのですが…」
「勿体がらずにさっさと言え」
「では…ぼ、僕は見てしまったんです!若旦那様と侍従が中庭で抱き合って…その、侍従が…若旦那様の…大事な所を擦って若旦那様は気持ちよさそうに喘いで…しゃ、射精まで…されてました」
そんなことを言われてもロルフは顔色を全く変えなかった。
「そうか。この事は誰にも言わないように。それとも誰かにもう話してしまったか?」
「いえ、とんでもございません!こんなお家の一大事、旦那様に話す前に誰にも話す訳がございません!」
「それでよい。これからも黙っているように。訓練に精を出すのだぞ」
ロルフは金貨の入った袋をエマニュエルに投げ渡した。
「かしこまりました!ありがとうございます!」
エマニュエルは、金貨の袋を握りしめながら執務室を出て行き、代わりに執事が執務室に入って行くのを見届けると独り言を口にした。
「さあて、ロルフがどうするか見物だな。アンゲラ様に報告せねば」
エマニュエルが執務室から去って間もなく、フェルディナントとヨハンがロルフに呼ばれた。フェルディナントは怒りを滲ませる父を前に戦々恐々として身を縮めた。
「フェルディナント、ヨハン。どうしてお前達が呼ばれたのか分かっているだろうな?」
「い、いえ…全く」
「私も旦那様のおっしゃる事が分かりません」
「フン、白々しい。お前達が世にもおぞましい背徳関係にあるとタレコミがあった。口止めはしたが、噂が広がるのは止められまい。お前は廃嫡だ。領地の境界近くに我が家の小さな別荘がある。そこで死ぬまで過ごせ。レオポルティーナがお前と一緒に行きたいと言えば連れて行ってもいいが、ヨハンは絶対だめだ。お前の出発は明日だから荷物をまとめておけ」
「分かりました…でもレオポルティーナには罪はありません。彼女とは離婚します。彼女のために白い結婚証明を教会に申請して下さい」
「そんなことをすれば、お前達の汚らわしい関係を公表するようなものじゃないか」
「でも彼女はまだ若いのです。せめて次の縁談に有利になるようにお願いします」
「名ばかりの妻でも思いやるのか?そんなことよりこんな穢れた関係を持たないほうがレオポルティーナには喜ばしかったはずだぞ」
「そ、それは…」
フェルディナントは父の言葉を聞いて項垂れた。
「やはりタレコミは本当だったんだな。出て行け。もう息子とも思わん」
フェルディナントがヨハンと共に執務室を退出しようとすると、ロルフはヨハンを呼び止めた。
「ヨハン、今後一切フェルディナントと会うことを禁じる。お前はここに残れ」
それを聞いてフェルディナントの顔色が変わった。ロルフがヨハンにこれからする仕打ちが手に取るように予想できたからだ。フェルディナントがヨハンの制止を押し切って遠乗りに出掛けて雨に濡れて帰って来た後、熱を出したことがあった。その罰に父はヨハンを手ひどく鞭打ち、傷が膿んだ彼は大分寝込んだ。
「ち、父上!ヨハンには荷物の整理を手伝ってもらいたいのですが…」
「ただの侍従をそこまで庇うとは、仮にもロプコヴィッツ侯爵家の後継ぎだった男が情けない」
「彼はただの侍従ではありません!私は彼を愛しています!」
「汚らわしい!二度とそのようなことを口に出すな!」
フェルディナントは頬を何度も平手打ちされ、床に倒れた。
「お前のココは男のケツ穴に突っ込むためにある訳じゃないだろう?!レオポルティーナを孕ませるためにあったはずだ!」
ロルフはフェルディナントの局部を足でぐりぐりと踏みつけた。
「ギャー!痛いっ!父様、止めて!痛いよぉー!」
「男の癖に情けない泣き声を出しよって!」
「旦那様、お止め下さい!」
フェルディナントがこれ以上ロルフから蹴られないように、ヨハンはロルフの脚に縋りついた。するとロルフは脚を振ってヨハンを振り落とし、彼をドカドカと足蹴にした。
「離れろ!汚らわしい!この獣め!」
「ち、父上、止めて下さい!」
「男に盛りよって汚らわしい!お前も同罪だ!フェルディナント!」
ロルフはフェルディナントをもう一度蹴り始めた。ヨハンはフェルディナントを守ろうとし、彼に覆いかぶさった。その事はロルフをますます激昂させた。ロルフはヨハンの背中をドカドカと足蹴にした後、彼の横腹の下から足を入れて蹴り、ヨハンをフェルディナントの上からどかそうとした。
「ヨハン、どけ!」
その騒動は執務室の外に出された執事にも聞こえた。彼はロルフが逆上したら何を言っても止められないことは分かっている。でもこれ以上フェルディナントが蹴られたら身体の弱い彼は危ない。フェルディナントが幼い時からロプコヴィッツ家に仕えている執事は若主人を心配した。こうなったロルフを執事はおろか、夫人でも止められはしないが、幼い時からロプコヴィッツ家に出入りして実の子供のように可愛がられているレオポルティーナなら止められるかもしれない。彼はレオポルティーナの部屋へ急いだ。
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「旦那様、エマニュエルという従騎士が旦那様に折り入って重要な話があると申しておりますが、どういたしましょうか?」
執事が執務室に入ってきてフェルディナントの父ロルフにそう尋ねた。
「重要な話?フン、いいだろう。聞いてみる。お前は部屋の外で待っていなさい」
「でも危険ではありませんか?彼は最近入った者です。信用できるかどうか分かりません」
「舐めないでくれ。こう見えても最近入ったぐらいの従騎士ごときに負ける私じゃない」
「し、失礼しました。ではエマニュエルを呼んでまいります」
執事に案内されて執務室に入って来たエマニュエルは、若い従騎士らしくまだ頬がバラ色であどけなさを残す美少年だった。
「エマニュエルとやら、最近我が家に入った従騎士と聞いた。一体どんな内密話があるというのだ?」
「実は見てしまったのです。神がお許しにならないような…こんなことを口に出すにもおぞましいのですが…」
「勿体がらずにさっさと言え」
「では…ぼ、僕は見てしまったんです!若旦那様と侍従が中庭で抱き合って…その、侍従が…若旦那様の…大事な所を擦って若旦那様は気持ちよさそうに喘いで…しゃ、射精まで…されてました」
そんなことを言われてもロルフは顔色を全く変えなかった。
「そうか。この事は誰にも言わないように。それとも誰かにもう話してしまったか?」
「いえ、とんでもございません!こんなお家の一大事、旦那様に話す前に誰にも話す訳がございません!」
「それでよい。これからも黙っているように。訓練に精を出すのだぞ」
ロルフは金貨の入った袋をエマニュエルに投げ渡した。
「かしこまりました!ありがとうございます!」
エマニュエルは、金貨の袋を握りしめながら執務室を出て行き、代わりに執事が執務室に入って行くのを見届けると独り言を口にした。
「さあて、ロルフがどうするか見物だな。アンゲラ様に報告せねば」
エマニュエルが執務室から去って間もなく、フェルディナントとヨハンがロルフに呼ばれた。フェルディナントは怒りを滲ませる父を前に戦々恐々として身を縮めた。
「フェルディナント、ヨハン。どうしてお前達が呼ばれたのか分かっているだろうな?」
「い、いえ…全く」
「私も旦那様のおっしゃる事が分かりません」
「フン、白々しい。お前達が世にもおぞましい背徳関係にあるとタレコミがあった。口止めはしたが、噂が広がるのは止められまい。お前は廃嫡だ。領地の境界近くに我が家の小さな別荘がある。そこで死ぬまで過ごせ。レオポルティーナがお前と一緒に行きたいと言えば連れて行ってもいいが、ヨハンは絶対だめだ。お前の出発は明日だから荷物をまとめておけ」
「分かりました…でもレオポルティーナには罪はありません。彼女とは離婚します。彼女のために白い結婚証明を教会に申請して下さい」
「そんなことをすれば、お前達の汚らわしい関係を公表するようなものじゃないか」
「でも彼女はまだ若いのです。せめて次の縁談に有利になるようにお願いします」
「名ばかりの妻でも思いやるのか?そんなことよりこんな穢れた関係を持たないほうがレオポルティーナには喜ばしかったはずだぞ」
「そ、それは…」
フェルディナントは父の言葉を聞いて項垂れた。
「やはりタレコミは本当だったんだな。出て行け。もう息子とも思わん」
フェルディナントがヨハンと共に執務室を退出しようとすると、ロルフはヨハンを呼び止めた。
「ヨハン、今後一切フェルディナントと会うことを禁じる。お前はここに残れ」
それを聞いてフェルディナントの顔色が変わった。ロルフがヨハンにこれからする仕打ちが手に取るように予想できたからだ。フェルディナントがヨハンの制止を押し切って遠乗りに出掛けて雨に濡れて帰って来た後、熱を出したことがあった。その罰に父はヨハンを手ひどく鞭打ち、傷が膿んだ彼は大分寝込んだ。
「ち、父上!ヨハンには荷物の整理を手伝ってもらいたいのですが…」
「ただの侍従をそこまで庇うとは、仮にもロプコヴィッツ侯爵家の後継ぎだった男が情けない」
「彼はただの侍従ではありません!私は彼を愛しています!」
「汚らわしい!二度とそのようなことを口に出すな!」
フェルディナントは頬を何度も平手打ちされ、床に倒れた。
「お前のココは男のケツ穴に突っ込むためにある訳じゃないだろう?!レオポルティーナを孕ませるためにあったはずだ!」
ロルフはフェルディナントの局部を足でぐりぐりと踏みつけた。
「ギャー!痛いっ!父様、止めて!痛いよぉー!」
「男の癖に情けない泣き声を出しよって!」
「旦那様、お止め下さい!」
フェルディナントがこれ以上ロルフから蹴られないように、ヨハンはロルフの脚に縋りついた。するとロルフは脚を振ってヨハンを振り落とし、彼をドカドカと足蹴にした。
「離れろ!汚らわしい!この獣め!」
「ち、父上、止めて下さい!」
「男に盛りよって汚らわしい!お前も同罪だ!フェルディナント!」
ロルフはフェルディナントをもう一度蹴り始めた。ヨハンはフェルディナントを守ろうとし、彼に覆いかぶさった。その事はロルフをますます激昂させた。ロルフはヨハンの背中をドカドカと足蹴にした後、彼の横腹の下から足を入れて蹴り、ヨハンをフェルディナントの上からどかそうとした。
「ヨハン、どけ!」
その騒動は執務室の外に出された執事にも聞こえた。彼はロルフが逆上したら何を言っても止められないことは分かっている。でもこれ以上フェルディナントが蹴られたら身体の弱い彼は危ない。フェルディナントが幼い時からロプコヴィッツ家に仕えている執事は若主人を心配した。こうなったロルフを執事はおろか、夫人でも止められはしないが、幼い時からロプコヴィッツ家に出入りして実の子供のように可愛がられているレオポルティーナなら止められるかもしれない。彼はレオポルティーナの部屋へ急いだ。
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