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21.診察
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「坊ちゃん、また無理をしたのですね」
「……いや……そんなつもりじゃなかったんだが」
「上半身を起こしてください。口の中と心音を確認します」
フェルディナントは上半身を起こそうとし、尻に激痛が走って唸った。
「坊ちゃん、どうされましたか?」
「あ、いや……ちょっと足をねん挫したかもしれない」
「じゃあ、そちらも見ますね。どちらの足ですか?」
ドミニクはフェルディナントの口の中を見て心音を確認した。
「喉は腫れてませんね。それじゃあ、右足をちょっと見ます――腫れてはいませんね。少し動かしますよ。痛いですか?」
「あ、いや……痛くない……気のせいだったかも」
「念のため、薬を塗っておきましょう。ヨハン、水と清潔な布を持ってきてくれ」
ドミニクは鞄の中から粉末状の薬草を取り出し、乳鉢に薬草と少しの水を入れて混ぜた。ドロドロな液体ができると布に塗ってフェルディナントの右足首に巻き、その上から鞄から取り出した包帯を巻いた。
次にヨハンに持ってこさせたグラスの中に別の薬草の粉末を入れ、水差しから水を入れて混ぜた。足に塗ったのと同じように見える、深緑色のドロドロな液体は、お世辞にもおいしそうに見えない。
「熱冷ましです。飲んでください」
「うわっ、まずい!」
「これだと効きが悪いので、座薬も入れます」
「えっ?! 嫌だよ!」
「恥ずかしがることはありません。私は患者のお尻は見慣れています」
「そういう問題じゃないんだ」
「我儘は駄目です。ヨハンがいるのが恥ずかしいなら退出させます。ヨハン、出て行ってくれますか?」
ヨハンは心配そうにフェルディナントを見ながら部屋を出た。
「ヤダよ、座薬なんていらない! げぇ、い゙、痛っ!」
フェルディナントがバタバタ抵抗すると、傷ついた肛門に激痛が走った。
「どうしましたか? どこが痛いのですか? 見せてください」
「いいよ、見なくていい!」
フェルディナントが暴れて寝間着のズボンの尻の部分に血が付いているのがドミニクに見えた。
「お尻を切りましたか? 血が付いています。手当をしましょう」
「いい、そのままにしておいて……あっ……い、痛っ……」
「傷を放置しておくと化膿して熱が引きませんよ。私は誰にも言いません。旦那様には疲労で熱が出たと報告しておきます。どうか手当させてください」
「本当に誰にも言わない?」
「ええ、信じて下さい」
フェルディナントは観念してうつ伏せになった。寝間着のズボンを下ろすとフェルディナントは痛みで唸った。
赤く腫れて裂けている後孔を見てドミニクは言葉を失った。
「これは酷い……血を拭き取って消毒してから軟膏を塗ります。痛くなりますが我慢して下さい」
「わーっ! 痛い、痛い、痛いっ!」
手当を終えた後、フェルディナントの秀麗な顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた。
ドミニクはフェルディナントの顔を清潔な布で拭き取った。
「手当は終わりました。しばらくは仰向けで寝ないように。それから……聞きたいことがあります。肛門が切れて腫れていました。どうしてこうなったのか、心当たりはありますね?」
フェルディナントはうつ伏せになったまま黙っていた。
「ヨハンを呼んでいいですか? 彼に聞きたいことがあります」
「誰にも言わないって言ったじゃないか!」
「ええ、でもヨハンとの遠乗り前には坊ちゃんはこんな状態ではなかったですよね」
ドミニクの知っているんだぞとでも言いたげな言葉と視線にフェルディナントは根負けした。
「……いや……そんなつもりじゃなかったんだが」
「上半身を起こしてください。口の中と心音を確認します」
フェルディナントは上半身を起こそうとし、尻に激痛が走って唸った。
「坊ちゃん、どうされましたか?」
「あ、いや……ちょっと足をねん挫したかもしれない」
「じゃあ、そちらも見ますね。どちらの足ですか?」
ドミニクはフェルディナントの口の中を見て心音を確認した。
「喉は腫れてませんね。それじゃあ、右足をちょっと見ます――腫れてはいませんね。少し動かしますよ。痛いですか?」
「あ、いや……痛くない……気のせいだったかも」
「念のため、薬を塗っておきましょう。ヨハン、水と清潔な布を持ってきてくれ」
ドミニクは鞄の中から粉末状の薬草を取り出し、乳鉢に薬草と少しの水を入れて混ぜた。ドロドロな液体ができると布に塗ってフェルディナントの右足首に巻き、その上から鞄から取り出した包帯を巻いた。
次にヨハンに持ってこさせたグラスの中に別の薬草の粉末を入れ、水差しから水を入れて混ぜた。足に塗ったのと同じように見える、深緑色のドロドロな液体は、お世辞にもおいしそうに見えない。
「熱冷ましです。飲んでください」
「うわっ、まずい!」
「これだと効きが悪いので、座薬も入れます」
「えっ?! 嫌だよ!」
「恥ずかしがることはありません。私は患者のお尻は見慣れています」
「そういう問題じゃないんだ」
「我儘は駄目です。ヨハンがいるのが恥ずかしいなら退出させます。ヨハン、出て行ってくれますか?」
ヨハンは心配そうにフェルディナントを見ながら部屋を出た。
「ヤダよ、座薬なんていらない! げぇ、い゙、痛っ!」
フェルディナントがバタバタ抵抗すると、傷ついた肛門に激痛が走った。
「どうしましたか? どこが痛いのですか? 見せてください」
「いいよ、見なくていい!」
フェルディナントが暴れて寝間着のズボンの尻の部分に血が付いているのがドミニクに見えた。
「お尻を切りましたか? 血が付いています。手当をしましょう」
「いい、そのままにしておいて……あっ……い、痛っ……」
「傷を放置しておくと化膿して熱が引きませんよ。私は誰にも言いません。旦那様には疲労で熱が出たと報告しておきます。どうか手当させてください」
「本当に誰にも言わない?」
「ええ、信じて下さい」
フェルディナントは観念してうつ伏せになった。寝間着のズボンを下ろすとフェルディナントは痛みで唸った。
赤く腫れて裂けている後孔を見てドミニクは言葉を失った。
「これは酷い……血を拭き取って消毒してから軟膏を塗ります。痛くなりますが我慢して下さい」
「わーっ! 痛い、痛い、痛いっ!」
手当を終えた後、フェルディナントの秀麗な顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた。
ドミニクはフェルディナントの顔を清潔な布で拭き取った。
「手当は終わりました。しばらくは仰向けで寝ないように。それから……聞きたいことがあります。肛門が切れて腫れていました。どうしてこうなったのか、心当たりはありますね?」
フェルディナントはうつ伏せになったまま黙っていた。
「ヨハンを呼んでいいですか? 彼に聞きたいことがあります」
「誰にも言わないって言ったじゃないか!」
「ええ、でもヨハンとの遠乗り前には坊ちゃんはこんな状態ではなかったですよね」
ドミニクの知っているんだぞとでも言いたげな言葉と視線にフェルディナントは根負けした。
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