43 / 113
ノ43 里村伊乃(さとむらいの)
しおりを挟む
仙人には大きく分けて二通りの種があるらしい。
一つは仙人界で生きる男女の仙人が恋をし、やがて実を結んで産まれる純血の仙人。
そしてもう一つは、人間界で普通の人間として産まれ、至極稀だが仙人の体質に近しい者が試練を乗り越えて仙人と成る場合であり、聖天座真如は後者にあたる。
時は安土桃山時代以前の室町時代まで遡る。
彼女は江戸時代でいうところの備中国(びっちゅうのくに)の貧しい百姓の家に生まれた。
人間としてこの世に生を受けた彼女の名は里村伊乃(さとむらいの)。
と云うわけで、彼女には人間であった頃の里村伊乃と云う名と、仙女になってからの聖天座真如と云う二つの名があるけれど、暫くのあいだは里村伊乃の方で語ることと致しましょう...
伊乃を育てた両親は、母親が百姓の女にしては美しい顔立ちをしていることを除けば、至って普通を絵に描いたようような夫婦であった。
美しい母親の血が濃かったのか、伊乃が五歳に成る頃には顔立ちもある程度整い、何処ぞの姫かと見紛うほどの可愛さを持ち合わせていた。
伊乃の両親は毎日よく働いてはいたが、貧しい暮らしはどうしようもなく続き、日々の食事も極めて質素なものとなり、両親は勿論のこと、成長期の伊乃の身体にも充分な栄養が行き渡っているとは云い難く、家族揃って痩せ細っていた。
取り分けて伊乃と両親だけが苦しい生活をしていたわけではなく、彼女の住む集落の人々は皆が皆似たような暮らしをしていたものだった。
そんな不遇な環境の中で生きていた伊乃であったけれど、不思議というか幸いというか五歳に成るまで病気という病気を一度として患らわず、両親を「健康な子で良かった」と安心させていたものである。
極端に健康的で可愛い部分以外は他の子供らと何ら変わりのない伊乃であったけれど、共に穏やかな性格の両親を、目の玉が飛び出るほどに驚かせた出来事を起こす。
それは、激しく雨の降る雨季を越え、カラッとした天気の続いたある日のこと、いつものように両親の畑仕事について行った。
両親が畑仕事に精を出しているあいだ、伊乃は畑の周りで一人遊びをするのが常だったのだが、この日の彼女は汗水垂らして働く両親の手伝いをしようと思ったらしく、鍬で畑を耕す母親の元へ近づき申し出る。
「おっかぁおっかぁ!オラにもやらせてくんろ」
愛する娘が初めてする手伝いの申し出に、母親のトヨが額の汗を腕で拭って応える。
「ありがとねぇ伊乃。でもあんたは未だちっちゃいから畑仕事は無理だよぉ」
一つは仙人界で生きる男女の仙人が恋をし、やがて実を結んで産まれる純血の仙人。
そしてもう一つは、人間界で普通の人間として産まれ、至極稀だが仙人の体質に近しい者が試練を乗り越えて仙人と成る場合であり、聖天座真如は後者にあたる。
時は安土桃山時代以前の室町時代まで遡る。
彼女は江戸時代でいうところの備中国(びっちゅうのくに)の貧しい百姓の家に生まれた。
人間としてこの世に生を受けた彼女の名は里村伊乃(さとむらいの)。
と云うわけで、彼女には人間であった頃の里村伊乃と云う名と、仙女になってからの聖天座真如と云う二つの名があるけれど、暫くのあいだは里村伊乃の方で語ることと致しましょう...
伊乃を育てた両親は、母親が百姓の女にしては美しい顔立ちをしていることを除けば、至って普通を絵に描いたようような夫婦であった。
美しい母親の血が濃かったのか、伊乃が五歳に成る頃には顔立ちもある程度整い、何処ぞの姫かと見紛うほどの可愛さを持ち合わせていた。
伊乃の両親は毎日よく働いてはいたが、貧しい暮らしはどうしようもなく続き、日々の食事も極めて質素なものとなり、両親は勿論のこと、成長期の伊乃の身体にも充分な栄養が行き渡っているとは云い難く、家族揃って痩せ細っていた。
取り分けて伊乃と両親だけが苦しい生活をしていたわけではなく、彼女の住む集落の人々は皆が皆似たような暮らしをしていたものだった。
そんな不遇な環境の中で生きていた伊乃であったけれど、不思議というか幸いというか五歳に成るまで病気という病気を一度として患らわず、両親を「健康な子で良かった」と安心させていたものである。
極端に健康的で可愛い部分以外は他の子供らと何ら変わりのない伊乃であったけれど、共に穏やかな性格の両親を、目の玉が飛び出るほどに驚かせた出来事を起こす。
それは、激しく雨の降る雨季を越え、カラッとした天気の続いたある日のこと、いつものように両親の畑仕事について行った。
両親が畑仕事に精を出しているあいだ、伊乃は畑の周りで一人遊びをするのが常だったのだが、この日の彼女は汗水垂らして働く両親の手伝いをしようと思ったらしく、鍬で畑を耕す母親の元へ近づき申し出る。
「おっかぁおっかぁ!オラにもやらせてくんろ」
愛する娘が初めてする手伝いの申し出に、母親のトヨが額の汗を腕で拭って応える。
「ありがとねぇ伊乃。でもあんたは未だちっちゃいから畑仕事は無理だよぉ」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる