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第四章
第二十六話 秘密兵器(以前、間違えて二十六話としてアップした話です)
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「完成しました……これが呪いを払うための秘密兵器です!」
カトリーヌさんとライルさん、そして各国の技術者や、聖教国の司祭たちの協力を得て、ついに念願の技術が確立された。
「えっと……これは一体?」
【神樹】の前に置かれているのは、鉄でできた腕のような魔導具だ。
その先端には、針のようなものが付いているが、感想としては想像とは違うというものだ。
「呪いを払うための魔導具です」
「てっきり、薬的な何かが出てくるのだと思ったのですが」
「ふふ。これは少しアプローチの異なる治療法なのです。この魔導具はかなり便利ですよ。このアームの針からはビームが発射されます」
「ビ、ビーム?」
魔術師の中には魔力を光線として放つ攻撃を使う者がいる。
その攻撃をビームと言ったりするが、それを射出してどうなるのだろうか?
「レヴィンさん、このビームの最大の特徴は、攻撃する対象を限定することが出来るということです」
「こうげきするたいしょうをげんていする?」
また、難しいことを言う。
「実際に例を見せましょうか」
カトリーヌさんがアームとやらを動かすと、針から光線が発射された。
「これは殺傷能力が一切ないただの可視光線です。こうして、私の身体に当てても害はありません」
アームを動かして自分に向ける。
光線はカトリーヌさんの身体で遮られるだけだ。
「でも、カトリーヌ。突然、光線を向けられたら心臓に悪いよ。やるなら僕を使って」
アーガスが申し出ると今度はアーガスに向けられた。
やはり、なにも起こらない。
「これを、特殊な光線に変化させます。すると、遮られずに身体を貫通します」
真っ青な光に変わると、今度は突然、アーガスの身体を貫いた。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。特に害はないですよ、レヴィンさん」
アーガスが平気そうに両手を振るう。
「さて、我々の見ている光は魔力によって変質させることで、さまざまな性質を帯びます。今の光は目で見ることは出来るけど、物体を貫通することも出来る状態です。更に性質を変化させれば、殺傷能力も得ますが、それを調節するとこんな事もできます」
今度は光がアーガスが用意した岩に当てられた。
一見なんともないが、カトリーヌさんの操作で光が赤へと変化した。
すると、ジュッという音と共に、岩から煙が噴出した。同時に、光が消える。
「岩を見てみてください。綺麗に抉り取られてますよね?」
「え、ええ……すごい威力ですね。これじゃ、地面にも穴が……ってあれ?」
「お気付きですか? 今の光線は岩だけを貫き、地面には何の影響ももたらしておりません」
「あ、分かりました。これで呪いだけを直接破壊するんですね」
「ええ、その通りです。この魔導具には【神樹】に入力されたデータが保存されています。それを基に光線の性質を操作し、特定の物質だけを攻撃する光線へと変化させるのです」
カトリーヌさんによると、実際にセキレイの大地で実験してみたところ、残留した呪いはこれで一掃されたらしい。
他にも呪いの影響が抜けきっていない動植物に照射したところ、完全に呪いから解放することが出来たとか。
「これでアイシャさんも……?」
「ええ。人に向かって使うのは、少し恐ろしいので、まだためらっているのですが……」
「確かに……動物でうまくいっても、人に対してはどうなるか分からないよなあ」
もちろん、カトリーヌさんとライルさんの研究の成果だし、心配はないと思うけど。
「カトリーヌさんのことを信じてますので。だからきっと、大丈夫です」
スピカはカトリーヌさんを励ますように拳を握る。
彼女はここしばらく、ずっとカトリーヌさんの側で手伝いをしてきたそうだ。
神竜族の身体データが圧倒的に足りていないこともあって、スピカの協力は大いに役に立ったとか。
「その通りです、カトリーヌさん。安全面については、かなり注意を払ってきましたし、【竜医局】のシミュレーションでは有効であるとの試算も出ています」
「そうですね。というわけで、最終的な調整を終えたら、すぐにでもアイシャさんたちの治療に取り掛かります」
「いよいよか……」
【覇王】の呪いとやらにはずいぶんと苦しめられた。
あのセキレイの残滓を倒しても、なおその影響は消えず、エリーゼやスピカにも寂しい想いをさせた。
「今度こそ、アイシャさんたちを治そう」
「完成しました……これが呪いを払うための秘密兵器です!」
カトリーヌさんとライルさん、そして各国の技術者や、聖教国の司祭たちの協力を得て、ついに念願の技術が確立された。
「えっと……これは一体?」
【神樹】の前に置かれているのは、鉄でできた腕のような魔導具だ。
その先端には、針のようなものが付いているが、感想としては想像とは違うというものだ。
「呪いを払うための魔導具です」
「てっきり、薬的な何かが出てくるのだと思ったのですが」
「ふふ。これは少しアプローチの異なる治療法なのです。この魔導具はかなり便利ですよ。このアームの針からはビームが発射されます」
「ビ、ビーム?」
魔術師の中には魔力を光線として放つ攻撃を使う者がいる。
その攻撃をビームと言ったりするが、それを射出してどうなるのだろうか?
「レヴィンさん、このビームの最大の特徴は、攻撃する対象を限定することが出来るということです」
「こうげきするたいしょうをげんていする?」
また、難しいことを言う。
「実際に例を見せましょうか」
カトリーヌさんがアームとやらを動かすと、針から光線が発射された。
「これは殺傷能力が一切ないただの可視光線です。こうして、私の身体に当てても害はありません」
アームを動かして自分に向ける。
光線はカトリーヌさんの身体で遮られるだけだ。
「でも、カトリーヌ。突然、光線を向けられたら心臓に悪いよ。やるなら僕を使って」
アーガスが申し出ると今度はアーガスに向けられた。
やはり、なにも起こらない。
「これを、特殊な光線に変化させます。すると、遮られずに身体を貫通します」
真っ青な光に変わると、今度は突然、アーガスの身体を貫いた。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。特に害はないですよ、レヴィンさん」
アーガスが平気そうに両手を振るう。
「さて、我々の見ている光は魔力によって変質させることで、さまざまな性質を帯びます。今の光は目で見ることは出来るけど、物体を貫通することも出来る状態です。更に性質を変化させれば、殺傷能力も得ますが、それを調節するとこんな事もできます」
今度は光がアーガスが用意した岩に当てられた。
一見なんともないが、カトリーヌさんの操作で光が赤へと変化した。
すると、ジュッという音と共に、岩から煙が噴出した。同時に、光が消える。
「岩を見てみてください。綺麗に抉り取られてますよね?」
「え、ええ……すごい威力ですね。これじゃ、地面にも穴が……ってあれ?」
「お気付きですか? 今の光線は岩だけを貫き、地面には何の影響ももたらしておりません」
「あ、分かりました。これで呪いだけを直接破壊するんですね」
「ええ、その通りです。この魔導具には【神樹】に入力されたデータが保存されています。それを基に光線の性質を操作し、特定の物質だけを攻撃する光線へと変化させるのです」
カトリーヌさんによると、実際にセキレイの大地で実験してみたところ、残留した呪いはこれで一掃されたらしい。
他にも呪いの影響が抜けきっていない動植物に照射したところ、完全に呪いから解放することが出来たとか。
「これでアイシャさんも……?」
「ええ。人に向かって使うのは、少し恐ろしいので、まだためらっているのですが……」
「確かに……動物でうまくいっても、人に対してはどうなるか分からないよなあ」
もちろん、カトリーヌさんとライルさんの研究の成果だし、心配はないと思うけど。
「カトリーヌさんのことを信じてますので。だからきっと、大丈夫です」
スピカはカトリーヌさんを励ますように拳を握る。
彼女はここしばらく、ずっとカトリーヌさんの側で手伝いをしてきたそうだ。
神竜族の身体データが圧倒的に足りていないこともあって、スピカの協力は大いに役に立ったとか。
「その通りです、カトリーヌさん。安全面については、かなり注意を払ってきましたし、【竜医局】のシミュレーションでは有効であるとの試算も出ています」
「そうですね。というわけで、最終的な調整を終えたら、すぐにでもアイシャさんたちの治療に取り掛かります」
「いよいよか……」
【覇王】の呪いとやらにはずいぶんと苦しめられた。
あのセキレイの残滓を倒しても、なおその影響は消えず、エリーゼやスピカにも寂しい想いをさせた。
「今度こそ、アイシャさんたちを治そう」
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