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第五章 慟哭のヘルプマン
11 帰還
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黒岩銀次郎の報告を受けて、電脳の白河課長は経過を報告に本部長の所へ行った。
電脳捜査課に弛緩した空気が広がり、和やかな雑談が始まったが、誰もモニターの一つが消えている事にしばらくの間気が付かなかった。そのモニターとは……。
「あれ? おーい、聞こえてますかー!」
「通信切れちゃった?」ピッパー君のパネルを叩きながら小雪は話したが、応答が無い。
「ん?」
不思議に思いピッパー君の顔を覗くと、ニヤリと笑ったピッパー君と目が合った。
「強制的に通信を遮断しました。帰りの船は四日後ですから……」
「もう少しここで楽しみましょう。小雪お嬢様」
「え! もうイヤー!!」
ちなみに、海上保安庁のヘリで精神的に衰弱した(?)中山小雪が無事帰還したのは、予定より少し早い二日後のことであった。
☆☆ ☆☆
「それは、とんだ災難でしたね」
取調室で小雪は金城の取り調べを行っているのだが、ほとんど愚痴を聞いてもらっている感じになってしまっていた。
「私も貴方が一番先に答えに辿り着くんじゃないかと恐れていたんですよ」
「そんな買い被りは止めて下さい。わたしはただ事実を突き合わせて行っただけですから」
「でもね、その冷静な分析が実は一番大事なんではないんですか? 貴方は刑事に向いていますよ」
「ありがとうございます。犯人の貴方に言われてもどうでしょうか? 説得力あるんでしょうかね?」
「自信を持って下さい。仁さんを見つけ出してくれたのは貴方なんですから」
金城は仁義弘の自殺を止められた事で電脳のメンバー、特に中山小雪に対して非常に感謝をしていた。
「でも、あの無人島は酷かったですよ」
「え? 快適では無かったですか?」
しかし、無人島に関しては話がどうも噛み合わなかった。
「何で、あんな名前にしたんですか?」
「え? 元々そう言う名前だったので……」
「死霊島?」
「はい、四領島」
「死霊の島ですよね?」
「四つの島があるので、そう呼ばれていますけど……」
「もしかして、漢字が違う?」
「どこにも漢字では表記されていませんが」
ドンと急に立ち上がった小雪は、拳を握りしめながらこう叫んだ。
「ピッパー。ぶっ殺す!」
しばらくの間、小雪の脳裏にはピッパー君のあのにやけた顔が焼き付いて離れなかった。
数日後、放課後の教室に三人が帰る支度をしながら話していた。
「僕は驚いたよ。一番遠い所に居たはずの志乃(シノン)が一番最初に仁さんに飛び付いたんだからね」
「それも、ボロボロ泣きじゃくってでしょ」
にやーっとしながら恵が志乃の顔色をうかがった。
「うるさい!」
志乃は、つんとしながら鞄を持って先に歩き出す。
「ちょっと待ってよ。今日は仁さんの家に寄るんでしょう。一緒に行くよ」慌てて一郎が鞄に本を押し込めて追いかける。
当分は仁の留守の間、三人が交替で掃除などすることになったのだ。
「でも、恵(メグ)あの時の真剣勝負、ホントはどうしようとしてたの?」振り返った志乃が恵に聞いた。
「ん? どうするって言ったって……」立ち止まって考えたが、すぐに諦めて歩き出す。
「ノープラン?」
「考えたって仕方ないよ。ただ動くだけじゃない?」そう言ってから、再び振り返って言った。
「でも、親父には感謝してるんだ。あの時、強引に割り込んでくれて、そうじゃなきゃあ……ね」
三人が見上げた空には雲一つなく、当分良い天気が続きそうなそんな予感がしていた。
電脳捜査課に弛緩した空気が広がり、和やかな雑談が始まったが、誰もモニターの一つが消えている事にしばらくの間気が付かなかった。そのモニターとは……。
「あれ? おーい、聞こえてますかー!」
「通信切れちゃった?」ピッパー君のパネルを叩きながら小雪は話したが、応答が無い。
「ん?」
不思議に思いピッパー君の顔を覗くと、ニヤリと笑ったピッパー君と目が合った。
「強制的に通信を遮断しました。帰りの船は四日後ですから……」
「もう少しここで楽しみましょう。小雪お嬢様」
「え! もうイヤー!!」
ちなみに、海上保安庁のヘリで精神的に衰弱した(?)中山小雪が無事帰還したのは、予定より少し早い二日後のことであった。
☆☆ ☆☆
「それは、とんだ災難でしたね」
取調室で小雪は金城の取り調べを行っているのだが、ほとんど愚痴を聞いてもらっている感じになってしまっていた。
「私も貴方が一番先に答えに辿り着くんじゃないかと恐れていたんですよ」
「そんな買い被りは止めて下さい。わたしはただ事実を突き合わせて行っただけですから」
「でもね、その冷静な分析が実は一番大事なんではないんですか? 貴方は刑事に向いていますよ」
「ありがとうございます。犯人の貴方に言われてもどうでしょうか? 説得力あるんでしょうかね?」
「自信を持って下さい。仁さんを見つけ出してくれたのは貴方なんですから」
金城は仁義弘の自殺を止められた事で電脳のメンバー、特に中山小雪に対して非常に感謝をしていた。
「でも、あの無人島は酷かったですよ」
「え? 快適では無かったですか?」
しかし、無人島に関しては話がどうも噛み合わなかった。
「何で、あんな名前にしたんですか?」
「え? 元々そう言う名前だったので……」
「死霊島?」
「はい、四領島」
「死霊の島ですよね?」
「四つの島があるので、そう呼ばれていますけど……」
「もしかして、漢字が違う?」
「どこにも漢字では表記されていませんが」
ドンと急に立ち上がった小雪は、拳を握りしめながらこう叫んだ。
「ピッパー。ぶっ殺す!」
しばらくの間、小雪の脳裏にはピッパー君のあのにやけた顔が焼き付いて離れなかった。
数日後、放課後の教室に三人が帰る支度をしながら話していた。
「僕は驚いたよ。一番遠い所に居たはずの志乃(シノン)が一番最初に仁さんに飛び付いたんだからね」
「それも、ボロボロ泣きじゃくってでしょ」
にやーっとしながら恵が志乃の顔色をうかがった。
「うるさい!」
志乃は、つんとしながら鞄を持って先に歩き出す。
「ちょっと待ってよ。今日は仁さんの家に寄るんでしょう。一緒に行くよ」慌てて一郎が鞄に本を押し込めて追いかける。
当分は仁の留守の間、三人が交替で掃除などすることになったのだ。
「でも、恵(メグ)あの時の真剣勝負、ホントはどうしようとしてたの?」振り返った志乃が恵に聞いた。
「ん? どうするって言ったって……」立ち止まって考えたが、すぐに諦めて歩き出す。
「ノープラン?」
「考えたって仕方ないよ。ただ動くだけじゃない?」そう言ってから、再び振り返って言った。
「でも、親父には感謝してるんだ。あの時、強引に割り込んでくれて、そうじゃなきゃあ……ね」
三人が見上げた空には雲一つなく、当分良い天気が続きそうなそんな予感がしていた。
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