グリムの輪舞曲(ロンド)

ふるは ゆう

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第一話 狼と七匹の子ヤギ

エピローグ

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 捜査一課の部屋に一か所だけ明かりが点いている机があった。石川はそれを見て嬉しそうに近付いていく。
「もうそのぐらいにしておけよ。明日も早いぞ」今日の事件の事で納得がいっていないのだろう。陣内は残って関係する資料をあさっていた。
「ええ、もうこのぐらいにしておきますけど……悔しいんですよね。せっかく田中一也と山科由美の接点を見つけたのに。捜索願が去年で、もう自殺していたなんて……ちゃんと最後まで調べていれば……」
「まあ、そう言うな。最後まで調べていれば田中一也が自殺したのは去年の夏だから、二人の接点は『なし』ってことになっちまうぜ」励ますように石川が肩を叩いた。
「お前が勘違いしたから、一年前の自殺と今回のとが重なったんだ」石川は満足げにうなずいた。

「一年越しの二人の自殺。それもあの殺人事件の被害者だ。今はわからないが、何かがこの二人を結び付けたのかもしれないな」
「何がでしょうか?」
「誰かがなのかもしれないな。二人を結び付けて、自殺に追いやった……そんな誰かがいたとしたら……」
「許せませんよね!」
「ああ、そうだな」

 二人の話が終わろうとした頃、捜査一課に入ってくる人物がもう一人あった。
「おー、まだいたね。こっちは簡単だったよ」
 交通総務課の山内瞳(やまうちひとみ)であった。すぐに陣内のPCにUSBをさして言った。
「これ何? 浮気調査なんて、あんたやらないわよね。まあ、画像合成はピッタリ重なったわよ」どや顔で微笑んだ。
 陣内が画像の合成・編集が得意な同期に一也と由美の写真の合成を頼んでいたのだ。
  
「ほら見て、助手席の彼女の手と運転席の彼氏の手。これ絶対恋人繋ぎになってるから」そう言って重ね合わせた画像を拡大する。
 陣内の目にも確かに指を絡めてしっかりと握りあっている……そんなふうに映ったのだった。

 強引にランチの約束をゲットした瞳は、上機嫌で部屋を後にした。残された石川と陣内は無言のまま顔を見合わせる。
  
「これも、上に報告するんですか?」
「う~ん、するだけしてみるがな……一年越しの恋人繋ぎか……それはそれで、ロマンチックなんだろうがなぁ……」

 真夏の夜は静かに更けていった。
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