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21話
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「分かりかねるって……どういうことよ! ちゃんと治療をしなかったの!?」
「いえ、治療は適切に行われました。ですが医師によると、心的外傷が原因で昏睡状態に陥っているのではないかと……」
「~~っ!」
ロザンナは奥歯を噛み締めると、ベッドへ駆け寄ってライラの大きく肩を揺さぶった。
「ちょっとライラ! さっさと起きなさい!」
「おやめください、奥様! 不用意に大きな刺激を与えるのは危険です……!」
思わぬ行動に、執事が慌てて止めに入ろうとする。
「これは私たちの問題だ! 執事が口出しをするな!」
鬼気迫る形相のレオーヌ侯爵が、横から執事を突き飛ばす。
そして、この喧騒のなかで眠り続ける娘を怒鳴りつけた。
「この馬鹿娘! お前には、ソルベリア公爵との子を産むという使命があるのだぞ!」
「ああ、困ったわ! いつまでも眠ったままじゃ子作りをさせられないし、夜会にも茶会にも出席できないじゃないの!」
「大体、何故自ら川に身を投げたのだ! 何か不満でもあったというのか!?」
「私たちが大事に育ててあげて、ソルベリア公爵にも愛されていたのに……この恩知らず!」
いくら罵倒しても、娘が瞼を開くことはない。
その寝顔が癪に障り、レオーヌ侯爵が衝動的に手を上げようとした時だった。
「少し頭を冷やせ。一番苦しんでいるのは、彼女自身だ」
見かねたメルヴィンは、侯爵の腕を掴んで諭す。
その剣呑な眼差しに、夫妻は我に返るとベッドから後ずさりをした。
「……お見苦しいところを見せてしまい、失礼いたしました」
一方、トーマスは文字通り頭を抱えて、ぶつぶつと呟いていた。
「くそぉ……ライラをすぐにでも抱けると思ったのに……ていうか、ブスになっちゃってるし……あんなのを僕の屋敷で世話をするなんて、面倒臭いし……」
すると何かが閃いたのか、突然「あっ!」と声を上げた。
そして満面の笑みで、ライラを指差しながら言い放つ。
「この子は……ライラじゃない! 別人だ!」
室内の空気が、一瞬にして凍りついた。
「いえ、治療は適切に行われました。ですが医師によると、心的外傷が原因で昏睡状態に陥っているのではないかと……」
「~~っ!」
ロザンナは奥歯を噛み締めると、ベッドへ駆け寄ってライラの大きく肩を揺さぶった。
「ちょっとライラ! さっさと起きなさい!」
「おやめください、奥様! 不用意に大きな刺激を与えるのは危険です……!」
思わぬ行動に、執事が慌てて止めに入ろうとする。
「これは私たちの問題だ! 執事が口出しをするな!」
鬼気迫る形相のレオーヌ侯爵が、横から執事を突き飛ばす。
そして、この喧騒のなかで眠り続ける娘を怒鳴りつけた。
「この馬鹿娘! お前には、ソルベリア公爵との子を産むという使命があるのだぞ!」
「ああ、困ったわ! いつまでも眠ったままじゃ子作りをさせられないし、夜会にも茶会にも出席できないじゃないの!」
「大体、何故自ら川に身を投げたのだ! 何か不満でもあったというのか!?」
「私たちが大事に育ててあげて、ソルベリア公爵にも愛されていたのに……この恩知らず!」
いくら罵倒しても、娘が瞼を開くことはない。
その寝顔が癪に障り、レオーヌ侯爵が衝動的に手を上げようとした時だった。
「少し頭を冷やせ。一番苦しんでいるのは、彼女自身だ」
見かねたメルヴィンは、侯爵の腕を掴んで諭す。
その剣呑な眼差しに、夫妻は我に返るとベッドから後ずさりをした。
「……お見苦しいところを見せてしまい、失礼いたしました」
一方、トーマスは文字通り頭を抱えて、ぶつぶつと呟いていた。
「くそぉ……ライラをすぐにでも抱けると思ったのに……ていうか、ブスになっちゃってるし……あんなのを僕の屋敷で世話をするなんて、面倒臭いし……」
すると何かが閃いたのか、突然「あっ!」と声を上げた。
そして満面の笑みで、ライラを指差しながら言い放つ。
「この子は……ライラじゃない! 別人だ!」
室内の空気が、一瞬にして凍りついた。
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