ルシアナのマイペースな結婚生活

ゆき真白

文字の大きさ
233 / 280
第十二章

ルシアナのお願い(四)※

しおりを挟む
「ま、待ってくれ……!」

 腰紐を解いたところで、レオンハルトから制止がかかる。

「どうかされましたか?」

 レオンハルトのナイトガウンの前の開きながら問えば、レオンハルトは目尻を赤く染めながらルシアナを見つめた。

「ふ、触れるというのはつまり……」
「いつもレオンハルト様がしてくださるようなことですわ」

 厚い彼の胸板に触れれば、ぴくりと胸筋が震えた。
 小さく口を開けながら、呆然と自分を見つめるレオンハルトに、ルシアナは嫣然と笑んだ。

「レオンハルト様がしてくださるように、わたくしも優しく大切に触れますわ」

 胸に触れていた手を下へと滑らせ、綺麗に割れた腹筋を撫でれば、レオンハルトの口から熱い吐息が漏れた。ゆっくりと両腕を上げ、腰を掴もうとするレオンハルトに、ルシアナは「いけませんわ」と笑みを深める。

「決して触れてはいけないと申しましたでしょう? レオンハルト様」
「っ、すまない、ルシアナ。俺が悪かった。どうか貴女に触れさせてくれ。頼む」

 熱に浮かされたように瞳を揺らすレオンハルトに、ルシアナは、うーん、と首を捻る。
 指先で腹筋の溝をなぞりながら、ルシアナは鼻先が触れるほど顔を近付けた。

「レオンハルト様。わたくし、ここ数日本当に寂しかったのです。レオンハルト様はもう、わたくしに触れたくなくなってしまったのではないかと不安で……」
「ああ、っ……俺が悪かった、だからっ――」
「だから、」

 レオンハルトの言葉に被せるように語気を強めると、ルシアナはにこりと笑んでレオンハルトの唇に吸い付いた。

「わたくしの好きなようにさせてはくださいませんか? お願いいたします、レオンハルト様」

 首に腕を回し、甘えるように小首を傾げれば、レオンハルトはきつく眉を寄せた。

「……わかった」

 顔を俯かせ、絞り出すようにそう漏らしたレオンハルトは、半端に上げていた腕を下ろすと、強くシーツを掴んだ。

(……少し強引だったかしら)

 ルシアナはわずかに眉尻を下げると、脇腹から胸元、首筋へと手を滑らせた。

「わたくしに触れられるのはお嫌ですか?」

 以前もこんなことを尋ねたな、と思いながら問えば、顔を俯かせたままレオンハルトが首を横に振る。
 その姿がルシアナに何とも言えない高揚感を与え、胸を高鳴らせた。

(……何故かしら。何故だかとってもいけない気分になってくるわ)

 レオンハルトの嫌がることがしたいわけではないが、もっと意地悪としたい、という気持ちがむくむくと芽生えてくる。
 シルバーグレイの髪から覗く耳が真っ赤になっているのを眺めながら、ルシアナはレオンハルトの頬を両手で包み込んだ。

「こちらを向いてください、レオンハルト様」

 少し力を入れれば、レオンハルトは導かれるまま素直に顔を上げる。いつも澄んでいるシアンの瞳が劣情を滾らせているのを見て、小さく喉が鳴った。
 ルシアナはわずかに目を細めると、そのまま唇を重ねる。何度か啄むように口付け、そっと舌を挿し入れた。しかし、迎え入れてくれたレオンハルトが舌を動かしたのを察知すると、すぐさま顔を離す。

「動いてはいけませんわ、レオンハルト様」
「……これもだめなのか?」
「はい。レオンハルト様との特別なキスは気持ちがよくて……すぐいっぱいいっぱいになってしまいますもの。今は少々困りますわ」

 レオンハルトは眉間の皺を深め、喉奥から、ぐぅ、と声にならない声を漏らしたものの、特に反対の声は上げなかった。ルシアナは宥めるように眉間や頬に口付けを繰り返しながら、レオンハルトの薄い唇を指先でなぞる。

「レオンハルト様のようにはできないかもしれませんが、一生懸命頑張りますので……舌を出してはいただけませんか?」

 レオンハルトは何も言わず、薄く唇を開いて舌を差し出した。従順なその姿に、ルシアナは嫣然と笑むと舌を絡めた。いつもレオンハルトがしてくれるように、舌の裏を舐め、唾液を交換するように舌を擦り合わせる。

(わたくしだけが動いているからかしら。いつもより絡めづらい……)

 しかしレオンハルトから舌を絡められると腰砕けになってしまう、とルシアナは一生懸命、彼の舌を愛撫した。レオンハルトがするようにちゅうっと舌先に吸い付けば、レオンハルトが、ふ、と笑みのような吐息を漏らす。

「……やっぱり拙いですか?」

 唾液に濡れたレオンハルトの唇を舐めながら問えば、レオンハルトはわずかに眉尻を下げた。

「いや、すまない。一生懸命な貴女が愛らしくて」

 それはやっぱり拙いということだろうか、と若干唇を尖らせながら、ルシアナは視線を下げる。ルシアナが足の上に乗ったあたりから元気になり始めたそれは、先ほどより盛り上がりを見せているような気がした。拙い舌戯でもきちんと反応してくれたことが嬉しくて、拗ねた気持ちはどこへやら、ルシアナは柔らかに笑みながら、下衣越しに彼のものに触れる。

「っルシアナ……」
「よかったですわ。多少なりともそういう気持ちになっていただけたようで」

 ルシアナはいそいそと下衣と下穿きの紐を緩めると、その両方に手を掛ける。

「レオンハルト様、少し腰を浮かしていただけますか?」
「……」

 わくわくした面持ちのルシアナとは対照的に、レオンハルトは再び険しい表情を浮かべたものの、素直に腰を上げた。「ありがとうございます」とお礼を口にしながら、そろそろと穿いているものを下ろせば、緩く立ち上がった彼のものが外に出る。久しぶりに目にする彼のものに、ルシアナは一瞬動きを止めたものの、すぐに彼の下半身から衣服を抜き取った。
 中途半端にナイトガウンだけ羽織った姿になったレオンハルトに、ルシアナはほうっと息を吐き出した。

(すべてを脱いで裸になるより……何と言うか、いけないことをしている気分になるわ)

 ルシアナは剥き出しになったレオンハルトの太腿を撫で、彼のものにそっと手を添えながら、首筋に口付けを落とす。

「嫌なときは嫌ときちんとお伝えくださいね。それから、快楽には抗わず、身を任せてください。大きな声はいくら出していただいても構いませんわ」

 初めてレオンハルトに触れられたときに言われた言葉を、今の状況に合わせた文言に変えて彼に伝える。
 ルシアナの言葉に覚えがあったのか、レオンハルトはわずかに目を見張ったものの、一拍置いて小さく頷いた。
 ルシアナは、ふふ、と笑みを漏らすと、レオンハルトの頬に口付け、そのまま首筋、鎖骨、と口付ける位置を下げていった。
 一方の手は欲芯に添えたまま、もう一方の手を彼の胸に当てる。

(レオンハルト様がされるように揉むことは……できないわけではないわね)

 ふにふにと彼の胸筋を揉みつつ、ルシアナの意識は小さな胸の飾りへと向いていた。

(男性は、この部分を愛でられて気持ちがいいと感じる方もいれば、そうでない方もいると本には書いてあったわ。時間をかければ徐々に気持ちよくなることもある、とあったけれど、レオンハルト様はどうかしら)

 ルシアナは一瞬の逡巡ののち、手で触れていないほうの胸の飾りに、ちゅう、と吸い付いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎ 清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。 膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。 さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。 社交は上品に、恋心は必死に隠したい。 なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——! むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。 清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...