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第八章

確かめ合う想い(三)※

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 くちゅ、という水音が聞こえ、ルシアナは首まで赤くなる。

「あ、あの――っぁ」

 指が一本、ゆっくりと中へ侵入し、体に力が入る。しかし、十分すぎるほど濡れているそこは、以前に比べ滑らかに指を受け入れる。

「あっあっレオンハルトさまっ……!」

 羞恥より心許なささが勝ち、レオンハルトに手を伸ばす。彼はふっと眉尻を下げると、右足を押さえていた手を外し、伸ばされたルシアナの手と指を絡める。
 ルシアナはきゅっとその手を握ると、ほっと息を吐き出す。それで力が抜けたのか、レオンハルトが止めていた指を再び動かし始める。

「ぁ、」

 根元まで入れた指をギリギリまで引き抜き、再びゆっくり根元まで沈める。柔襞を撫でるように指を回され、爪先に力が入る。ぐっと閉じる口に力を入れると指が引き抜かれ、濡れた指が隠れた秘芽を撫でつけた。

「っ……んん」
「声は我慢しなくていい」
「ですが、ぁ」
「……この執務室は、中から鍵をかけると防音魔法がかかり、外からは開けられない仕組みになっている。だから何も気にする必要はない」
「――ン」

 鍵なんていつかけたのだろう、と思って、メイドからトレイを受け取るため、彼が席を立っていたことを思い出す。

『……だがまぁ、それで選んだのが、防音がしっかりした執務室なんだから、結局……』

 そう言って黙った彼の姿も蘇り、きゅう、と胸が締め付けられた。
 こうして触れたいのを、彼はずっと理性で押し殺し耐えていたのか、と思うと、その努力を無駄にしてしまった申し訳なさより、触れたいと思ってくれていたことに対する悦びが勝った。
 失った指を戻してほしいとでもいうように膣道がひくつくのを感じながら、ルシアナは熱っぽい視線でレオンハルトを見つめる。

「レオンハルト様……」

 繋いだ手を自分のほうへ引き寄せるように引けば、彼は手を放し、ルシアナの顔の横に手をついて覆い被さる。ルシアナはレオンハルトの首へ手を回すと、濡れた目元に落とされるキスを甘受する。

「……どうしてほしい?」

 至近距離で自分を見下ろす彼の瞳には、確かな欲が宿って見えた。
 ルシアナは首を伸ばし、その薄い唇に口付けると、柔らかな微笑をレオンハルトに向ける。

「中に触れてほしいです」
「……そうか」

 恥ずかしさがないわけではない。しかし、レオンハルトがあまりにも嬉しそうに微笑んだため、そんなことはもうどうでもよくなってしまった。

「ぁ」

 再び沈められた指に、ルシアナは喉を震わせる。蜜洞は戻って来た指を歓迎するように蠢き、指を締め付けた。
 先ほどより早く指を前後させながら、レオンハルトはルシアナの頬に口付ける。

「痛くないか?」
「ン……きもちいい、です」
「そうか」

 喜色を孕んだ声に、ルシアナも嬉しくなる。もたらされる快楽について素直に口にするのは恥ずかしいが、レオンハルトが喜んでくれるなら、いくらでも素直に伝えたいと思った。

「ッア――!」

 突然与えられた鋭い快楽に、引き絞ったような声が漏れる。
 柔襞を擦られるのと同時に、指の腹でぐっと淫芽を潰されたのだ。そのまま指の腹で上下に淫芽をさすられると、頭の芯が痺れたようになり、ぴくぴくと足先が震えた。

「ぁ、ああ」

 どこかぴりぴりとした淫芽からの快楽をさらに高めるように、レオンハルトは中に入れた指を鉤状に曲げ、淫芽の裏を押し上げる。愉悦が重なり、どんどん体の奥も頭も溶けていく。
 レオンハルトは、鉤状になった指の先で円を描くように膣壁を擦りながらルシアナの耳に口を寄せ耳殻に舌を這わせた。

「ふ、ァ、ッぁ」

 舌先が耳孔に侵入し、その縁をねっとりと舐められる。

(あ、だめ……)

 ルシアナはレオンハルトのシャツを掴み、どんどん下腹部に溜まっていく快感から意識を逸らさないよう、その体温に身を委ねる。

「は、あっ、ン」

 淫芽を指の腹で捏ねながら、内壁をぐっぐっと何度も押されると、次第に下肢が小さく震えていく。もう終わりが近いことを知らせるように震えが大きくなった、その瞬間。ずるり、と中から指が引き抜かれた。

「――え」

 あともう少しで到達できたはずの果てを迎えられず、下腹部がもどかしそうにじんじんと疼く。突然宙に放り投げられたような心地になり、呆然とするルシアナを、顔を上げたレオンハルトが涼しげな表情で見下ろした。
 中途半端に放り出され、じわりと涙を滲ませるルシアナに、レオンハルトは小さく笑む。

「な、なん――ッァ」

 空虚にひくついていた蜜洞が、三度みたび塞がれる。しかし、先ほどとはその窮屈さが違い、指が一本増やされたことを理解する。

「ふ、ン」

 一本のときに比べるとやはり苦しさを感じるが、果てを迎えそうなほど高められていたためか蜜洞は柔らかく解れ、以前より違和感は少なかった。にもかかわらず、レオンハルトは今初めて指を入れたかのように、再びゆっくりと指を前後させる。

「ん、ぅぅ……」

 隘路を確かめるように、ゆっくり、ゆっくり、奥から手前へ移動する指の感覚に、ルシアナはきゅっと足先を丸める。

(ちがう……ちがうの……)

 増した質量にきつさを感じているのは事実だが、今ほしいのは、こんな風に揺蕩う刺激ではない。
 先ほどのように、気持ちいいところを擦ってほしい。中の壁を押して、中途半端に散ろうとしている快感をもう一度集め、すべて弾けさせてほしい。
 そう思うものの、ただ触ってほしい、気持ちいい、と伝えることと、具体的にしてほしいことを伝えるのは、羞恥の度合いが違いすぎた。

「ぅ、ン」

 このもどかしさをどうしたらいいのか、やはり伝えるべきなのだろうか、と快楽に支配された脳内で考えていると、小さな笑い声が聞こえた。
 ふと意識をレオンハルトへ戻せば、彼は愉悦の滲む微笑を浮かべていた。

「腰が動いてる。……物足りなかったか?」
「え――」

 言われて初めて、レオンハルトの指に擦り付けるように、自ら腰を揺らしていたことに気が付く。

「――あ、ちが、ちが……」

 それがしてはいけない行為なのか、してもいい行為なのかはわからないが、口からは反射的に否定する言葉が出ていた。体は強張り、はらはらと涙が流れ落ちる。

「きら、嫌わないでくださ……」
「俺が貴女を嫌うわけがないだろう。だから、どうしてほしいのか、きちんと貴女の口から教えてくれ。……貴女が望むなら、どんなことでも叶えよう」

 正常な思考を奪うような甘美な囁きに、ルシアナは涙を流しながら小さく喉を鳴らした。
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