【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる

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兄と弟と村の人達

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 この貧しい村には、子供たちもそう多くはないが暮らしていた。

 子供たちは、少し成長すると家の事や自分より年下の子の面倒をみたり、自給自足で暮らす為皆大人たちの手伝いをする。



 七歳になったクラウディオや村の子供達たちも、そのように手伝いをするようになる。しかし、兄のアルサイドはそのような事をあまりさせられてはいなかった。アルサイドは好きな事を好きなようにしていても、両親は特に何も言わなかった。
 むしろ、アルサイドがやらない分、家の事はクラウディオが主に行っている。
 ただ、アルサイドに呼ばれた時だけは、クラウディオも手伝いをしなくて済んだ。…その後に、しわ寄せがいくのだが。



「おい、クラウディオ!今日オレに付き合え!」


 朝食が済むと、午前中にするべき事を家族各々で話し作業をするのだが、気まぐれでアルサイドがクラウディオにそう声を掛ける日もよくあった。


「あら、アルサイド。今日も訓練するの?偉いわねぇ!
クラウディオ、じゃあ相手をしてあげなさい。二人共、気をつけるのよ。そのあとで、クラウディオ家の事をお願いね。」

「そうだな、クラウディオ。アルサイドの役に立つようにな!それが終わったら、最低限から家の事はしてくれよ。」


 両親は、アルサイドに能力があると知り、アルサイドがそれを高める為に訓練しているならばとそれを優先させる事にしていた。
 しかし、両親は村の住人達と共に畑仕事もある。本来であれば、親が畑仕事をやっている家庭は子供達が家の事を行うのがこの村の基本だ。だがアルサイドは家の事をほとんどしないのでその分、クラウディオが行わないと家の事は疎かになってしまうのだ。


(あーあ。兄ちゃんと一緒に居られるのはいいんだけど、あとから家の事、やらないとなぁ…。)


 クラウディオは、兄と共に過ごせるのは嬉しいが、その後で自分が短い時間に家の事をしないといけないのでだんだんと億劫になってきていた。


「クラウディオ、今日は木登りでもするか?」

「兄ちゃん、たまには一緒に薪拾いしようよ。」

「薪拾いかー、まぁいつもクラウディオがやってくれてるもんな。じゃあクラウディオ、あっちで拾ってきてくれるか?オレはこっちで拾うからさ。」

「うん、分かった!」


 クラウディオは兄がすんなり自分の言う言葉に理解を示してくれた事が嬉しく、素直に少し離れた場所へと駆け出した。




ーーー
ーー



「おークラウディオ!結構遅かったなぁ!」

「だって、いっぱい拾ってきたんだよ。みてー!」

「お、クラウディオ大漁じゃねぇか!」


 クラウディオが、木の枝をそれこそ前が見えないほど抱えて持ってきて、小さな石を枕にして草の上で横になっているアルサイドに近寄ると、地面にドサッと置いた。


「あれ?兄ちゃんは?」

「あんましこっちには無くてなぁ。クラウディオがたくさん取ってきてくれて助かったよ!」


 クラウディオがキョロキョロと辺りを見渡すと、近くの太い木の根元に、クラウディオが取ってきた三分の一ほどにも満たない量の枝が置かれている。


(え、これだけ!?)


 クラウディオはそれでも、アルサイドが次の言葉を必ず言うので、仕方ないと諦めていた。


「薪になりそうな枝はこの辺り少なくてさ、クラウディオを待ってたんだけどその間に訓練してたら疲れちまってよ、クラウディオ、一緒に横になろうぜ!」


(訓練かぁ…いつも兄ちゃんは何やっているのか見せてくれないけど、きっと大変なんだろうなぁ。)


 アルサイドは、両親の前ではいつも自分が訓練を頑張っているように振る舞っているが、クラウディオが呼ばれた時には主に遊び相手になり、鬼ごっこをしたり木登りをしたり、川で魚を捕まえるなど村の子供達と遊ぶような事をしていたのでどれが訓練なのか分からなかった。


(兄ちゃんは偉大、らしいからなぁ。なんてったって、奇跡の聖人らしいからな。
 …でも、これだけしか集まってないなら、あとからまた探しに行かないとなぁ。父ちゃんと母ちゃんに怒られちゃうよ。)


 アルサイドが村の中で、素晴らしい存在なのは周りの人達から言われる言葉や態度などでクラウディオもなんとなく理解していた。
 アルサイドと共に村を歩いていると、周りの大人達や、子供からも声を掛けられるからだ。

 だが、クラウディオよりも年上のアルサイドが家の事をもう少しでもしてくれたら、体力がない自分が何往復もしたりしなくて済むのになと少しだけ思うようになっていた。





☆★

 村の大人達や、子供達にもいつもアルサイドの事を聞かれたりするクラウディオは、正直に答えていたが、だんだんと村の人達に〝アルサイド像〟なるものがある事に気づいていった。


「おーい、クラウディオ!アルサイドは元気か?」

「アルサイドの修行はどうだ?」

「元気だよー!修行は…良く分からないなぁ。だって、何やっているのか見た事ないんだもん。」


 アルサイドの訓練などを聞かれると、そのように正直に答えていたクラウディオ。なのに村の人達はそれに対して勝手に憶測をし、賛辞を述べていく。


「へー、やっぱり弟にも見せない修行なんだな!」

「奇跡の聖人なるものは、弟にまでも見せびらかす力ではない、聖なるものなんだろうなぁ!
素晴らしい兄を持って、クラウディオは幸せだな!」


(そうなのかなぁ…。でもみんな兄ちゃんをすごい人のように言うし、やっぱりきっと、そうなんだろうなぁ。)


 クラウディオは半信半疑ながらも、村の人達が言う言葉を聞いて更にアルサイドはすごい特別な人物なんだと思うようになっていった。



☆★

「アルサイドってば、また修行-?」

「クラウディオもアルサイドに付き合ってるんでしょ?どんな修行しているの?」

「えー、かくれんぼとか木登りとか?」

「またまたぁ…はぐらかさないで教えてくれよ!」

「そうよそうよー!…あ、奇跡の聖人の事だから、秘密事項なのかしら。」

「そうじゃなくて、本当に…」

「普段の遊びの中で、修行してるって事か?」

「きっとそうだわ!もしかしたら私達がいつもやっているかくれんぼとか木登りとは、全く違うやり方をしているかもしれないわ!」

「や、そんな事は…」

「きっとそうだな!…クラウディオも大変だな。ついて行くの、キツくないか?」

「そうね、奇跡の聖人であるアルサイドのお相手なんて、私達凡人には大変よね。頑張ってね!」


(…そうかなぁ?特別な事はしていないけど、あれが訓練なのかなぁ。
 いや、でもそんな事兄ちゃん言ってなかったよなぁ…。けど、普段の遊びが訓練なら、やっぱり兄ちゃんはすごいよなぁ。)




 クラウディオはますます兄を尊敬し、けれども同時に自分は兄とは違い凡人なんだとつくづく思い知らされるのだった。
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