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語り継がれる物語

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 ザクセテンという国には遥か昔、魔力なるものを持つ者がありふれていた。

 ある時、天変地異がその国を襲い、ありふれた人々でも太刀打ち出来ないという出来事があった。そんな時周りの者より一際多大なる魔力をもつ者が突然現れ、世界を救ったとされている。その人物は、「奇跡の聖人」と言われて崇め奉られた。



 しかし月日が経つにつれ、その魔力を持つ者もだんだんと数を減らしていった。持って生まれてきたとしても、鍛えなければ気づく事もなく廃れてしまう。その為、自分が魔力があるのかさえ知らず人生を終える者も数多くいた。





 そしてある時。

 ザクセテン国の南にあるフィプスという地方の中ほどにある、一つの小さな貧しい村にて一つの奇跡が起こった。


 その村には、一つ違いの兄弟が住んでいた。兄のアルサイドが四歳の頃、弟のクラウディオと外で遊んでいた時に運悪く雷に当たってしまったのだが、何事もなくピンピンしていたという。

 それを見た村の人々は、彼アルサイドはきっとあの語り継がれる奇跡の聖人だと讃えた。

 両親はそれを真に受け、アルサイドをそれはもう甘やかして育てた。クラウディオが居るというのに、アルサイド中心の生活となってしまった。


 アルサイドが十歳になると、国の王の使いだというものが迎えに来た。奇跡の聖人だというのなら、国の助けになるだろうというわけだ。
 貧しい村に豪華な馬車がやってきたとそれはもう村は蜂の巣をつついたような騒ぎであった。

 アルサイドは、さも当然とでもいうように、誇らしげな顔つきで村から旅立って行ったーーー。






 そして、風の便りで時折聞く噂には、痛がっていた体を治したり、雨が降らない地区に祈りを捧げて雨を降らせたりしたとアルサイドの活躍ばかりが聞こえてきたのだった。
 それを聞いた人々は、彼はやはり奇跡の聖人だと、もてはやしたのだったーーー。
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