【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?

まりぃべる

文字の大きさ
18 / 23

18. 邸からの出勤

しおりを挟む
「じゃあ、行ってくる。」

「はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」



 そう言うとアンセルム様は私の頭をひと撫でして、馬に颯爽とまたがり、この邸から馬で出勤していった。
 小さくなっていく背中を見ていると、やっと夫婦になったんだわと少し実感出来た気がした。



☆★


 昨日あれから足風呂に入った後は、大衆浴場を造っている場所をコーレに案内されながら向かった。

 コーレが向かうと、慕われているんだというのが分かるほど、皆が寄ってきた。その後、私の姿を見ると皆、畏まってしまった。隣にアンセルム様がいるからかもしれない。

 コーレが、私達の事を領民達に紹介すると、アンセルム様が領民達に声を掛けた。

「今まで、公爵領となったのにそのままにしていて申し訳なかった。私の妻が考え出した案にも、快く従ってくれ、嬉しく思っている。これからも、よろしく頼む。」

 と。頭を深々、とまではいかないけれど、謝ってくれたからか、領民達はあたふたとして、

「声を掛けて下さってありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。」

 と、口々に言ってくれていた。

 …そう言えば、言葉遣いが…?と思っていたら、コーレが言うにはどうやら言葉遣いや所作の勉強も合間にさせているみたい。
皆が、自主的に習いたいと言ってくれたそうで、向上心は素晴らしいと思うわ。

 ここはまず、初めは日帰りで遊びに来てもらう感じにするようで、好評であれば隣に宿泊施設も増設するそうだ。
 お風呂も、浴槽を一つだけではなく、大きな浴槽と、樽をくり抜いた浴槽を幾つかを設置し、あとは〝湯の道〟を造って歩く道を造ったり、傾斜を少しだけ付けて滑り込んで湯に入れるようなものも造り、中でゆっくりと楽しめるようにするみたい。

 あとは、お風呂から出た後にゆっくりと寛げる場所と、簡単な料理が出来る場所を造るそう。
 ゆっくりと寛げる場所は、外の景色が見えるように作り、目でも癒してもらえるように。
 簡単な料理が出来る場所は、お腹も満たして身も心も癒してもらえるように。

 完成するまではまだ少し掛かるみたいだけれど、領民達皆、大人から子供まで楽しそうに作業しているから本当に良かったわ。

 ここも、魔力でどうにかなれば良かったけれど、石畳のように造る工程が簡単であれば、風の魔力でどうにかなるそうだけれど、複雑な造りだと魔力ではどうにもならないみたい。だから、時間はきっとかかるでしょうね。

 でも毎日が充実していると口々に私へと言ってくれたから、それだけが救いね!

 疲労回復効果のあるウイキョウの薬草を使ってとコーレに言ってあるから、帰りに足風呂をしてから帰るようにと言ったみたい。その足風呂には、ウイキョウが流れ出ていかないように括りつけて入れるのですって。

 だからきっと皆、元気なのね!





☆★

 夕方、日が傾き掛けてきたのでヨルゲンにまた、馬車を動かしてもらった。

 こんなに遅くなったのは、思いのほかアンセルム様が領民達と触れ合うのを楽しんでくれたから。

 いつの間にか昼ご飯の時間になっていて、グニラとハンナが『どうぞ食べていって下さい』とぎこちないながらも学んだ言葉遣いを話してくれたので私は、アンセルム様を伺うと、『よし、せっかくだからいただこう!』と言われたの。

 せっかくのお休みなのにいいのかしらと思って聞いてみると、

「案外、領民と触れ合うのも勉強になるんだ。いつかは俺もやらないといけないからな。その時は……スティナも隣でこうやって一緒にいてくれないか。」

 と言われた。
 私は、素晴らしい事を言われたと思ったと同時に、どういう事だろう?と思った。

(なんだか、聞こえようによってはプロポーズだわ!…でも、アンセルム様は好きな人がいると言われていたし……)

 そう考えると、なぜだか心がジクジクと痛んだけれど、考えた挙げ句、

(文字通り一緒に行こう、とそういう意味よね?書面では夫婦であるのだから、夫婦の情くらいは持ってくれたということ……?)

 と思う事にした。

(だってこうやって、貴重な休みも一緒に過ごしてくれるのだもの。信頼してくれるまでに至ったという事かしら。)


「ええ、もちろんですわ!ご一緒させて下さいね!」



 食事が終わると、建物を建てる手伝いを魔力でしてくれると言い出したので、皆びっくりしていた。…私もだけれど。

「自分の領地だし、俺も何か手伝いんだ。その木を同じ大きさに切ればいいのか?」

「あんな感じで、木を組めばいいのか?」

 専門家にも聞きながら、風を上手く操って建物の外壁をどんどん組み立てていった。どうやら風を利用して、重さを感じないようにして重い木を操っているのだとか。

 こんな所で、悪獣討伐軍総司令官の力、無駄使いしていいのかしら!?

 でも、それを軽々とこなして領民達に歓声を上げられているアンセルム様はとても嬉しそうな顔をしていて、本当に格好良かったのよ。

 領民達からも専門家からも、『これで工程が何日分も早く進んだ』ととても喜ばれていたわ。



 そして、いつの間にか日が傾くまで居てしまったの。

「すみません。遅くなってしまいましたよね。あの…王宮に帰られるのですか?」

「ん?あぁ…そうだな。今日は、ここに泊まる。何ていったって、俺の邸だからな!…俺が休む部屋、あるよな?」

「フフフ。そうですか。今から帰られると遅くなってしまいますから、どうぞお泊まりになって下さい。」

「…帰る、のは、あの邸だ。」

 ぼそりと呟かれ、馬車の中でゴトゴトと車輪の音もあるから聞こえなかったので、もう一度聞き返したわ。

「え?ごめんなさい。聞こえなかったわ。何て言われました?」

「だから…帰る、のはあの邸にだよ。」

「あ、は、はい。」

 いえ、今からの話ではなくて…アンセルム様いつも王宮にと言われてましたでしょう?


 ……でも、そう言われて心がほっこりと嬉しくなったのは、どうしてなのかしらね。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...