「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

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翌日

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 それから一夜明けて翌朝になりました。
 シエラは部屋から出てきませんが、私は朝食のためにダイニングに向かいます。すると、そこには難しい顔をした父上が立っていました。

 手元には一通の書状が握られています。
 昨日の件について何か進展があったのでしょうか。

「おはようございます。また何かあったのでしょうか?」
「ああ、ランカスター子爵から早速昨日の件についての返事があったんだが……」

 そう言って父上は私に手紙を差し出します。
 私はそれを読み、その内容に驚愕しました。

『昨日の件について我が家でも独自に調査した。シエラがそちらで何と言っているのかは分からないが、実際はシエラが急に屋敷にやってきて、ウィルを誘惑したため婚約者のいるウィルはそれを拒絶した。そしてそれに驚いたシエラがその場を逃げ去ったという訳だ。
 それまでシエラはウィルに好意を振りまいておきながらひとたび拒絶されると急に自分が被害者のようなことを主張し始めて困っているが、当家としてはウィルとエレンの婚約は維持したいと考えている』

 というようなことが書かれており、その後にはウィルが捏造したと思われる当日の詳細な行動が書かれていました。

 当然そこに書かれている内容は昨日シエラが泣きながら白状した内容とは全く異なっています。
 どちらが本当かは言うまでもありませんが、ランカスター家の方がうちよりも爵位が上。明確な証拠があるならまだしも、当事者であるシエラの主張だけでは嘘であることは証明できません。シエラだって世間から見れば姉の婚約者に手を出した不届き者に見えるでしょう。証拠を探そうにも、きっと向こうは今頃証拠隠滅にやっきになっていると思われます。
 そうなってしまっては外から認められるような証拠が見つけるのは難しいでしょう。

「そんな……ウィルは元から私よりシエラにばかり好意を向けていたのに」
「そうだな……わしもシエラが言っていることは嘘ではないと思うが、しかし向こうが証拠を握ってしまっているとなると……」

 そう言って父上は口をつぐみます。
 思わぬ事態にどうしていいか分からず、私たちの間には沈黙が流れました。

「あなた、この後フランクがシエラのお見舞いに来てくれるって」

 そこへ今度は母上が手紙を持ってやってきます。
 それを聞いて私は自分のことでもないのに少しほっとしてしまいました。

「おお、フランクが。ウィルとは違って彼はいい人だな」
「そうですね」
「そうか、それなら準備をしないといけないが……しかしフランクは恐らくランカスター家が公表した話を聞いてやってくるに違いない。彼はシエラの言うことを信じてくれるかどうか」
「大丈夫です、きっとフランクなら私の……ではなくシエラの話を信じてくれると思います」

 危うく本音が出てしまうところでした。

 ただ、フランクがシエラの話を聞いてくれるとしてもシエラがフランクに話したがるでしょうか。
 そんなことを不安に思っていると、やがて来客を告げるベルが鳴ります。

 私も不安のあまりフランクのと言葉をかわしたくなりましたが、今は父上やシエラと話す方が先、と考えて我慢するのでした。
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