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Ⅲ
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リンダがその時のことを思い返していると、不意に部屋の窓がこんこん、と叩かれる。その音に釣られて外を見るとそこにいたのはクラスメイトから学園職員になったアルフだった。彼が近衛騎士だと思い出したリンダはさっと身体が強張るのを感じる。
あの女性はああ言ってくれたが、近衛騎士からすると自分がもらったのは取り締まられるべきものなのだろう。
一度は無視しようと思ったリンダだが、再度のノックに仕方なく窓を開ける。そんな彼女にアルフは冷静に告げる。
「驚かせてしまってすまない。少し確かめさせてもらいたいことがある」
「な、何ですか?」
「この石を握りしめて魔力をこめてみてくれないか?」
そう言ってアルフが宝石を手渡す。さすがにそこまでされるとリンダも自分が疑われていることが確信に変わる。もし魔力をこめれば、きっと自分が怪しい力を借りていることが分かってしまうのだろう。
「すいません、今ちょっと魔力が枯れていて」
リンダの答えに一瞬アルフの表情に影が差したような気がした。
「そうか、ならまた明日頼もう」
そう言ってアルフは引き上げる振りをして、リンダの部屋の床下に潜伏する。リンダを怪しいと睨んだものの、さすがにいきなり拘束することは出来ない。それに彼女の性格からして力を手に下からといっていきなり暴れ出すようなことはしないだろう。そこでアルフは確固たる証拠を掴むまでは張り付いて監視しようと考えた。
一方のリンダは震えていた。自分がやっていることはほぼ確実に良くないことだという自覚はあった。だが、普通の手段では周囲に置いていかれている自分がまき返すことは難しいだろう。だからことさらに良くない手段が魅力的に見え、手を出してしまった。
しかしこのままでは確実に明日にはばれてしまう。逃げることは出来るかもしれないが、世間知らずの自分では数日も経たずに見つかるか野たれ死ぬだろう。とはいえ一晩寝れば普通は魔力は解決するし、同じ言い訳は使えない。
が、事態はそれだけでは終わらなかった。
アルフが去っていくと、入れ替わりに一羽の黒い鳥が空いた窓から入ってくる。鳥は生物ではなく、魔術師が魔法で作る“使い魔”と言われる種類のものだった。もしや私はあの女に監視されていたのか、とリンダの体に更なる震えが走る。
戸惑うリンダに向かって鳥は女の声で言った。
「ばれてはいけないと言ったわね?」
「嘘……」
その言葉を聞いてリンダはさあっと血の気が引いていくのを感じる。
アルフとレミリアに負けた後のシルヴィアがどういう末路を辿ったか。様々な悲惨な噂をリンダは思い出す。
ばれてしまった以上、自分は用済みになるしかないのだろうか。
「ま、まだばれたと決まった訳では……」
「そんな言い訳は通じないわ。ばれた以上、奴らにとられる前に回収させてもらうわね」
「おいやめろ!」
鳥の言葉を聞いてアルフは即座に床下からはい出す。そして鳥を捕まえようと窓から部屋に入ろうとした。
「うわあああああああああああ!」
が、アルフが部屋に入る前に突如リンダは絶叫してその場に崩れ落ちた。アルフが部屋に入ったときにはすでにリンダは倒れ、体にはシルヴィアの時と同じように黒い斑点が浮かんでいる。そこからは魔力があふれ出し、どこかに吸われていくのが見える。
「くそ!」
舌打ちしたアルフだが、リンダがどうにもならないと悟ると素早く剣を抜いて逃げようとする使い魔に投げつける。剣は見事に使い魔を貫き、その場に墜落した。アルフは落ちた使い魔を素早く確保する。
そして連絡用の魔石を起動して騎士団の詰め所に連絡した。
「学園の寮で闇の種子もしくはそれに類する何かを使っていた生徒が見つかった! 僕はレティシアを追うから彼女の保護をお願いしたい!」
そしてアルフは落ちている使い魔を拾う。とはいえ素人のアルフでは使い魔からレティシアの居場所を突き止めるのは難しい。近衛騎士の魔術師を呼ぶのも時間がかかってしまう。
「仕方ないか……」
本当は巻き込みたくはなかったが、今更蚊帳の外にしたら後で文句を言われそうだ。それならきちんとこちらからお願いして頼ろう。幸いここは女子寮なので彼女は近くにいるはずだ。
そう考えたアルフは使い魔を抱えてレミリアの部屋へと急いだ。
あの女性はああ言ってくれたが、近衛騎士からすると自分がもらったのは取り締まられるべきものなのだろう。
一度は無視しようと思ったリンダだが、再度のノックに仕方なく窓を開ける。そんな彼女にアルフは冷静に告げる。
「驚かせてしまってすまない。少し確かめさせてもらいたいことがある」
「な、何ですか?」
「この石を握りしめて魔力をこめてみてくれないか?」
そう言ってアルフが宝石を手渡す。さすがにそこまでされるとリンダも自分が疑われていることが確信に変わる。もし魔力をこめれば、きっと自分が怪しい力を借りていることが分かってしまうのだろう。
「すいません、今ちょっと魔力が枯れていて」
リンダの答えに一瞬アルフの表情に影が差したような気がした。
「そうか、ならまた明日頼もう」
そう言ってアルフは引き上げる振りをして、リンダの部屋の床下に潜伏する。リンダを怪しいと睨んだものの、さすがにいきなり拘束することは出来ない。それに彼女の性格からして力を手に下からといっていきなり暴れ出すようなことはしないだろう。そこでアルフは確固たる証拠を掴むまでは張り付いて監視しようと考えた。
一方のリンダは震えていた。自分がやっていることはほぼ確実に良くないことだという自覚はあった。だが、普通の手段では周囲に置いていかれている自分がまき返すことは難しいだろう。だからことさらに良くない手段が魅力的に見え、手を出してしまった。
しかしこのままでは確実に明日にはばれてしまう。逃げることは出来るかもしれないが、世間知らずの自分では数日も経たずに見つかるか野たれ死ぬだろう。とはいえ一晩寝れば普通は魔力は解決するし、同じ言い訳は使えない。
が、事態はそれだけでは終わらなかった。
アルフが去っていくと、入れ替わりに一羽の黒い鳥が空いた窓から入ってくる。鳥は生物ではなく、魔術師が魔法で作る“使い魔”と言われる種類のものだった。もしや私はあの女に監視されていたのか、とリンダの体に更なる震えが走る。
戸惑うリンダに向かって鳥は女の声で言った。
「ばれてはいけないと言ったわね?」
「嘘……」
その言葉を聞いてリンダはさあっと血の気が引いていくのを感じる。
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ばれてしまった以上、自分は用済みになるしかないのだろうか。
「ま、まだばれたと決まった訳では……」
「そんな言い訳は通じないわ。ばれた以上、奴らにとられる前に回収させてもらうわね」
「おいやめろ!」
鳥の言葉を聞いてアルフは即座に床下からはい出す。そして鳥を捕まえようと窓から部屋に入ろうとした。
「うわあああああああああああ!」
が、アルフが部屋に入る前に突如リンダは絶叫してその場に崩れ落ちた。アルフが部屋に入ったときにはすでにリンダは倒れ、体にはシルヴィアの時と同じように黒い斑点が浮かんでいる。そこからは魔力があふれ出し、どこかに吸われていくのが見える。
「くそ!」
舌打ちしたアルフだが、リンダがどうにもならないと悟ると素早く剣を抜いて逃げようとする使い魔に投げつける。剣は見事に使い魔を貫き、その場に墜落した。アルフは落ちた使い魔を素早く確保する。
そして連絡用の魔石を起動して騎士団の詰め所に連絡した。
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「仕方ないか……」
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そう考えたアルフは使い魔を抱えてレミリアの部屋へと急いだ。
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