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Ⅱ
現実
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「昨日はお世話になりました」
翌朝、朝食を食べ終えると私は名残惜しいながらもアーノルド家の人々に深々と頭を下げます。
「とんでもない、我らこそお客さんとしてもてなすはずが色々させてしまって大変申し訳なかった!」
そう言ってアーノルド男爵が慌てて私の手をとります。
ブラッドも悲しそうな表情で声をかけてくれます。
「済まないな。出来ればすぐに家を出られるように取り計らうから待っていてくれ」
「ありがとうございます。そのお言葉があればもう少しだけ頑張れそうです」
「お元気でね」
男爵夫人もそう言ってひらひらと手を振りました。
そして私は男爵家が用意してくれた馬車に乗って家に帰るのでした。
夕方頃、私が家に帰ってきますが、相変わらず特に誰かが出迎えてくれる訳でもありません。私が自室に向かって歩いていくと、途中でハンナとすれ違いました。
「帰っていたのですね。ただいまの挨拶もないから分かりませんでしたが」
ハンナはわざとらしく嫌味を言います。玄関先の鈴を鳴らして帰って来たのに誰も出迎えなかったら挨拶も出来ないでしょう。
先ほどまでいたアーノルド家が皆いい人ばかりだったため、慣れているはずのハンナの態度にも悲しくなってしまいました。
「とはいえ、二日間も楽しんできたんですから今日はちゃんと家事もやってくださいね」
「え?」
私はさすがに耳を疑います。婚約者に会いに行っただけなのになぜ私が仕事を休んでいたみたいな言われ方をしなければならないのでしょうか。
そもそもいつの間にか家事が私の仕事のようにされているのも納得いきません。
が、そんな私の表情を見てハンナは顔をしかめます。
「その不満そうな顔は何ですか。あなたがいなかったせいで洗濯物と洗い物が溜まっているのですよ」
そもそもどちらも私の仕事ではないですが、ハンナと揉めれば母上がやってきて「我がまま言わないの」などと言ってくるに違いありません。
そう思った私は仕方なくキッチンに向かいます。キッチンを見た私は目を疑いました。わずか一泊してきただけでキッチンには汚れた食器が積み上がり、油が飛び散り、床にはこぼれた調味料や切った野菜のかけらが散らばっています。かつてここまで汚くなっていたことがあったでしょうか、と私は目を疑います。
仕方なく私は袖まくりをして掃除をし始めて思い当たります。
そう言えば昔はもう一人メイドさんがいましたし、ハンナも今ほど付け上がっていなかったのでもう少しきちんと家事をしていたのでしょう。そして最近は次第に私の仕事が増えていき、それでどうにか屋敷の家事は回っていたという訳です。
汚れたキッチンを掃除していると、瞬く間に私の服も汚れていきます。どうせ元々古着なので構わないのですが、これを洗うのもどうせ私だと思うと気が滅入ってしまいます。
「やっと終わった」
掃除が終わると、すでに大分遅い時間になっていました。朝食はアーノルド家で御馳走になってきましたが、そう言えば夕食は食べていませんでした。
しかし冷静に考えると私がキッチンの掃除をしているということは誰も夕食を作っていないということです。ということは他の家族は一体何を食べているのでしょうか。嫌な予感がした私はキッチンを出ます。
すると、そこには困った表情のカレンが立っていました。
「どうしたの?」
「それが、家族の皆様今日は急遽パーティーが入ったとのことで外出してしまいまして、夕食はキャロル様に作ってもらえと」
「そんな」
せめて出かける前にそれを言ってもらえれば良かったのですが、すでに大分遅くなってお腹もすいてからそれを知っても困ります。とはいえ、子守や他の家事で疲れ切っているカレンにさらに食事を作れとも言えません。
「分かりました、今から簡単に作りますので少しお待ちください」
「ありがとうございます。いつもお役に立てなくてすみません」
カレンは申し訳なさそうに頭を下げます。ですが私が謝って欲しいのは彼女ではありません。
「そんなこと言わないでください! カレンさんが大変なのは私も知っていますので!」
が、カレンさんはすみませんすみませんと言いながら去っていくのでした。
こうして私はため息をつきながらありあわせの夕食作りにとりかかったのです。
翌朝、朝食を食べ終えると私は名残惜しいながらもアーノルド家の人々に深々と頭を下げます。
「とんでもない、我らこそお客さんとしてもてなすはずが色々させてしまって大変申し訳なかった!」
そう言ってアーノルド男爵が慌てて私の手をとります。
ブラッドも悲しそうな表情で声をかけてくれます。
「済まないな。出来ればすぐに家を出られるように取り計らうから待っていてくれ」
「ありがとうございます。そのお言葉があればもう少しだけ頑張れそうです」
「お元気でね」
男爵夫人もそう言ってひらひらと手を振りました。
そして私は男爵家が用意してくれた馬車に乗って家に帰るのでした。
夕方頃、私が家に帰ってきますが、相変わらず特に誰かが出迎えてくれる訳でもありません。私が自室に向かって歩いていくと、途中でハンナとすれ違いました。
「帰っていたのですね。ただいまの挨拶もないから分かりませんでしたが」
ハンナはわざとらしく嫌味を言います。玄関先の鈴を鳴らして帰って来たのに誰も出迎えなかったら挨拶も出来ないでしょう。
先ほどまでいたアーノルド家が皆いい人ばかりだったため、慣れているはずのハンナの態度にも悲しくなってしまいました。
「とはいえ、二日間も楽しんできたんですから今日はちゃんと家事もやってくださいね」
「え?」
私はさすがに耳を疑います。婚約者に会いに行っただけなのになぜ私が仕事を休んでいたみたいな言われ方をしなければならないのでしょうか。
そもそもいつの間にか家事が私の仕事のようにされているのも納得いきません。
が、そんな私の表情を見てハンナは顔をしかめます。
「その不満そうな顔は何ですか。あなたがいなかったせいで洗濯物と洗い物が溜まっているのですよ」
そもそもどちらも私の仕事ではないですが、ハンナと揉めれば母上がやってきて「我がまま言わないの」などと言ってくるに違いありません。
そう思った私は仕方なくキッチンに向かいます。キッチンを見た私は目を疑いました。わずか一泊してきただけでキッチンには汚れた食器が積み上がり、油が飛び散り、床にはこぼれた調味料や切った野菜のかけらが散らばっています。かつてここまで汚くなっていたことがあったでしょうか、と私は目を疑います。
仕方なく私は袖まくりをして掃除をし始めて思い当たります。
そう言えば昔はもう一人メイドさんがいましたし、ハンナも今ほど付け上がっていなかったのでもう少しきちんと家事をしていたのでしょう。そして最近は次第に私の仕事が増えていき、それでどうにか屋敷の家事は回っていたという訳です。
汚れたキッチンを掃除していると、瞬く間に私の服も汚れていきます。どうせ元々古着なので構わないのですが、これを洗うのもどうせ私だと思うと気が滅入ってしまいます。
「やっと終わった」
掃除が終わると、すでに大分遅い時間になっていました。朝食はアーノルド家で御馳走になってきましたが、そう言えば夕食は食べていませんでした。
しかし冷静に考えると私がキッチンの掃除をしているということは誰も夕食を作っていないということです。ということは他の家族は一体何を食べているのでしょうか。嫌な予感がした私はキッチンを出ます。
すると、そこには困った表情のカレンが立っていました。
「どうしたの?」
「それが、家族の皆様今日は急遽パーティーが入ったとのことで外出してしまいまして、夕食はキャロル様に作ってもらえと」
「そんな」
せめて出かける前にそれを言ってもらえれば良かったのですが、すでに大分遅くなってお腹もすいてからそれを知っても困ります。とはいえ、子守や他の家事で疲れ切っているカレンにさらに食事を作れとも言えません。
「分かりました、今から簡単に作りますので少しお待ちください」
「ありがとうございます。いつもお役に立てなくてすみません」
カレンは申し訳なさそうに頭を下げます。ですが私が謝って欲しいのは彼女ではありません。
「そんなこと言わないでください! カレンさんが大変なのは私も知っていますので!」
が、カレンさんはすみませんすみませんと言いながら去っていくのでした。
こうして私はため息をつきながらありあわせの夕食作りにとりかかったのです。
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