継母や義妹に家事を押し付けられていた灰被り令嬢は、嫁ぎ先では感謝されました

今川幸乃

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縁談

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「今日は皆に相談したいことがある」

 ある日の夕食後、父上が唐突にそんなことを言い出しました。

「実は我が家にアーノルド男爵家から縁談が来た。あちらの嫡男であるブラッド殿とうちの娘を婚約させることになったのだ」

 アーノルド男爵家というのは、うちと同じくらいの貧乏貴族です。とはいえ、うちはどちらかというとエイダの豪遊で貧乏になっているところはありますが、向こうはおそらく正真正銘の貧乏貴族です。
 なぜうちのような家を相手に選んだのかは分かりませんが、もしかしたら他の家に申し込んでも拒否されてしまったのかもしれません。

「まあ、アーノルド男爵家ってあの見すぼらしい家? 以前屋敷の前を通ったことがあるけど、まるで庶民の家のようだったわ」

 エイダは聞えよがしに言います。ちなみに我が家もエイダとジェーンの部屋以外はアーノルド男爵家の屋敷と大して変わりませんが。
 何にせよ、他家の悪口を堂々と口にするのは褒められたことではありません。

「うちからはキャロルかジェーンを嫁がせようと思うんだが、どう思う?」
「お父様、私はそんな貧乏貴族には嫁ぎたくありませんわ。私にはもっときらきらした家との縁談を持ってきてくださらない?」

 ジェーンが不満そうに言います。
 するとすぐにエイダはこちらを向きました。

「普通こういう時は長女から先に嫁ぐものよね?」

 それはその通りです。それに結婚すれば私が向こうに嫁入りすることになるため、この家を出ることが出来ます。貧乏なのは向こうも同じですが、ここまでの嫌がらせを受けることはなくなるでしょう。
 私としては贅沢は言わないのでさっさと他家に嫁ぎたいものです。
 私がそんなことを考えていると、ジェーンはこちらを向いて嘲笑します。

「それにお姉様のようなぱっとしない方、アーノルド男爵家ぐらいしか行くところがないんじゃないかしら?」
「そうね。良かったじゃない、これで行き遅れることがなくなって」
「貧乏貴族同士お似合いの結婚になるんじゃない?」
「結婚式では麻の服でも送ろうかしら」

 二人はわざと聞こえるように言って嘲笑します。
 父上はそれには何も言わずに私の方を向きました。

「そう言う訳で、お前が相手と婚約するということでいいな?」
「はい、それは構いませんがブラッド殿はどういうお方なのでしょうか?」

 本来であれば同格の貴族の情報ぐらいはある程度知っているべきなのですが、他の家族が他家に赴く際は決まって私が留守番を命じられるので恥ずかしながら他家のことは全然知らないのです。

「さあ、わしはよく知らぬ。だが特にいい噂も悪い噂も聞かないし、せいぜい普通の人じゃないか?」

 父上の投げやりな言葉に私は絶句しました。いくら政略結婚とはいえ、いや政略結婚だからこそ相手のことを何も知らないというのは信じられません。

「ああそうそう、一週間後に初顔合わせが決まっているから詳しいことは本人と会って自分で判断してくれ」
「分かりました」

 こうして私の婚約相手は信じられない適当さで決まったのでした。
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