家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「78話」

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「やあ!いらっしゃい!」

5顔へとクロ一行が到着すると、それをアマツが満面の笑み浮かべ出迎える。
例によってクロや島津達の動きを見ていたのだろう。

「そっちの二人も突破したんだね、おめでとう!」

「あ、あり、ありがとうございます」

「お、おー」

アマツを初めて見る二人だが、かなり戸惑っているようだ。

ダンジョンの管理者と聞いていたが、出て来たのは妙にノリの軽い人物だ。
イメージとギャップがデカすぎたのだろう。

昨日一度見ている二人は固まってこそいないが、話す切っ掛けを中々掴めずにいるようだ。

そんな4人を見て、クロが動き出す。

クロはアマツの側へと向かい、そしてうにゃうにゃと何事かをアマツに伝えようとする。


「え、なになに……それは良い考えだね!」

島津だけではなく、アマツもクロの言っていることは理解できる。
クロはアマツに何かを提案したのだろう。
アマツはニコニコと笑みを浮かべ、パチンと指を鳴らしてみせた。

するとアマツの前にやたらと立派なテーブルに椅子。それに大量のお茶や茶菓子等が現れる。

今日は英国式で行くらしく、用意したのは紅茶とケーキやクッキーなどだ。


「お茶を用意したよ。 島津くん達が戻るにはもう少し掛かるだろうし、休んでおくと良いよ?」

手近な椅子に腰掛けてそう言うアマツ。
クロの提案は簡単に言えばお茶会でも開いて交流したら?である。

「それじゃ折角なんで頂きます」

「私も頂こう」

「い、頂きます」

「クッキー美味しそうねー」

そしれそれは話す切っ掛けが欲しかった彼らにとって、ありがたい提案であった。




皆が席についてお茶を楽しみ、どこかぎこちないながらも雑談に興じる中、クロはと言うとアマツに猫用のクッキーとミルクをねだり、ぺろりと平らげると……そのままテーブルの上で丸くなってしまう。

やがて聞こえてくるピスピスと言う鼻音。

そのマイペースっぷりにその場に居る皆の顔に自然と笑顔が浮かぶ。

「寝ちゃった……やっぱ猫っすねえ」

「肉球ピンクだー」

「ははは!」

何人かが寝ているクロをつつくが、まったく起きる気配はない。
場は作ったのであとは任せたと言うことだろうか。



「そう言えば、ダンジョンって何時からあったんですか?」

場も和んで来たところで、今まで当たり障りない話しばかりをしていた隊員達であったが、ここでダンジョンに関する話しを振り始める。


「1年半前ってとこだねえ。 作ったのは良いけれど、なっかなか誰も来てくれなくてねー……あ、そうそう。実は一番最初にダンジョンに潜り始めたのはクロだったりするんだよ」

「なんと……」

「そういや島津さんもそんな事言ってたなー……ん、じゃあ島津さんは?」

「島津くんは2番目だね。 クロの方が半年も先輩なんだよ」

「っへー」

元々島津が半年ほど前からダンジョンに潜っていた事を知っていた隊員達であったが、1年半前も前からダンジョンが存在していた事に驚いたようだ。

それにクロが島津より半年も前から潜っていたと言う事実。
隊員達の間でクロの株が更に上がりそうである。

この辺りの情報は島津も知らなかったりするが……飼い主の威厳的に知らない方が良いのかも知れない。



その話を切っ掛けに、隊員から次々にダンジョンに関する話題が飛ぶ。

何階まであるのか、どんなポーションがあるのか、島津達のようにスキルを使えるようになるのか、などなど。

勿論全てに答えてくれる訳では無いが、それでもずっとダンジョンについて考えたいた隊員達から質問が途切れる事は無かった。


話題はダンジョンの種類から日本にいくつあるのか?と言う話になり、そして未だに人が入っていないダンジョンへと話題は移っていった。

「酷いんだよっ。ダンジョン造ったは良いけどさ……一箇所は野生動物の住処になったし、もう一箇所は人が発見したのだけど悪戯だと思われて埋められてしまうしさ……物置代わり何かもあったよ」

「うわあ」

例の3箇所についてアマツはまだ引きずっていたらしい。

暗い表情で語られるその内容に、思わず隊員も苦笑いだ。



「小ダンジョンはともかく、極小はもう造らない事にしたよっ」

溜め息をつき、そう話すアマツ。

隊員の一人があれ?っと言った様子で首を傾げる。


「あ、じゃあもしかしてここって、世界で唯一の極小ダンジョンなんすね」

「その通りっ」

隊員の言葉にウンウン頷くアマツ。

ちなみに今喋った隊員は首を傾げた隊員とは別だったりする。




今度こそ首を傾げていた隊員がアマツへと話し掛ける。

「んー? あれ、極小はってことはー……もしかして他にもダンジョン出来るってことー?」

アマツが言ったのは「極小ダンジョンは」もう作らないだ。
と言うことはそれ以外は造るつもりなのか?と疑問に思うのも当然だろう。


その問いのアマツはにっこにこ笑みを浮かべて答える。

「その通りっ。今は3カ国だけだけど、いずれは世界中に造るつもりだよ」

「世界中って……」

世界中に造るつもりと聞いて、隊員達は絶句する。
アメリカ、イギリス、そして日本に数カ所出来ただけでかなりの騒ぎになっている。
そしてそれは未だに継続中だ。

なのにそこにさらに全世界にダンジョンが出来たと成ると……一体どれだけの混乱が起こるのか、想像を絶するような混乱が起きることは間違いないだろう。

ダンジョンは有益だが、毒にもなり得る。
勿論アマツもその事は認識している。

「まあ、私もそう簡単に行くとは思ってないよ。だから君達の上の人々には頑張ってダンジョンに潜って貰わないとね」

それ故にアマツは組織の上の人々にダンジョンに潜って貰い、最終的に自分とダンジョンについてすり合わせをしたいと考えているのだ。

アマツの目的はあくまで最終的に皆にダンジョン攻略を楽しんで貰う事であって、この世界に混乱を招くことではない。

「一応潜る方向話は進んでるみたいっす。 でも、人選かなり揉めてるらしい……っす」

人選に揉めていると言うが……決して全員が行きたく無くて揉めている訳では無かったりする。

ダンジョンに管理者が居ること、管理者とは話し合うことが出来そうと言うこと、話すためにはダンジョンに潜り条件を満たさないといけない。

それらが判明したときの上の人間の反応は両極端に分かれた。
一つはそんな危険なところに絶対行きたくない。

もう一つは絶対に俺が行く。である。


実は希望者は沢山居たのである。

ただ、ダンジョンに潜るとなると日常業務に間違いなく支障が出る。
そのため全員参加させる訳にもいかず、かと言って中々諦めさせる事も出来ず、未だに人選は難航しているのであった。


「そうだろうね。君達がこうして実際にコンタクトを取れたと知れば、人選も早まるんじゃ……おっと、島津くん達が戻ったみたいだね。詳しくは皆揃ったら話そうか」

そう言ったアマツの視線の先には、血だらけになった島津率いる隊員達の姿があった。

集合時間にはまだ大分早いが、島津はかなり厳しくやったらしい。
隊員全員がアマツの姿を見て固まっていた。
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