異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。

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年の功。

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「んっ・・・!」

「成人してしばらく経つから・・・もう待たないよ?僕もアイビーが欲しいんだから・・。」


私の頬を指ですすっと触って、ライムは荷物を私に手渡した。

それを受け取ると同時にライムは踵を返して走り出した。


「送りたいけど急ぎの用事あるからまたね!人の多いところを通って帰ってよーっ!」

「・・・うん。」


笑顔で手を振りながら駆けていくライムとは反対に、私は作っていた笑顔を捨てた。

ライムの姿が確実に見えなくなってから・・そっと手で唇を擦った。


(セダムの時と同じ・・・。嫌じゃないけど・・・)


嬉しいわけでもない。

慣れないといけないのにまだ慣れれそうにない。


(なかなか難しいな・・・。)


そんなことを考えながらごしごしと擦ってると、背後からぬっと手が現れた。


「・・・え?」


その手は口を擦っていた私の手を掴んだ。

誰かと思って振り返ると、ニゲラが立っている。

怒ってるような・・悲しんでるような顔をしながら。


「アイビー、ちょっと来い。」


ニゲラは私の荷物を取り、手を引きながら歩き始めた。


(会いたくなかったけど・・・不意じゃ仕方ない。)


引かれるままに歩いて行く。

ニゲラは人気のない路地から出て、町の中を進んで行った。

手を引かれてるからニゲラの少し後ろを私は歩いてるわけだけど・・・ニゲラのごつごつした手が目に入って思わず握り返してしまった。


「?・・・どうした?」

「!!・・・なっ・・なんでもない・・・。」


ニゲラは足を止めることなく歩き続けた。

歩くのは別によかったけど、歩いてる方向に覚えがある。

この先は・・・ニゲラの家だ。


(『来い』って言ってたし・・・。家で話でもあるのかな。)


私の予感は当たりそうだった。

ニゲラは家の前で足を止め、戸の鍵を開け始めた。


「入れ。」

「・・・。」


『入れ』と言われてこのまま入るかどうかを迷った。

1分でもニゲラと一緒にはいたくない。

できるなら外で話した方が早く終わりそうだと思った。


「・・ここじゃだめ?」


そう聞くとニゲラの表情が変わった。

さっき私を見た時は怒ってるというより悲しそうな顔のほうが強かったけど、今は明らかに怒った顔をしていた。

この顔は・・・初めて見る。


「・・ここで怒られたいなら別に構わない。」

「!」

「どうする?」

「・・・。」


何に対して怒られるのかはわかない。

でも人の往来のあるところで怒られるとか・・・恥でしかないことだ。


「・・・入る。」

「ん。」

「お邪魔します・・・。」


私は久しぶりにニゲラの家に足を踏み入れた。

相変わらず紙とインクの匂いが漂っている。


(あー・・・久しぶりの匂いだ・・・。)


ニゲラに気づかれないように深呼吸をしながら部屋に入って行く。


「奥の部屋行ってろ。」

「・・わかった。」


『奥の部屋』は本のある部屋だ。

その部屋に向かって足を進めようとしたとき、ニゲラは違う部屋に入って行った。

何があるのかはわからないけど、私は言われたままに奥の部屋に足を踏み入れる。


「はぁー・・・何の話で何を怒られるんだろう・・・。」


いくつになっても怒られることは嫌なものだ。

ニゲラの表情から考えてすぐに終わらなさそうな感じだった。


(話・・・そらせれるかな。)


私は本を1冊手に取った。

この本の話をニゲラにふれば、もしかしたら話を逸らすことができるかもしれないと淡い期待を込めながらページをめくる。


(あー・・・だめだ。昔話の本だった・・・。)


話題をふることを諦めて棚に戻した時、ニゲラが戻ってきた。

手に1冊の本を持ってる。


(なんだろ。)


ニゲラは本を片手で持ちながら私の前に立った。

背が高いニゲラに上から見下ろされると・・・威圧感がすごい。


「アイビー、聞きたいことがある。」

「・・・なに?」

「お前、山から落ちたことと前世の記憶、忘れてないだろ。」

「!!」


あまりにも突然すぎる質問に、私は首をかしげながら聞いた。


「・・・なんの話?」

「あの日、ジニアに山に連れて行かれて落ちたこと、覚えてるんだろ?それで忘れてるフリをしてる。・・・違うか?」

「・・・。」


その話は違わない。

でもここでそれを認めるわけにはいかない。


「・・・何を言ってるの?私は町で転んだんだよ?」


精一杯の笑顔を貼り付けて答えた。


「嘘をつくな。・・・お前、何を企んでる?記憶を失くしたフリまでして・・・どうする気だ?」

「・・・。」


『この世界の郷に従うため』。

そう言えたら楽だけどそうはいかない。

私一人の考えや行動が郷に従えてなかったからジニアはあんな行動にでた。

みんなと結婚して丸く収めれればそれでいいと思っていた。


「何を言ってるのか分からないよ?ニゲラ。」


また首を傾けて聞くと、ニゲラはため息をつきながら持っていた本を差し出してきた。

受け取って表紙を見ると・・・そこに『心理学』と書かれてる。


「97章見てみろ。」

「?・・・うん。」


いわれるがままにページを開き、97章を探し出した。

そこに書かれていたのは・・・


「・・・『人が嘘をつくときの行動』。」


ページには嘘をつくときの行動パターンがびっしりと書かれていた。

挙動不審や、汗、言葉のつまりなど明らかなものから『鼻をさわる』や『靴を鳴らす』など特殊なものまで。


「・・・これがなに?」


平静を装うようにして聞くと、ニゲラは一つの文章を指差した。

そこには『知ってるけどわからないふりをするときの首のかしげかた』と書いてある。


「!!」

「お前、右利きだろ。自然と傾く方は左だ。わざとする方は・・・右。」

「・・・・。」

「お前の首は今もさっきも・・・右に傾いてる。」


迂闊だったと思った。

特に気にもしてなかったことでニゲラにばれたからだ。

まさか首のかしげかたで『嘘』がバレるとは思ってもみなかった。


「なんで嘘をついてるんだ?なんで記憶を失くしたことにした?」

「・・・。」

「あの日、山で何があった?前世の記憶を失くさなければいけないことがあったのか?」


私は答えることができなかった。

嘘をついてることをここで白状するか・・・それとも嘘をつき続けるか迷っていた。

白状すれば、自分で決心したことが揺らぐ。

嘘をつき続ければ・・・ニゲラは納得しない。


(ニゲラ以外の人と結婚したくないなんて・・・言えないや。)


そんなこと、きっとジニアが納得しない。

女の人に選択肢があると言われても、この世界は一妻多夫制だ。

たくさんの夫を持つことが普通の世界で一人の人しか選ばなかったら・・可能性があるはずの他の男の人が『おかしい』と言ってくるだろう。


(はぁ・・・いっそのこと全部の記憶を失くしたかったよ。)


ニゲラに答える言葉を探しながら、私は俯いた。

するとニゲラは私の頭を優しく撫でながら言った。


「・・・俺に嘘はついても構わない。でも・・」



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