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変わるアイビー・・・?

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「お前は覚えてないかもしれないけど・・・忘れていいから聞いてくれ。」

「・・・。」

「あの日、泣きわめくアイビーを・・・見てるだけしかできなかった。シャガさんから離れないお前を見てもどかしかった。俺が守りたかった。」


ぎゅっと抱きしめてくるセダムの腕は優しくて・・・壊れ物でも抱きしめるような力の込め方だった。

逞しい腕が私の前で見える。


「俺ならアイビーにケガなんてさせない。だから・・・俺のことも選んでくれよ・・・。」


そう言ってセダムの手は私の顎を捕まえた。

そのまま真上を向かされて・・・セダムが唇を重ねてきた。


「んっ・・・!」

「やわらか・・・。」


身長差があるからできることかもしれないけど、セダムはぺろっと唇を舐めてから私を腕から解放した。


「もうっ・・・!」

「ははっ、好きだよアイビー。」


セダムは私の手を取り、歩き始めた。

湖の回りをゆっくりと歩いていく。


(セダムは・・耳飾りの柄聞かないのかな・・。)


聞かれたら見せるつもりでいたのにセダムは聞かないまま歩いた。

聞かないなら別にいいかと思って手を引かれながらついて行く。


まさか・・・セダムとキスをしたところをジニアが見てるとも思わずに・・・。




ーーーーー




セダムと口づけをしてるアイビーを見ていたジニア。

二人が湖のほとりを歩いてるところを見かけ、見つからないように遠巻きに見ていた。

まさかセダムがアイビーに口づけするなんて思わずに・・・見ていた。


(セダムまで・・・!?くそっ・・・!)


誰よりも先にアイビーに触れたかったのにニゲラさんに先を越され、さらにセダムにさえ負けてる。

自分だけがまだアイビーに触れれてなくて・・・焦りと苛立ちが募っていく。


(俺だけが・・・アイビーに触れれたらいいのに・・・。)


アイビーが望めば何人とでも結婚できる。

前世の記憶があるアイビーは『一人との結婚』を望んでいたかもしれない。

その『一人』になりたいと・・・願っていた。


(でも記憶は失ってる。なら・・・ニゲラさんとセダムの二人と先に結婚するかもしれない。)


そうなれば自分は3番目。

間にライムが入れば・・・さらに後ろになってしまう。


(俺だけ・・・アイビーが俺だけを選んでくれる方法・・・)


セダムに先を越された事実は消えない。

なら他の手を・・・考えるまでだ。


(待っててアイビー。大事にするから・・・。)



ーーーーー



ジニアに見られてたことに気がついてないアイビーは、セダムに送られて家に戻ってきていた。

シャガはどこかに出かけたのか姿が無い。


「買い物でも行ったのかな?・・・ちょうどよかったけど。」


セダムと出かけたのはよかったけど、キスをされるとは思ってなかった。

嫌ではないけど・・・ニゲラの顔が頭をよぎって仕方がない。

だから・・・手の甲で唇を擦った。


「ごめん・・・セダム・・・。」


ごしごしと納得できるまで擦り、私は晩御飯の支度にとりかかった。

セダムと出かける前に引いた大根を炊いていく。


「あと何作ろうかなー・・・。魚焼いて・・・白和えとか欲しいけどこっちでは作ったことないからダメだな。」


作ったことのあるものを思い返しながら支度を進めていると、玄関の戸が開いた。

シャガが帰ってきたようだ。


「お、アイビー。帰ってたのか?」

「おかえりっ。どこ行ってたの?」

「ちょっとな。・・・もう飯?」

「まだかかるよー。」


炊いてる大根に火が通ったかどうか確かめるために鍋にある大根を確認してると、シャガが隣に立ち始めた。

じーっと私を見てる気がして鍋から視線を移す。


「な・・なに?」

「今日・・・セダムと何してた?」

「セダムと?湖の回り歩いて帰ってきたよ?」

「ふーん?」


何か思うことがあるのか、シャガは私から視線を外して鍋を見た。

くつくつと煮立ってる大根を見てる。


「山から落ちた時ってまだ耳聞こえてたのか?」

「・・・。」


シャガは時々あの日のことを私に聞いてくる。

これが初めてではないけど・・・病院を退院してから何回か聞かれてる。


「山って・・・うん?」


何を言ってるのかわからないようにして首を傾けた。

するとシャガは私の頭に手を置いて、一撫でした。


「・・・いや、いい。」

「?・・・うん。」


『いい』と言いながらもきっと数日経つとまた聞いてくる。

私のことを疑ってるなら・・・諦めてもらえる日まで頑張るだけだ。


(シャガも勘がいいから・・・。長引けばボロがでちゃいそう・・・。)


ボロがでないように気を引き締め直すことを心に決めた。




ーーーーー





その日から数日後、切らした食材を買うために私は町に買い物に来ていた。

シャガは私が町に買い物に行くことを渋い顔していたけど、シャガも今日は仕事がある。

代わりに買い物に行けないから渋々了承してくれたのだ。


(シャガが心配することなんてもう無いのに・・・。)


私が行方不明になったことがシャガにとって恐怖だったようで一人になることを良しとしてくれない。

心配してくれるのは嬉しいことだけど・・・もう行方不明になることはない。

私がみんなと結婚すれば・・・いいことだからだ。


(あれからジニアも接触してこないし・・・やっぱ気まずいのかな。)


そんなことを考えながら必要な食材を買ってると私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「・・・アイビーっ!」


声のする方を見ると、そこにライムが立っていた。


「あ、ライムー。ちょっと待っててね、お会計するから。」


買い物を先に済ませ、ライムのもとにいく。

ライムは私から買い物の袋を取り上げ、歩き始めた。

私の顔を覗き込むようにして言う。


「ごめんね?なかなか会いに行けなくて・・・。」


申し訳なさそうに言うライムに、手をぶんぶんと振って否定した。


「ううん、仕事忙しかったんじゃない?」

「ちょっとだけね。」


ライムは歩きながら手を前に差し出してある方向を指差した。


「ちょっといい?」

「・・・いいよ?」


ライムが指した方向は路地だ。

少し狭くなっていて人通りが少ない。

何か話でもあるのかと思ってライムの少し後ろをついて行った。

ライムは路地を奥まで進み、足を止めた。

辺りを見回すようにしてから私と向かい合った。


「あのね、アイビー。」

「?・・・うん。」

「その・・・あまり一人で歩かないほうがいいと・・・思うよ?」

「・・・え?」


ライムの言葉に、私は意味がわからなかった。

この世界は犯罪は殆どない。

刺されただの、誰かが殺されただのという物騒なことは聞いたことが無い。

だから『一人で出歩かないほうがいい』なんて忠告はこの世界では存在自体が珍しいことだった。


(私が山から落ちたのは自分のせいでもあるし・・・。)


ジニアに突き落とされたわけでもなかった。

ただ怖くて後ずさりしたら道がなかったから落ちたのだ。


「・・・ライムが言うなら・・・一人で歩かないようにするね。」


『人の忠告は聞いとくべき』。

必要かどうかはあとで判断すればいいと思って今はライムの言うことを胸にしまうことにした。


「!!・・・素直に聞いてくれるなんて・・・アイビーってほんとかわいい。」

「え?」

「覚えてる?僕もアイビーに求婚してる一人だよ?」

「わ・・わかってるけど・・・?」


ライムはそっと私の頭を撫でて、髪の毛を少しすくった。

その髪の毛に軽くキスをして・・・私の口に唇を重ねてきた。








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