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変わるアイビー3。

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アイビーの目が覚めてから4日が経った。

起きる練習から始まって体力を徐々につけさせ、同時に粥も食べ始めた。

震える手で匙を持って口に運ぶアイビーは、かすれ声で少し話せるようにもなってる。

若いからか回復が早い。


「アイビー、ちょっと話したいことがあるんだけど・・・いいか?」


そう聞くと匙を器に入れ、アイビーは俺を見た。


「な・・に・・・」

「お前が前世の記憶持ちって話・・・ジニアとセダムとライムに話した。」


ニゲラだけが知ってるのは不公平かと思って話したことだ。

当の本人であるアイビーが『誰が知ってるのか』を知ってないといけない。


「?・・・なんの・・こと・・?」

「なんのことって・・・お前が前世の記憶を持ったままこの世界に来たことだよ。」


いつも話してた内容なのに・・・アイビーは首を左に傾けた。


「わかん・・ない・・・。」

「・・・え!?前世の記憶だぞ・・・!?」


ことあるごとにアイビーは色々と前の世界のことを話してくれていた。

アイビーに前世の記憶があると分かってから13年ほどの間ずっとだ。

忘れるわけはないと思うのに・・・アイビーはきょとんとした顔を見せた。


「ぜん・・せ・・?」

「!?・・・お前・・どこまで覚えてる・・?山から落ちたことは覚えてるのか・・?」


胸が嫌な音を立て始めるのがわかった。

もしかしたら記憶がなくなってしまったのではないかと・・・嫌な予感がよぎる。


「やま・・・。わかんな・・い・・・・」

「!!」


アイビーの表情と言葉から・・・記憶がなくなってることを確信した。

前世の記憶と・・・あの日の記憶がどうもなさそうだ。


(無理にでも思い出させたほうがいいのか・・・?)


目が覚めたばかりで今は身体を回復させることに重点を置きたいところだ。

前世と山から落ちた記憶がないくらいなら・・・あとででいいと思った。


「とう・・さん・・・?」

「・・・いや、いい。粥食って・・・早く家に帰ろうな。」

「んっ。」


手を震わせながら匙を口に入れていくアイビーを見ながら、頭の中はフル稼働だ。

アイビーの記憶がなくなってることをニゲラたちに言うかどうかを考える。


(・・言ったほうが・・・いいよな。)


アイビーの記憶のことを誰にも言わなかったら・・・どこかで誰かが記憶のことを聞くかもしれない。

俺のいるまえで誰かと会話するなら止めることはできるけど、それは無理な話だ。

ニゲラたちに伝えといた方が・・・いい。


(まぁ・・あとででいいか。)


とりあえずアイビーが回復することが優先だ。

一生懸命粥を食べるアイビーの補助をしながら家に帰れる日を待った。




ーーーーー




それから2週間が経ち、アイビーは歩けるまでに回復した。

体力こそは完全に回復してないものの、普段の生活には差し障りない状態にまでなったから病院を出ることになった。

世話になった医者たちに礼を言って今日、約2カ月ぶりに家に帰る。


「おうちっ、おうちっ。」

「機嫌がいいな。」


足取りは遅いものの、アイビーは機嫌よく歩いていた。

久しぶりの外に加えて家に帰れることが嬉しくて仕方ないみたいだった。


「あ、アイビー、ちょっと食材買って帰らないとダメなんだけど・・・歩けそうか?」


食材がほとんど家に残ってないことを思い出した。

アイビーのご飯の分も必要だし、好物を作ってやりたいとも思ったから買い物に寄りたかった。


「うんっ。だいじょーぶっ。」

「じゃあ果物と・・・肉は?食べれそうか?」

「んー・・・魚がいいなー?」

「よし。なら魚屋も寄ろう。」


足を町に向け、俺たちは歩き始めた。




ーーーーー




シャガとアイビーは病院を出たあと、町に入った。

代わり映えの無い店たちが建ち並んでるけれども、アイビーにとっては目新しいものに映った。

2カ月ぶりに足を運んだからだ。


「あ、とうさんっ。お皿屋さん見てきていい?」


久しぶりの町は新鮮で、とりあえずどこかのお店を覗きたかった。


「いいけど・・・じゃあ魚見てくるからそこの店で待ってろよ?」

「うんっ。あとでねー。」


シャガと別れて食器屋さんに足を運ぶ。

食事を作っていたのがほぼ私だったからか、食器が気になるようになっていってた。

なんせシャガの家には一種類のお皿しかなかったから・・・。


(おんなじお皿ばっかりたくさんあっても楽しくないし。)


そう思って時々買っていた。


(記憶もなくしたことだし、新しい生活を始めると思って・・・なんか欲しいなー。)


そう思ってお店に足を踏み入れた。


「わ・・・可愛い食器があるー。」


目に入ったのは葉っぱの形をした食器だった。

前の世界だったらお団子とか乗せるのにちょうどいいくらいの大きさだ。


「これ・・・何か乗せたいなー・・。」


そう思ってお皿に手を伸ばした時、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「アイビー・・・!?」


声のする方に目線を向けると、そこにいたのはジニアだった。

驚いた顔をしながら私をじっと見てる。


「ジニアっ。」


私は食器を取らずに店の外に出た。

ジニアの側までいくと、ジニアは目線を上に下に右に左に動かし始めた。

きっと山でのことが気まずいのだろう。


(会いたくなかったけど・・・忘れるんだから・・・。)


そう決めたから・・・嫌でもちゃんとする。


「久しぶりだねっ、元気にしてた?」


笑顔が引きつってないか心配になりながらも私はジニアに話しかけた。

視線が泳いでいたジニアは私をじっと見て・・・ゆっくり話し始めた。


「あ・・あぁ。アイビーも・・・。いつ・・退院したの?」

「さっきだよ?とうさんが今、魚を買いに行ってるからお店覗いてたのー。」

「そっか・・・。」


ジニアは私から視線を外し、一瞬地面を見つめた。

でもすぐにまた私を見て口を開いた。


「あ・・あのさ、アイビー。話が・・・・」


ジニアが何か言いかけた時、また私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

今度はシャガだ。


「アイビー・・・!!」

「あ、とうさーんっ。」














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