29 / 61
ニゲラとのデート。
しおりを挟む
ーーーーー
「楽しかったか?」
セダムの仕事場から帰ってきたあと、シャガが聞いてきた。
「うんっ。みんなすごいねー。」
「山で遭難する奴は多かったからな。山に入ったことがあるやつらがよく助けに行ってたけど・・・それ専門の仕事もあっていいんじゃないかって話になって作られた。」
「そうなんだ。・・・あ、あそこの練習するとこ・・とうさんが作ったって言ってたよ?」
「あぁ。一番最初だけな。あとは自由に増えたり変えたりされてる。」
「へぇー・・・。」
持って帰ってきたお弁当箱を洗いながら話をしてると、シャガがぬっと覗き込んできた。
「な・・なに?」
「お前さ、前の世界でもそうやって家事してたのか?最近家事は全部任せてるけど・・・。」
「そうだよ?片付けるの好きだし、ご飯作るのも好きだし。でもこっちじゃしないんだよね?」
「しない。まー・・外では気をつけろよ?」
「うん。」
私は洗い物をしながら『次』のことを考えていた。
ニゲラとのデートのことだ。
(ニゲラが終わったら約束は終わる。これが最後だ。)
一妻多夫制の世界は意味があった。
それは子供だ。
子供をたくさん産むために一妻多夫制が取り入れられてる。
私が結婚すると、たくさん子供を産まないといけなくなる。
産むためにはそれなりに『行為』が必要になってくるわけで・・・
私はそれがあまり好きではない。
(でも結婚しなかったら襲われるとか物騒なことも聞いたし・・どうしよう。)
頭を悩ませながらもニゲラとのデートを終わらせてしまおうと、私は考えた。
そう考えて数日。
見事きれいに完成した押し花をシャガに見せると驚いてくれた。
いつかセダムに見せてあげようと思い、私用の本棚にしまった。
ーーーーー
ニゲラとのデート当日。
「ねぇ・・・どこ行くの?」
行き先も服装も指定されなかったデート当日。
昼過ぎに私を迎えに来たニゲラは私の手を引いて歩いてるだけだ。
「俺んち。」
「・・・家!?」
「そ。」
他所の家は・・・ダリアの家以外は初めてだ。
お店ならいくつも入ったことはあるけど、生活空間である家は入ったことが無かった。
(・・・まだ成人してないし・・・襲われることはないよね・・?)
ニゲラのことはシャガの友達だからか信用していた。
ダリアが亡くなった時も、無言で私の頭を撫でてくれたりして・・・いいお兄ちゃんだ。
「驚くぞ?」
「?」
一体何に驚くのか分からなかったけど、引かれるまま歩いて行く。
「そういえばニゲラの家って・・・どこにあるの?」
「ん?がっこの近く。」
「・・・えぇ!?そんな近く!?」
「そ。なんかでっかい建物覚えてるか?」
そう言われ、私は記憶の中で学校の回りを探した。
すると確かに学校の近くに大きな建物があったことを思い出したのだ。
「・・・あった!うちの4倍はありそうな家みたいなとこ・・・。」
「そこがうちだ。」
「!?」
驚きを隠せないままニゲラは私の手を引いて歩いて行く。
そのまま学校の近くまできて・・私はニゲラの家に案内された。
「え・・・ほんとにここなの・・?」
大きな家を前に私は立ち尽くしていた。
ニゲラは鍵のようなものを取り出して戸を開けてる。
「そうだ。ちょっと待てよ?」
「鍵・・・するんだ?」
「高いものがあるからな。念のため。」
かちゃんっという音が鳴り、戸が開けられる。
ニゲラは私の腰元を支え、中に入るように促してきた。
「ほら。」
「お・・お邪魔します・・・。」
中はうちとは違って前の世界みたいな家の造りだった。
ワンルームのようなうちとは違い、壁で部屋が仕切られてる。
「こっちな。」
そう言って家の中に入って行くニゲラの後ろをついて行った。
(すごい・・・キッチンとかちゃんと区切られてる・・・。)
いくつも棚があるのも見える。
こんな大きな家で一人で暮らしてるとか疑問を持ちながら奥に入っていった。
「ほら、どうだ?」
そう言ってニゲラはドーム状の天井の部屋に入った。
そこは壁一面が・・・本だった。
「うわぁ・・・すごい・・・。」
丸く作られた部屋はおよそ20畳。
その壁一面が本棚で、本で埋め尽くされていた。
天井に近いところに窓があり、そこから光が射し込んでるのが見える。
「アイビー、本とか好きなんだろ?勉強もできるしな。」
「!!・・・とうさんに聞いたの?」
「あぁ。」
この世界は『娯楽』が少ない。
テレビも無いし、ゲームも無い。
遊ぶものが何もない代わりに本があり、私は小さいころからそれをよく読んでいたのだ。
学校の教科書とかも例外じゃない。
「好きなだけ読んでいいぞ?」
「え・・・ほんとに?」
「あぁ。」
「私・・集中すると周り見えないよ?」
「俺も読むし。仕事もするしな。」
ニゲラは部屋のあちこちに置いてある大きなクッションを指差した。
「好きなの使っていいよ。ごろごろしながら読んでいい。」
「!!・・・じゃ・・じゃあ1冊だけ・・。」
本棚を見渡すと、いろんなジャンルに分かれたタイトルが目に入った。
歴史、小説、専門書、辞書・・・数えきれないくらいの本がある。
「どれにしようかな・・・。」
悩みながらも1冊手に取った。
「お?歴史か?」
「うん・・・ちょっと気になるから。」
クッションにもたれるようにして座り、1ページ目を開いた。
(この世界の始まりは学校で習ったけど・・・あんま詳しくは習ってないし・・・。)
いろいろ知れることがあるかもしれないと思いながら、私は読みふけった。
ーーーーー
「アイビー、喉乾いたら飲めよ?ここに置いとくからな。」
そう言ってニゲラは私の側に小さな机を置き、カップを置いた。
真剣に本を読んでる私は返事をすることで精いっぱいだ。
「んー。」
「真剣だな。」
「んー・・・・。」
私は置かれたカップを手に取り、一口飲んだ。
口の中に広がるコーヒーは頭をスッキリとさせてくれる。
「おいしいー。」
「そりゃよかったな。」
私は時間が経つのを忘れて没頭した。
ニゲラが入れてくれたコーヒーが白い実であるミルク入りだって気づかずに・・・。
ーーーーー
ーーーーー
「・・・・あ!!」
本を読んでる途中に我に返った私は今の時間が気になって辺りを見回した。
暗くなってるのがわかる天井の窓。
本棚に置かれてるランプが明るく、陽が暮れてることに気がつかなかったのだ。
「やっば・・・!とうさんが心配する・・・!」
慌てて本を元の場所に戻し、私はニゲラを探した。
見回してもニゲラの姿が見えないことからこの本の部屋にはいなさそうだ。
「ニゲラ?」
置いてあったカップを手に持ち、私はほんの部屋を出た。
ニゲラを探して回る。
「ニゲラー?」
少し大きめの声で名前を呼ぶと、私の知ってる声が聞こえてきた。
「アイビー!こっちだー!」
「え・・・この声とうさん?」
声のした方に歩いて行くと、ダイニングらしきテーブルをニゲラとシャガが囲ってるのが見えた。
二人して喋ってたみたいだ。
「もう本はいいのか?」
ニゲラが席から立ち上がり、私が持っていたカップを取りに来てくれた。
「うん・・・日が暮れてることに気がついて・・・とうさんが心配すると思ったんだけど・・・。」
「あぁ、夢中で読むだろうから迎えに来た。ニゲラに『家に連れてく』って聞いてたからな。」
「なるほど・・・。」
シャガも席から立ち上がった。
「そろそろ帰るか?」
「うん。今日はありがとう。ニゲラ。」
「俺、基本的には家にいるから。本読みたくなったらいつ来てもいいからな、アイビー。」
「ありがと。」
私はシャガと一緒にニゲラの家を出た。
歩きながら今日のことをシャガに話す。
「ニゲラの家、すっごく広いんだね。」
「あぁ、学者の家は本がたくさんあるからな。基本的にデカい。」
「そっかー・・・。ほんとにまた行ってもいいのかな。」
仕事をしてると言っても月に何度かあるくらいだ。
家事をして、畑をしたら毎日がヒマ。
出来るならニゲラの家にある本を何冊か借りたいくらいだった。
「行きたかったら行けばいい。ただ、次は迎えに行かないから晩飯までに帰って来いよ?」
「うーん・・・わかった。」
こうして私は4人とのデートを終えた。
正直みんなと結婚はまだ考えられなかったけど、どのデートも楽しかったことだけは覚えてる。
(成人してからまた考えたらいいかな・・・。)
成人まであと3年。
3年経つまでの間もジニアやライム、セダムは私をデートに誘いに来た。
それを時間が合う時に受けていった。
でもニゲラだけは私をデートに誘うことはなかった。
『誘う必要』が無かったからだ。
私は3日に一回はニゲラの家に行き、本を読んでいた。
特にニゲラと会話をするわけでもないけど二人でクッションにもたれて本を読んでいた。
ニゲラが仕事をするときは本の部屋の机で何か書いたり調べものをしているのを見ていた。
(楽でいいなー・・・)
仕事もしながら私は有意義に成人までの時間を過ごしていった。
ーーーーー
「どれ読もうかなー・・・。」
成人まであと数か月と迫ったある日、ニゲラの家で読む本に悩みながら踏み台に上っていた。
高い位置に置いてある本を端から順番に見ていく。
「んー・・・あ、あれがいいかな。」
赤い表紙に目を奪われ、私は手を伸ばした。
でも思ったよりも高い位置にあり、手が届かない。
「んーっ・・!あとちょっと・・・!」
一生懸命背伸びをしながら手を伸ばしてる時、私の身体がふわっと浮いた。
「へ!?」
「ほら、これで取れるか?」
ニゲラが私の身体を抱え上げていたのだ。
「え!?ちょ・・・!」
「ん?取れないのか?」
「やっ・・!取れるけど・・・。」
「なら取れよ。」
身体を抱えられながら私は手を伸ばした。
そのまま読んでみたかった本を取る。
「と・・取った・・・。」
「ん。」
ニゲラは私を抱えたまま歩き、大きなクッションの上にそっと乗せてくれた。
「取れないの言えよ?取るから。」
「う・・うん・・・。」
私の頭を一撫でしてから机に戻って行ったニゲラ。
その大きな手に胸が一瞬どきっとした。
ニゲラの姿を隠すように本を広げる。
(待って・・学者なのにニゲラの腕とか逞しすぎ・・・。)
軽々と私の身体を持ち上げた。
近くで見たニゲラは切れ長の目をしていた。
優しい目で私を見て、優しく撫でた。
(ジニアたちとは・・・違うんだよね、ニゲラって。)
盾にしていた本を少しずらし、ニゲラを見た。
私よりもずっと年上だからか余裕があるように見える。
ジニアやライム、セダムは同い年か年下のように見えて・・・どきっとすることはあっても『弟』か『友達』みたいに思えていた。
(ここの居心地がいいのって・・・ニゲラがいるからなのかな・・・。)
よくわからないまま私は本に目を落とした。
ーーーーー
「楽しかったか?」
セダムの仕事場から帰ってきたあと、シャガが聞いてきた。
「うんっ。みんなすごいねー。」
「山で遭難する奴は多かったからな。山に入ったことがあるやつらがよく助けに行ってたけど・・・それ専門の仕事もあっていいんじゃないかって話になって作られた。」
「そうなんだ。・・・あ、あそこの練習するとこ・・とうさんが作ったって言ってたよ?」
「あぁ。一番最初だけな。あとは自由に増えたり変えたりされてる。」
「へぇー・・・。」
持って帰ってきたお弁当箱を洗いながら話をしてると、シャガがぬっと覗き込んできた。
「な・・なに?」
「お前さ、前の世界でもそうやって家事してたのか?最近家事は全部任せてるけど・・・。」
「そうだよ?片付けるの好きだし、ご飯作るのも好きだし。でもこっちじゃしないんだよね?」
「しない。まー・・外では気をつけろよ?」
「うん。」
私は洗い物をしながら『次』のことを考えていた。
ニゲラとのデートのことだ。
(ニゲラが終わったら約束は終わる。これが最後だ。)
一妻多夫制の世界は意味があった。
それは子供だ。
子供をたくさん産むために一妻多夫制が取り入れられてる。
私が結婚すると、たくさん子供を産まないといけなくなる。
産むためにはそれなりに『行為』が必要になってくるわけで・・・
私はそれがあまり好きではない。
(でも結婚しなかったら襲われるとか物騒なことも聞いたし・・どうしよう。)
頭を悩ませながらもニゲラとのデートを終わらせてしまおうと、私は考えた。
そう考えて数日。
見事きれいに完成した押し花をシャガに見せると驚いてくれた。
いつかセダムに見せてあげようと思い、私用の本棚にしまった。
ーーーーー
ニゲラとのデート当日。
「ねぇ・・・どこ行くの?」
行き先も服装も指定されなかったデート当日。
昼過ぎに私を迎えに来たニゲラは私の手を引いて歩いてるだけだ。
「俺んち。」
「・・・家!?」
「そ。」
他所の家は・・・ダリアの家以外は初めてだ。
お店ならいくつも入ったことはあるけど、生活空間である家は入ったことが無かった。
(・・・まだ成人してないし・・・襲われることはないよね・・?)
ニゲラのことはシャガの友達だからか信用していた。
ダリアが亡くなった時も、無言で私の頭を撫でてくれたりして・・・いいお兄ちゃんだ。
「驚くぞ?」
「?」
一体何に驚くのか分からなかったけど、引かれるまま歩いて行く。
「そういえばニゲラの家って・・・どこにあるの?」
「ん?がっこの近く。」
「・・・えぇ!?そんな近く!?」
「そ。なんかでっかい建物覚えてるか?」
そう言われ、私は記憶の中で学校の回りを探した。
すると確かに学校の近くに大きな建物があったことを思い出したのだ。
「・・・あった!うちの4倍はありそうな家みたいなとこ・・・。」
「そこがうちだ。」
「!?」
驚きを隠せないままニゲラは私の手を引いて歩いて行く。
そのまま学校の近くまできて・・私はニゲラの家に案内された。
「え・・・ほんとにここなの・・?」
大きな家を前に私は立ち尽くしていた。
ニゲラは鍵のようなものを取り出して戸を開けてる。
「そうだ。ちょっと待てよ?」
「鍵・・・するんだ?」
「高いものがあるからな。念のため。」
かちゃんっという音が鳴り、戸が開けられる。
ニゲラは私の腰元を支え、中に入るように促してきた。
「ほら。」
「お・・お邪魔します・・・。」
中はうちとは違って前の世界みたいな家の造りだった。
ワンルームのようなうちとは違い、壁で部屋が仕切られてる。
「こっちな。」
そう言って家の中に入って行くニゲラの後ろをついて行った。
(すごい・・・キッチンとかちゃんと区切られてる・・・。)
いくつも棚があるのも見える。
こんな大きな家で一人で暮らしてるとか疑問を持ちながら奥に入っていった。
「ほら、どうだ?」
そう言ってニゲラはドーム状の天井の部屋に入った。
そこは壁一面が・・・本だった。
「うわぁ・・・すごい・・・。」
丸く作られた部屋はおよそ20畳。
その壁一面が本棚で、本で埋め尽くされていた。
天井に近いところに窓があり、そこから光が射し込んでるのが見える。
「アイビー、本とか好きなんだろ?勉強もできるしな。」
「!!・・・とうさんに聞いたの?」
「あぁ。」
この世界は『娯楽』が少ない。
テレビも無いし、ゲームも無い。
遊ぶものが何もない代わりに本があり、私は小さいころからそれをよく読んでいたのだ。
学校の教科書とかも例外じゃない。
「好きなだけ読んでいいぞ?」
「え・・・ほんとに?」
「あぁ。」
「私・・集中すると周り見えないよ?」
「俺も読むし。仕事もするしな。」
ニゲラは部屋のあちこちに置いてある大きなクッションを指差した。
「好きなの使っていいよ。ごろごろしながら読んでいい。」
「!!・・・じゃ・・じゃあ1冊だけ・・。」
本棚を見渡すと、いろんなジャンルに分かれたタイトルが目に入った。
歴史、小説、専門書、辞書・・・数えきれないくらいの本がある。
「どれにしようかな・・・。」
悩みながらも1冊手に取った。
「お?歴史か?」
「うん・・・ちょっと気になるから。」
クッションにもたれるようにして座り、1ページ目を開いた。
(この世界の始まりは学校で習ったけど・・・あんま詳しくは習ってないし・・・。)
いろいろ知れることがあるかもしれないと思いながら、私は読みふけった。
ーーーーー
「アイビー、喉乾いたら飲めよ?ここに置いとくからな。」
そう言ってニゲラは私の側に小さな机を置き、カップを置いた。
真剣に本を読んでる私は返事をすることで精いっぱいだ。
「んー。」
「真剣だな。」
「んー・・・・。」
私は置かれたカップを手に取り、一口飲んだ。
口の中に広がるコーヒーは頭をスッキリとさせてくれる。
「おいしいー。」
「そりゃよかったな。」
私は時間が経つのを忘れて没頭した。
ニゲラが入れてくれたコーヒーが白い実であるミルク入りだって気づかずに・・・。
ーーーーー
ーーーーー
「・・・・あ!!」
本を読んでる途中に我に返った私は今の時間が気になって辺りを見回した。
暗くなってるのがわかる天井の窓。
本棚に置かれてるランプが明るく、陽が暮れてることに気がつかなかったのだ。
「やっば・・・!とうさんが心配する・・・!」
慌てて本を元の場所に戻し、私はニゲラを探した。
見回してもニゲラの姿が見えないことからこの本の部屋にはいなさそうだ。
「ニゲラ?」
置いてあったカップを手に持ち、私はほんの部屋を出た。
ニゲラを探して回る。
「ニゲラー?」
少し大きめの声で名前を呼ぶと、私の知ってる声が聞こえてきた。
「アイビー!こっちだー!」
「え・・・この声とうさん?」
声のした方に歩いて行くと、ダイニングらしきテーブルをニゲラとシャガが囲ってるのが見えた。
二人して喋ってたみたいだ。
「もう本はいいのか?」
ニゲラが席から立ち上がり、私が持っていたカップを取りに来てくれた。
「うん・・・日が暮れてることに気がついて・・・とうさんが心配すると思ったんだけど・・・。」
「あぁ、夢中で読むだろうから迎えに来た。ニゲラに『家に連れてく』って聞いてたからな。」
「なるほど・・・。」
シャガも席から立ち上がった。
「そろそろ帰るか?」
「うん。今日はありがとう。ニゲラ。」
「俺、基本的には家にいるから。本読みたくなったらいつ来てもいいからな、アイビー。」
「ありがと。」
私はシャガと一緒にニゲラの家を出た。
歩きながら今日のことをシャガに話す。
「ニゲラの家、すっごく広いんだね。」
「あぁ、学者の家は本がたくさんあるからな。基本的にデカい。」
「そっかー・・・。ほんとにまた行ってもいいのかな。」
仕事をしてると言っても月に何度かあるくらいだ。
家事をして、畑をしたら毎日がヒマ。
出来るならニゲラの家にある本を何冊か借りたいくらいだった。
「行きたかったら行けばいい。ただ、次は迎えに行かないから晩飯までに帰って来いよ?」
「うーん・・・わかった。」
こうして私は4人とのデートを終えた。
正直みんなと結婚はまだ考えられなかったけど、どのデートも楽しかったことだけは覚えてる。
(成人してからまた考えたらいいかな・・・。)
成人まであと3年。
3年経つまでの間もジニアやライム、セダムは私をデートに誘いに来た。
それを時間が合う時に受けていった。
でもニゲラだけは私をデートに誘うことはなかった。
『誘う必要』が無かったからだ。
私は3日に一回はニゲラの家に行き、本を読んでいた。
特にニゲラと会話をするわけでもないけど二人でクッションにもたれて本を読んでいた。
ニゲラが仕事をするときは本の部屋の机で何か書いたり調べものをしているのを見ていた。
(楽でいいなー・・・)
仕事もしながら私は有意義に成人までの時間を過ごしていった。
ーーーーー
「どれ読もうかなー・・・。」
成人まであと数か月と迫ったある日、ニゲラの家で読む本に悩みながら踏み台に上っていた。
高い位置に置いてある本を端から順番に見ていく。
「んー・・・あ、あれがいいかな。」
赤い表紙に目を奪われ、私は手を伸ばした。
でも思ったよりも高い位置にあり、手が届かない。
「んーっ・・!あとちょっと・・・!」
一生懸命背伸びをしながら手を伸ばしてる時、私の身体がふわっと浮いた。
「へ!?」
「ほら、これで取れるか?」
ニゲラが私の身体を抱え上げていたのだ。
「え!?ちょ・・・!」
「ん?取れないのか?」
「やっ・・!取れるけど・・・。」
「なら取れよ。」
身体を抱えられながら私は手を伸ばした。
そのまま読んでみたかった本を取る。
「と・・取った・・・。」
「ん。」
ニゲラは私を抱えたまま歩き、大きなクッションの上にそっと乗せてくれた。
「取れないの言えよ?取るから。」
「う・・うん・・・。」
私の頭を一撫でしてから机に戻って行ったニゲラ。
その大きな手に胸が一瞬どきっとした。
ニゲラの姿を隠すように本を広げる。
(待って・・学者なのにニゲラの腕とか逞しすぎ・・・。)
軽々と私の身体を持ち上げた。
近くで見たニゲラは切れ長の目をしていた。
優しい目で私を見て、優しく撫でた。
(ジニアたちとは・・・違うんだよね、ニゲラって。)
盾にしていた本を少しずらし、ニゲラを見た。
私よりもずっと年上だからか余裕があるように見える。
ジニアやライム、セダムは同い年か年下のように見えて・・・どきっとすることはあっても『弟』か『友達』みたいに思えていた。
(ここの居心地がいいのって・・・ニゲラがいるからなのかな・・・。)
よくわからないまま私は本に目を落とした。
ーーーーー
326
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる