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見つけた。

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社長「突然呼び出してすみませんな。」




呼び出された場所で、先に到着していた社長が俺を出迎えた。




慶「いえいえ、ちょうど仕事も一区切りついたところだったので・・・お誘い嬉しく思います。」



テーブルを囲うようにして椅子に座る。

社長の隣には娘が座ってる。

相変わらず一言も口を利かない。




社長「最近・・・『かえでさん』とはどうなんですか?」




突然本題に入ってきた社長。

回りくどいことをしなくていい分、助かった。




慶「かえで・・・ですか?」

社長「この前パーティーに連れてきてたじゃないですか。」



俺は右手を顎にあて、悩むフリをした。



慶「・・・あぁ、そう言えばいつの間にか連絡がつかなくなって・・・今どきの女の子は行動がわからないですね。」

社長「連絡がつかない?」

慶「えぇ、もう飽きられたんだと思いますよ。やっぱり年が離れてる女性のほうがいいですね。落ち着きますし。」


そう言って俺は目線を娘に向けた。



社長「!・・・おぉ、ではうちの娘との話・・・」

慶「そうですね。検討させてください。」




そう言うと社長は目に見えて喜んだ。




社長「そうですか!そうですか!いやぁよかった!!」

慶「えぇ。・・・食事にしましょうか。僕が持ちますんで。」



歓談しながら進む食事。

吐きそうな気持ちを堪えながら・・・俺は笑顔を作り続けた。

こんなこと・・かえでを取り戻すためならなんてことない。





ーーーーーーーーーーーーーー







社長「いや、今日はごちそうさまでしたな。」




食事が終わり、席を立った社長。

俺はその場で別れを言う。



慶「いえ。僕はこのあと行くところが出来ましたので・・・お先にどうぞ。」




俺の言ったことを完全に信用してないのか、社長の顔が一瞬ひくついた。





社長「・・・行くところ?」



ゆっくりと俺の顔をみる社長。

俺は笑顔を崩さないようにして答える。




慶「・・・次にお会いするときにお持ちしたいものができましたので・・・楽しみにしていただけると嬉しいです。」




そう言うと社長の顔が途端に笑顔に変わった。




社長「そうですか!そうですか!楽しみにしてますよ!」

慶「あと、こちらどうぞ。・・・リョウ。」



俺の合図で紙袋を手に持ったリョウ。

それを受け取って、俺は社長に手渡した。




社長「・・・これは?」

慶「美味い酒です。自宅に戻られてからゆっくり飲んでください。」

社長「!!・・・これはありがたい!ゆっくりいただくとします。」




紙袋を受け取り、上機嫌で部屋から出ていった社長。

その足音が完全に聞こえなくなってから・・・リョウが俺に袋を差し出してきた。



リョウ「・・・どうぞ。」

慶「・・・よくわかったな。」



その袋を受け取り・・・俺は胃袋に押し込んだものを全て吐いた。



慶「おぇっ・・・」

リョウ「・・・いいんですか?あんなこと言って・・・。」

慶「くっ・・・『嘘』は言ってない。」





俺とかえでは年が離れてる。

一緒にいると落ちつく。

・・・いつまでも助けにいかない俺に・・飽きたかもしれない。





リョウ「・・早急に買収を進めます。あと、社長に仕掛けたGPSなんですけど・・。」

慶「バレることはないと思うけどな。」




紙袋の持ち手の紐にGPSが埋め込んである。

きっと社長はあれを持ってかえでのところに行き・・・自慢するハズだ。

GPSの信号を辿ればかえでの居場所がわかる。




慶「かえで・・・ちゃんと待っててくれよ・・・。」






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ーーーーーーーーーーーーーー






それから1週間が過ぎた。




社長に仕掛けたGPSでかえでの居場所がわかった。

毎日交代で会社の奴らが見張ってる。


リョウは買収を順調に進めたようで、俺に報告に来ていた。

仕事部屋で・・・作戦を練る。





リョウ「社長の指示通り、街の全てを買い占めてきました。かかった費用はおよそ9兆円です。」

慶「社長を呼び出してかえでがいるビルに行かせろ。警察は呼ぶな。」

リョウ「?・・・監禁容疑で警察に引き渡すのでは?」

慶「はぁ!?んなぬるいことできるかよ!!」





かえでが今、どんな状態でいるのかわからない。

きびしい目に遭ってるかもしれない。

どんな状態であっても・・・俺のかえでを攫ったことは絶対に許せない。




リョウ「しかし・・・かえでさんは望まないんじゃ・・・。」

慶「・・・。」

リョウ「若が・・・殺したと知ったら・・・。」




悲しむ。

悔やむ。

それくらい簡単に予想がつくくらい・・・かえでは真っ直ぐな子だ。




慶「・・・かえでが生きてたら・・警察に。二度と出て来れないように容疑を上乗せしとけ。」

リョウ「かしこまりました。」

慶「かえでを迎えに行く。医者を待機させといてくれ。」

リョウ「はい。」

慶「あと今動ける全員を・・・・」

リョウ「もう会議室に集めてます。」

慶「・・・ありがとな。」




俺は仕事部屋を出て会議室に向かった。

今、この家にいる全員でかえでを迎えに行くために・・・作戦を伝える。




ーーーーーーーーーーーーーーー





慶「今からかえでを迎えに行く。もうビルは買収してあるから中にいるやつらは書類を見せて手を出せないようにしろ。」

部下「はいっ!」

慶「かえでの居場所を知ってそうなやつは捕まえて吐かせろ。腕くらいなら折っていい。殺すなよ。」

部下「はい!」

慶「かえでを見つけたらすぐに・・・俺に報告。わかったな。」

部下「はい!」

慶「行くぞ。」






全員を引き連れて家を出た。

門を出て車に乗り込む。




門番「お戻りお待ちしてます。」

慶「行ってくる。」





家からでた車は20台あまり。

ずらずらと連なりながら・・・俺たちはかえでが閉じ込められてるビルに向かった。







ーーーーーーーーーーーーーー






警備員「勝手に入られては困ります!」



ビルについた俺たちはぞろぞろと中に入った。

あまりの集団に・・警備員が止めにきた。



慶「・・・このビルはうちの管理下になった。」

警備員「は?」

慶「これが正式な書類だ。」



警備員は書類を受け取り、隅から隅まで見た。



警備員「!!・・・失礼しました。」

慶「前の社長を呼べ。あと、このビルに詳しいやつと。」

警備員「私が一番詳しいです。」

慶「なら案内しろ。」




警備員と話をしてるときに、情報を聞きつけたのか前の社長が飛んできた。



社長「神楽さん!これはどういうことですか!!」



怒ってるような・・・困惑してるような感じの社長。

俺は書類を目の前にばらまいた。




慶「ほら・・手土産だ。・・・俺のかえではどこだ?」

社長「!?」

慶「この街は全て買い取った。このビルはお前の持ち物じゃない。俺の持ち物だ。」

社長「・・・お前・・うちの娘との縁談を進めるんじゃなかったのか!!」




書類を破り捨てながら俺に詰め寄ってきた。

すぐさま警備員が引きはがす。




警備員「神楽様に危害を加えることは許しません。」

社長「お前・・!!」

慶「・・・かえではどこだ。」

社長「・・・。」

慶「言わないならそれでいい。リョウ、こいつ押さえといてくれ。」

リョウ「かしこまりました。」



慶「おい、警備員。」

警備員「はい。」

慶「お前、かえでの居場所知ってるか?」

警備員「・・・存じてます。ぐったりとした女の子を・・地下に連れて行くのを見ました。」

慶「!!・・・案内しろ!」

警備員「はい!」




警備員に先導させ、俺は地下に向かった。

俺の部下たちと一緒に階段を駆け下りると・・明るかった空間がどんどん暗くなっていく。


窓がないからか湿気に満ち溢れる通路。

小走りに進むと前の社長の部下が現れた。




部下「こっから先は立ち入り禁止だ!」

慶「お前らに用なはい。」



地面に寝かせとこうかと思った時、俺より先に警備員が動いた。

素早く部下たちを地面にねじ伏せていく。



警備員「この先にいると思います。どうぞ。」

慶「・・・ありがとな。」


俺は先に進んだ。

薄暗い通路を黙々と進むと、大きな鉄の扉が現れた。

どう考えても・・・かえではこの中だ。

ぐっと押して・・・中に入る。




慶「かえで・・・?」



明かりが無い空間。

ドアから入る光しか照らすものはなく、俺は自分のケータイを取り出した。




慶「なんでもいいから光!ケータイでいいから照らしてくれ!」

部下たち「はい!」



一斉に出されたケータイ。

みんながライトで天井を照らした。



慶「・・・いない?」




ケータイの光くらいじゃあまり部屋の中の様子が分からなかった。

ベッド・・・があることくらいはわかったけど、かえでの姿は見つからない。



慶「違う部屋か?」



そう思った時、部屋の中が一気に明るくなった。



警備員「自分の懐中電灯のほうが明るいです。」



追いかけてきた警備員が自分の持ってる懐中電灯で天井を照らしてくれた。

ハッキリ見えるようになった室内。

その状態に・・・息をのんだ。




慶「これは・・・」

部下「酷い・・。」



サビたベッド。

ベッドはあるけど布団はなかった。

床は水で濡れていて・・・天井には蜘蛛の巣もはってる。

空気も澱んでいて・・・とてもじゃないけど『部屋』と呼べる空間ではなかった。




慶「・・・・・いた!」





そんな中で見つけたかえで。

ベッドの横で床に倒れている。




慶「かえで!」




俺はかえでに駆け寄り、その体を起こした。

床が濡れてるからか、かえでの服も濡れてしまってる。

そのせいで体も冷たい。




慶「かえで!?」




肩を揺さぶって起こそうとするけど目を閉じていて開かない。




慶「家に医者はいるけど・・・病院のほうがいいか。」




俺はかえでを抱え上げた。

その時に腕にかかるかえでの体重が・・・劇的に変わってることに気がついた。




慶「・・・軽い。前よりもずっと・・。」



腕にあたるかえでの肩も、骨ばってる感じが強調されてる。

一回りくらい小さくなってる身体。

食べてないことくらい・・・容易に想像ついた。




慶「こんなに小さくなるなんて・・・どれくらい食べてないんだ・・?」




『食べる』ことは『生きる』こと。

食べてない期間が長ければ長いほど・・・かえでの命が危ない。




慶「!!・・・すぐに病院に行く!」

部下「はい!」




かえでを抱えたまま、通ってきた道を戻る。

小走りに進んでいるとリョウが前から走ってきた。



リョウ「社長!!」

慶「リョウ、病院に行く!車出してくれ!!」

リョウ「!!・・・はい!」




俺の前を歩いて行くリョウ。

後ろをついていき、車に乗り込んだ。











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