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奪われた光。

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私は『地下』に連れて行かれた。

エレベーターで下りて・・薄暗い道をずるずると引きずられる。



かえで(・・・暗い。)



さっきまでいた場所と同じ建物内とは思えない空間。

狭い通路にコンクリートがむき出しの壁。


『地下』だからか窓もなく、あるのは人工の光だけ。

それも所々にしかなく、暗いところの方が多く感じた。



部下「ここだ。」



大きな鉄の扉の前で立ち止まった部下の人。

重そうにドアを開けて・・・私は中に放り込まれた。



かえで「ここ・・・・。」




コンクリートで囲われた5畳ほどの部屋。

サビた鉄のベッドが一つ、端に置いてある。



部下「トイレがあるだけマシだな。」

かえで「・・・。」




部下の人を見ると、ロッカーのようなところを指差していた。

おそらくそこがトイレなのだろう。

それよりも気になったことが私にはあった。

この部屋の灯りが・・・ドアからしか入って来てないことだ。

上を見てもライトがない。



かえで「・・・電気・・。」

部下「はぁ?あるわけないだろ?」

かえで「こま・・困る・・・。」

部下「困るんなら逃げなきゃよかったんだろ?自業自得ってやつだな。」




そう言って部下の人は部屋から出ていった。

閉められるドアに合わせて、部屋の光も少なくなっていく。



かえで「や・・やだ・・っ。」



真っ暗になることが目に見えてる。


かえで「待って・・・!」



どんどん光は少なくなっていき・・・ドアが閉まると同時に部屋は暗闇の世界になってしまった。




かえで「!!・・・いやぁぁぁ!!」





ーーーーーーーーーーーーーーー






かえでが地下室に入れられて2時間後、

ぶくぶくと横幅のある社長がかえでの様子を見に地下に下り立った。



社長「どうだ?」

部下「言われた通りに地下室に入れましたけど・・・ずっと叫んでます。」


かえで「----っ!!----っ!?」


部下「ここまで声は聞こえないですけど・・・監視と暗視カメラで叫んでるのが見えてます。」

社長「ほぅ・・・暗いのがダメなタイプだったのか。」

部下「・・・どうします?このままだったら気が狂うかも・・。」

社長「いい。このままで。時々光を入れてやれ。」

部下「・・・わかりました。」




そのままかえでを放置して、社長は外に出た。

『神楽 慶』との結婚話を進めるために・・・。









ーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーーーーー





慶side・・・




慶「・・・まだ見つからないのか。」




かえでが行方不明になってから1ヶ月が経つ。

会社のやつらと全員で片っ端から探してるけど・・・情報の欠片すら見つけれないでいた。



リョウ「・・・生きて・・・ますよね。」



仕事部屋でソファーに座ってるリョウ。

俯きながらぼそっと呟いた。



慶「!!・・・不穏なことを言うな。」

リョウ「すみません・・・。」




この街はもう隅々まで探した。

全ての家の全ての部屋を見せてもらい・・・かえでの姿がないことは確認済みだ。

かえでがいるとすれば・・・他の町しかない。



慶(でもどの町だ?他所の町は簡単に手を出せないし・・・。)



かえでのことを攫ったっぽいあの男の行方も掴めてない。




慶(確証が持てたら手を出せるのに・・・あの社長がかえでを攫ったって確証が持てたら・・・。)




十中八九、あの社長が絡んでる。

そう確信してるけど・・・それは100パーセントではない。

その状況で手は出せないでいた。





慶「・・・リョウ、春斗は?」

リョウ「『目が覚めた』という連絡は入ってません。」

慶「そうか・・・。」





大ケガをした春斗は手術でなんとか命を繋ぐことができた。

ただ・・・頭を殴られたせいか、まだ意識は戻ってない。




リョウ「手と足の骨折にあばらを何本か・・・あと頭の外傷。まだ目は覚めないでしょう。」

慶「・・・春斗が・・・知ってるからな、かえでが攫われた時の事。聞きたいけど・・・。」




リョウとそんな話をしてるとき、ケータイが鳴った。




ピピピッ・・・ピピピッ・・・





慶「・・・リョウのケータイだぞ。」

リョウ「失礼いたします。」





部屋の端に行き、リョウがケータイに出た。





リョウ「はい。・・・・はい・・・・今は立て込んでまして・・・・はい・・・・わかりました。」ピッ・・・

慶「?」




ケータイを切ったリョウは、俺の元に戻ってきた。

気まずそうにしながら・・・電話の内容を報告する。



リョウ「・・・隣町の社長からです。」

慶「なんて?」

リョウ「『そろそろうちの娘との縁談を進めたい。今から・・・前に食事した店で。』と。」

慶「!!・・・やっぱあの社長がかえでのこと攫ったな。」

リョウ「どうしてそう思うのですか?」





俺は机の引き出しを開けた。

金庫の鍵を取り出す。




慶「『受けてもいないもの』を『進める』なんてありえない。それに・・前に会った時に『破談』だの不穏なことも言ってた。100パーセントあいつだ。」




この電話で確証を持てた俺は、取り出した金庫の鍵を持って部屋の奥に行く。

壁にずらっと並んでる棚。

その一部は二重棚になってるところがある。

重たい棚をずらすと見える棚一面の金庫。

俺は鍵を差し込んで金庫を開けた。

中に入ってる金を確認する。




慶「リョウ、これで隣町買収してこい。1週間で。」

リョウ「!?」

慶「あいつには気づかれるなよ。」

リョウ「・・・予算は?」

慶「10兆だ。町のすべてを買って来い。」

リョウ「・・・・・わかりました。」

慶「あとはかえでの居場所だな。」




今日、あの社長と会ったあと、きっとかえでのところに行くだろう。

いや・・行くように仕向ける。

一日でも早くかえでを取り戻すために・・・俺は何だってしてやる。




慶「リョウ、あの社長との会話に入ってくるなよ?たとえ俺が何を言っても。」

リョウ「?・・・かしこまりました。」





俺は上着を羽織って行く準備を整える。

気合を入れて・・・家を出た。




慶「さぁ・・・地獄に落とす準備をしようか。」









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