『修正中』イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。

文字の大きさ
1 / 68

私は一体何?

しおりを挟む
「ねぇっ! 私、そろそろ仕事に行くから出てってくれない!?」

声を荒げて叫んだのは私、水瀬(みなせ)かえで。
壁に掛かった時計は、とうに出発予定の時間を過ぎている。
焦りで胸がざわつくのに、この男――岩本翔太(いわもと しょうた)は一向に動こうとしなかった。

「いーじゃん、今日くらい休んじゃえば?」

二人掛けのソファにどっかり腰を下ろしたまま、気だるそうに放たれる無責任な一言。

「そんなわけにいかないでしょ? さっさと出て」
「ちっ……仕方ねーな」

しぶしぶと立ち上がった翔太は、上着を肩にかけ、大きなあくびをしながら玄関へと歩いていく。

「なぁ、今日は何時に帰ってくる?」
「夕方には終わるけど、ドリップの練習したいから……20時くらいかな。あと、毎日うちに来なくてもいいよ? 翔太も仕事あるでしょ?」

私たちは同棲しているわけではなかった。
なのに、翔太は毎日のように私の部屋に泊まっていく。
夜、私が帰宅する時間にアパートの前で待ち構えていて――疲れた私が夕飯を作る。
翔太は手伝うでもなく当たり前のようにくつろぎ、狭いベッドを占領。
そして朝になると、何事もなかったように帰っていくのだ。

(……正直、一人の時間も欲しい)

付き合って1年。
早くも倦怠期に突入している気がするのは、気のせいじゃないかもしれない。

「――あー、仕事辞めた」

靴を履きながら、まるで大したことじゃないみたいに告げた翔太。

「……はぁ!?」
「だから、お前が帰ってくる頃に戻ってくるわ」
「えっ、いや、ちょっ、は!?」
「早く帰ってこいよ」

にやついた顔のまま玄関を閉め、翔太は去っていってしまった。

「う、嘘でしょ……!?」

玄関にひとり取り残され、私の声だけがむなしく響く。

「はぁー……」

落ち込むような気持ちのまま職場についた私は、更衣室で制服に着替えながら深い溜息をこぼした。

(仕事辞めたって……これで何回目? もう二25歳なのに)

翔太は私よりふたつ年上だ。
付き合い始めた頃は『今月の成績トップ取ってやる!』なんて意気込んでいたのに――。

『向いてない』
『合ってない』

そう言っては仕事を辞め、転職しても数か月も続かない状態が続いている。
私が知っているだけでも、もう4度目の転職だろう。

「もーうっ!」

ロッカーを乱暴に閉め、その勢いで更衣室を飛び出す。

「……どうしたの? 機嫌悪そうだけど」

フロアで声をかけてきたのは、うちの店長だ。
私情は仕事に持ち込めない。

「……なんでもないですよ」
「ならいいけど。もうすぐオープンだからね」
「はーい」

気持ちを切り替え、私はカウンターに立った。
レジのお金を確認し、冷蔵庫の在庫もチェック。

「ミルクに、シロップ、チョコ……うん、十分足りそう」

ひとつひとつ指さし確認し、次にカウンターに並ぶ豆の種類も見る。

「キリマンジャロに、ブルーマウンテン、コナに……」

私の職場は、テイクアウト専門のコーヒーショップだ。
店長と私、あと数人のバイトで回している。

「休憩のときにコロンビアでも買おうかな。甘いの飲みたい……」

まだ開店前なのに、すでに疲れているのは――もちろん翔太のせい。

「でも、お金ももったいないしなぁ……」

そんなことを考えているうちにオープンの時間を迎え、私は店の扉に視線を向けた。
今の時間は午前7時50分。
会社に向かう人たちがどっと押し寄せ、店が一気に慌ただしくなる時間だ。

「ブルーマウンテンください」
「かしこまりました」
「コロンビア」
「少々お待ちください」
「モカください」
「はーい」

雪崩のように押し寄せるお客さんを、私と店長で次々とさばいていく。

「お待たせいたしました。行ってらっしゃいませ!」
「コロンビアです、750円です」
「モカのお会計、こちらでお願いします」

忙しいのは朝の一時間だけ。
ここを乗り切れば、しばらくは小休止できる。
そしてその一時間はあっという間に過ぎ、私と店長は深く息を吐いた。

「ふー……なんとかピーク過ぎたわね」

器具を洗いながらこぼした店長の言葉に、私も豆を補充しながら頷く。

「次はお昼休みですねー」

朝は出勤前の会社員、お昼は休憩時間のお客さん。
この店のピークは、1日に2度やってくるのだ。

「で? 朝のため息は何? 私でよければ聞くよ?」

店長は今年46歳。
スタイルもよく、まさに『美魔女』と呼ぶにふさわしい体型を持っている。
倍近い人生経験を持つ彼女に相談してみるのも悪くないと思った私は、俯きながら話し始めた。

「彼氏がいるんですけど……」
「うん」
「就職してもすぐ辞めちゃう人で……」
「あー……」

店長は『残念ね』という顔をしながら話を聞いてくれた。

「仕事終わって帰って、ご飯作って、洗い物して……。なんか、私って何なんだろうって思っちゃう時があって」
「そうだねぇ……」
「ご飯作るのは好きなんですよ? ただ……」
「『彼は収入ないのに、全部自分が背負ってる』」
「!! ……まぁ、そうなんです」

家賃はもちろん私が払っているし、翔太は食費を一度も入れたことがない。
「くれ」と言えるはずもなく、少しは気にかけてほしいといつも思っていた。
ふたり分の食費は、地味に重くのしかかるのだ。

「給料上げようか?」
「それはうれしいですけど……根本的には解決しないので」
「まぁね。さっさと別れたほうがいいんじゃない? なんで別れないの?」
「なんでって……うーん……」

翔太は私にとって初めての彼氏だ。
一緒に出かけたり、ご飯を食べたりする時間が楽しくて――いつの間にか、好きになっていた。
告白のきっかけも曖昧なまま、自然と付き合いが始まったのだ。

「ずるずる同棲になってヒモになるのがオチよ? 別れて新しい男探しなさい」
「ちょっと……考えます」

店長の言葉が胸に刺さる。
『ヒモ』――すでにその状態なのかもしれないけど、きっぱり言えない自分に情けなさを感じてしまっていた。

(小遣いが欲しいって言われてないだけで……『まだ』なだけかも)

そう思うと、胃のあたりがずしりと重くなる。

「それとも……夜がすごいとか?」

店長がからかうように笑う。

「いやぁ……どうでしょうねぇ」

そう、とぼけるように返したそのとき、カランカランとドアベルが鳴り新しいお客さんが入ってきた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...