異世界は獣人の国!?番に求められて逆ハー状態!?

すずなり。

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バスケットに手を伸ばしてきたのは騎士団所属の『サウス』さんだ。
紺色の制服を身に纏い、腰元には剣。
金色の髪の毛からちょこんと丸い耳があり、シュッとした尻尾が揺れてる彼は『ライオン』の獣人だ。

「あれ?サウスさんお仕事じゃないんですか?」

軽々とバスケットを持ち上げたサウスさんに聞くと、彼はにこっと優しい笑みを浮かべた。

「うん?人助けも仕事のうち。ルアはいつも買い込むからね。」
「すみません・・・。」
「全然大丈夫だよ。まだ買う?」
「~~~~っ。もっ・・もう終わりですぅ・・・。」
「ははっ。」

クスクスと笑いながら歩き出したサウスさんに続くようにして私も歩き出した。
サウスさんはバスケットが壊れないようにか、底をしっかり持って歩いていた。

「そういえばさ、この前騎士団に持って来てくれたお菓子、すごく好評だったよ?あれ、なんて言ったっけ?」
「あぁ、『クッキー』ですね。偶然にもバターができてしまった時に慌てて作ったもので申し訳なかったのですが・・・。」

生クリームが手に入らないことから、もしかしてと思って振ってみた牛乳。
バターらしきものができたことで慌てて『簡単クッキー』を作ったのだった。
そして出来上がったクッキーが大量だったこともあり、騎士団に差し入れとして持って行かせてもらったのだ。

「『バター』?」
「牛乳を振るとできる固形物です。お菓子作りには欠かせないもので・・・あ、パンに塗っても美味しいんですよ?」

スライスした食パンに塗って焼くとおいしいことは間違いない。
家に残してあるバゲットに塗って焼こうかと考えてると、サウスさんはバスケットの中にある牛乳の瓶を指さした。

「もしかしてこの牛乳で作るの?」
「そうですー。今日は家に帰ったらひたすらバター作りですね(笑)」

シェイクするのにちょうどいい瓶が家にあるものの、その瓶に入れれる牛乳の量は少量。
作っては容器にいれ、また作っては容器にいれるを繰り返さないと大量に作ることはできないのだ。

(疲れるけど楽しいし・・・。二日くらい筋肉痛になるけど楽しいし・・・?)

そんなことを考えてると、サウスさんはサウスさん自身を指さした。

「僕も手伝っていい?」
「・・・え?」
「『牛乳を振る』って言ってたからさ、重労働なんじゃない?よければするよ?」
「!!」

願ったりかなったりの申し出だけど、騎士団の人をバター作りに使わせていただいていいのか悩むところだ。

「・・・大丈夫です。少し振るくらいなので・・。」

バター作りをお願いするなんてこと、できそうになくてそう答えた私。
サウスさんは優しい笑顔のまま、私を見ていた。

「そう?いつでも声かけてね?」
「ふふ、ありがとうございます。」

声をかけてくれたことを嬉しく思いながら、私たちは他愛ない話を繰り返した。
そして家に着くとサウスさんは家に一緒に入り、キッチン側にある棚にバスケットを置いてくれたのだ。

「ありがとうございます、ここまで運んでいただいて・・・。」
「ううん?いつでも呼んでね。」

そう言ってサウスさんは手を振りながら仕事に戻っていったのだった。

「さてと・・・。」

私は買ってきた食材たちを冷蔵庫代わりの棚にしまい始めた。
この世界に冷蔵庫なんてハイテクなものはないのだけれど、代わりに『魔法が付与されてる』物があるのだ。
冷蔵庫代わりの棚は冷気を循環させる魔法が付与されてるらしく、棚の中は常に一定の温度が保たれてる。
その魔法は『人間』には使うことができないそうで、使えるのは獣人のみなのだとか。

「それも不思議なことだよね。どうして人間には使えないんだろ。」

同じ世界で暮らしてるのだから使えていいのに、使えるのは獣人だけ。
あと・・・私だ。

「何気なく使えたけど・・・やっぱりおかしいよね・・・。」

騎士団の人たちが使ってる魔法を見て、家で同じようにして見たらできてしまったのだ。
攻撃できるほどの威力は無いものの、明らかにおかしいことだ。

「やっぱり異世界から来たことが関係してるのかな。」

変に思われたら困るからナイショにすることに決めた私は、このことは誰にも言ってない。
もちろん、騎士団の人たちにもだ。
大した威力もないことから、火の魔法は料理の時に、水の魔法は夜中に水が飲みたくなった時に出すくらいしか使うこともない。

「使えることに一体何の意味があるんだか。」

そんな疑問を抱きつつも買ってきた食材たちを全て片付けた私はバター作りに取り掛かることにした。
私の手に収まるサイズの瓶を用意し、牛乳を注ぎ入れていく。
そしてしっかりと蓋をし、シャカシャカと振り始めた。

「よいしょっ・・!よいしょ・・・っ!」

何度も何度も瓶を上下に振ると、シャバシャバしていた液体が少しずつ分離されて音が変わり始める。
それをさらに振り続けてペッタンペッタンと音がし始めた時、バターが完成するのだ。

「ふー・・・。これをザルでこしてなめらかにして・・・と。」

出来上がったバターをきれいにし、容器に入れて冷蔵庫にしまう。
そしてまた牛乳を瓶に入れ、振り始めた。

「夜までかかるかもー・・・。」

明日は筋肉痛で何もできないことを痛感しながら振ってると、コンコン・・・と、扉がノックされる音が聞こえてきたのだ。

「?・・・誰かな?」

バターを作りながら玄関に行き、扉を開けてみる。
するとそこに騎士団の一人である『ランバート』さんが立っていたのだ。

「ルア、リンゴを沢山もらったから持ってきたんだけど・・・って、何かしてたのか?」

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