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【紗耶香視点】光が見たい令嬢

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 バシンッ!バシンッ!

「お義父様!もうお止め下さい!」
「お父さん!」
「煩い!この馬鹿娘が!の使い方をまた間違えおって!」

 杖で、紗耶香の身体を折檻する白河酒造の会長で、祖父だ。
 任意同行を余儀なくされ、白河会長が警察に圧力を掛け紗耶香を帰させたのだ。
 紗耶香は恐怖に怯えながら、床に這いつくばっている。

「謹慎せい!1歩も外に出すな!」
「うぅ………うっ…………」
「紗耶香………」
「っ!」

 パシッ!

 紗耶香に駆け寄る紗耶香の両親。だが、紗耶香はその両親を跳ね除けた。

「触らないで………アンタ達が、私に何が出来るのよ………役立たずの癖に……」

 紗耶香は両親が無能と祖父に言われ続けられて育った。実際に、祖父にいつも怒鳴られて来た両親を見て、祖父は紗耶香が両親の様にならないよう教育されて来たのだ。
 無能、無能、と何度も祖父にも罵られ、褒められる事を願い、祖父が求める後継者になろうと努力してきた。
 紗耶香が20代半ばになった頃、祖父は白河酒造の後継者となるべく紗耶香の結婚相手探しに翻弄していた。そこで律也の存在を知ったのだ。
 名古屋での名はであったのに、東京へ帰って来た時はと名乗っていた律也を不思議に思った白河会長は、人を使い調べさせていた。勿論、白河会長の調べには、律也のも知られているが、白河会長の中ではだ。折檻等、白河会長の世代なら当たり前の行為。寧ろ、無能だと罵られてきた紗耶香にはいいとなる。
 そして、業務提携し結婚させてしまえば、次男の律也だ。婿とし、長男の大河には子が出来ぬ為、そのまま速水物産を奪う算段迄起てていた。
 それなのに、律也は紗耶香に靡かないどころか、別の女と結婚をし、その女の実家を助ける事迄やって退けた。
 紗耶香のは使えない者ばかり。悪い方へと向かって行ってる気配は既に感じられた。

「っ…………痛っ……」
「お嬢様、手当て致します」
「…………お願い……」

 部屋に入り、紗耶香の部屋は外見とは違い薄暗くしていた。

「暗くては手当て出来ませんから、明るく致します」
「……………好きにしたら……」

 ポツポツと、涙が落ちる紗耶香。
 警察からの質問に答える前に帰されたが、裕司はまだ警察に居るだろう。

 ―――裕司……如何なったかしら…

 裕司の事を思うと涙が止まらない。白河酒造の闇の部分の仕事をさせるというので紹介されたのが裕司だ。裕司が刑務所から出て直ぐの事だ。
 の部分に身を起きつつ、が合う紗耶香。に憧れて、に堕ちた裕司。2人は違う境遇なのに似ていた為、直ぐに惹かれあっていたのだが、白河会長には直ぐに知られ、紗耶香には直ぐに監視が付く中での生活を余儀なくされる。

「お嬢様、終わりました」
「電気消して、もう出てっていいわ」
「はい」

 律也が好きだった訳ではない。で好きな振りをしただけだ。羽美の事も如何でも良かった。祖父の命令は絶対なだけ。
 紗耶香は眠くもないのにベッドへ横たわる。何もしたくない。もうこのまま消えてしまえればどんなにいいか、と節に願っていた。

      ❊❆❊❆❊❆❊

 白河家は朝から騒がしくなっていた。
 いつの間にか眠ってしまった紗耶香は身体を起こす。

「如何したの?」
「お嬢様!おはようございます!」
「挨拶はいい、何があったの!」
「大旦那と旦那様は慌てて会社に行かれました。何でも会社の一大事だとか……」
「私も行くわ」
「お嬢様、お怪我は……」
「行かないと、お祖父様にまた怒られるでしょ!早く準備手伝いなさい!」

 白河酒造に着いた紗耶香が、耳にしたのは筆頭株主が代わった、という情報だ。白河会長が筆頭株主ではあったが、社長である紗耶香の父と母、そして紗耶香が株を主に持っていたが、それ以外の株を全て1人の人間に買われていて、合計しても白河会長より持っているという。よって、筆頭株主が代わり、白河会長の権限が通らない事が出来るという事だ。

 ―――誰が買い占めたの!?

「何処のどいつか分からんのか!」
「そ、それが様々な経由を通し買われてまして、一括して最終的に集まる様にある人物の手にある、と今朝方分かったばかりで……」
「何故株の動きを把握してなかった!」
「い、今迄も売り買いは目にしておりましたので…………こうなる迄の把握は…」

 白河会長は青褪めている。株を買い戻して筆頭株主にならなければ、白河会長は任を辞する事にもなりかねない。
 業務提携の話どころではないのだ。そんな不安定になった会社を業務提携したいとは思わない筈だ。

「会長!」
「何だ!」
「国際電話が……」
「今そんな誰かも分からん電話等出れるか!」
『は~い!ご機嫌如何しら?初めまして、この度、白河酒造の筆頭株主になりました、森本 萌で~す。イタリアからごめんなさ~い』
「…………な、何だと……」

 ―――森本?……

 と聞いて、思い当たる人物が居る。だがそれはだと知ったのは、業務提携の話を速水物産にする前の事だ。

「か、会長!」
「今度は何だ!」
「速水物産から連絡が!」
「誰だ!」
「速水 律也と……」
『あら、律也から電話がありまして?』

 PC画面で、派手な熟女が手を振っている。

『母さん、時間通りは珍しいな』

 その横のワイプでは律也が呆れた顔を見せていた。

「こ、小僧…………」

 それだけでも、白河会長はフツフツと怒りの沸点を上げている。

『白河会長………あ、いやもう辞するんですかね?………業務提携するか、しないか……もしくは、白河酒造が速水物産に吸収合併、言い方変えればでしょうか……ご判断願います………3日以内にね』

 紗耶香から見えるリモート画面の中の律也は、敵意剥き出しに見えた。

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