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モーニング文化
しおりを挟むベッドでお互いに抱き合い微睡む羽美と律也。目が先に覚めたのは羽美だった。
―――今…何時かな………時計は……
もそもそと動きに掛かると、身体が引き攣る羽美。
「イタッ………」
「…………羽美……はよ……」
動く気配に、律也の腕が伸び抱き寄せられ、動けなくなった。
「………おはようございます……」
「可愛いかった………羽美の身体最高……」
「っ!……あ、ありがとうございます……」
「………ヤバイ……朝立ちに付き合え、羽美」
「朝立ち?………何ですか?それ」
律也の胸の中に収まる羽美が、律也の顔を覗くと、律也は羽美の手を握り、律也の足の付け根を触らせる。
「コレの処理」
「なっ!………何であんなにシたのに勃ってるんですか?」
羽美は、今迄交際してきた男と朝を迎えた事が無かった。だから朝立ちが何か分からない。
「男の朝の生理現象で勃つんだよ、知らないのか?」
「知らないですよ………男性と外泊した事もないので」
「今迄如何してたんだ?」
「大学に通っていた時期は独り暮らししてましたけど、寮だったので外泊出来なかったんです……でも、1年程アパート暮らしはしたんですけど、兄に付き合ってた人の事がバレちゃって、強制的に独り暮らし止めさせられました」
「………そんなに兄貴が怖いのか?妹の恋愛に口出しする程……」
「あ………いえ、実はその相手、店に女性を連れて来た事があったらしく、その後私がその人を『彼氏』と紹介したら、兄がその事を暴露して………『本命は羽美だから交際を続けたい』と彼は言ったんですけど、兄が大反対しまして、それからその人何故かストーカーみたいになってしまって……私も怖くなって実家に戻ったんです」
「今、その男は?」
「………さぁ?警察が介入してくれてから、音沙汰無くなったので、それっきりです」
羽美はそれ以降、恋愛に進展する恋はしなかった。それを、律也と出会い、淡い恋心が再燃したものの、告白する勇気は過去の経験から出来なかったと説明した。
「そうか………なら、早い内に羽美の家族に会わせてくれ」
「…………接待に使うとか、という訳ではなくて、ですか?」
「今日の泊まり、どう言って外泊してきた?」
「………会社の友人と、飲みに行くからそのまま彼女の家に泊まる、と……」
「なら、早い内がいいな……来週中に時間を作ってくれ……客として羽美と食事した後、挨拶させて欲しい」
「勘違いしますよ、特に両親は……あの………結婚とか……」
年齢的にその言葉が出てもおかしくはない。律也は30歳。相手が居ない事の方が不思議なぐらい見目がいい。羽美の兄、航はともかく、両親は結婚前提の付き合いをしていると、思われてしまうだろう。
「………あぁ……それはまだ分からないからなぁ……羽美は困るだろ?付き合い始めて直ぐに結婚の意識に持っていくのは」
「………正直言うと……まぁ……仕事上の面しか知らなかったので……」
「だが、俺も困るんだよなぁ……羽美を外泊させれないのは」
「…………え?……それが理由ですか?」
「他に何があるよ………時間を気にしてセックスするなんて、俺は嫌だね」
外泊になれば、律也は羽美を抱きたいと思うだろう。毎週末は泊まりに来い、というぐらいなのだから。
そして、羽美が思った通りの答えが返ってきたのだ。
「…………腹減ったな……モーニングでも食いに行くか」
「モーニング?」
「あ、そっか……名古屋じゃないからモーニング文化無いんだよな、こっちは」
律也が赴任前に居た地域は名古屋だった。出身地は羽美と同じく東京ではあるが、就職後転勤で名古屋に5年住んでいた律也。
独り暮らしの独身男の食事等、自炊が出来なかった場合、外食か弁当だ。
「名古屋に居た頃は毎日、茶店でモーニング食べて会社行ってたからな……珈琲1杯の値段でサラダやトースト、店によっては茶碗蒸しとかピザとかうどんとか刺し身定食とかになって出るんだぞ」
「そんな事して、採算取れるんですか?」
「度外視だろ、当然……でも、大抵満席になるぐらい朝から客来るぞ」
「行ってみたいですね、見てみたい」
「………なら再現してみるか?作ってやる」
律也も話をしていて、思い出したのか食べたくなり、再現してみようと考え、ベッドから出ると、昨夜脱ぎ捨てたティシャツと短パンを身にまとい、キッチンへ行ってしまったので、羽美もバックの中にある持ってきた下着と昨日の着ていた服を着る。
しかし、既にボウルにはサラダが出来ていて、トースターにはパンを焼いていた。
「手伝います」
「じゃあ、皿に千切ったサラダを片隅に盛り付けてくれ……羽美は目玉焼きがいいか?それともスクランブルエッグ?オムレツ?」
「スクランブルエッグで」
「了解………俺が作るのはポピュラーだから、そんなには凄いのじゃないからな」
トースターに厚切りに切ったバターを塗ったパンをサラダを乗せた皿に乗せ、スクランブルエッグを横に添えると、冷蔵庫からジャムとあんこを出す。
「運んでもらえるか」
「あ、はい」
羽美が料理を並べると、律也は珈琲を運んで来る。
「ワンプレートなんですか?」
「いや、シンプルなモーニングはこれぐらいだな………珈琲1杯でコレが最低限ぐらいの量で、店によってはオリジナリティが様々過ぎて、全部は出来ん………俺は、バタートーストにあんこ乗せて食べるのをあっちでハマってな」
「今、あんバターのパン人気ですよね」
「名古屋はもっと昔からだそうだぞ」
「東京は数年前からなのに……」
バタートーストにあんこを乗せ噛る律也を見て、羽美も名古屋風の喫茶店の朝食を食べ始める。意外にも、あんこを乗せたバタートーストと珈琲の苦味は合っていた。
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