エレメント ウィザード

あさぎ

文字の大きさ
上 下
28 / 132
第1章3部

足掻く

しおりを挟む
家の中に案内され好きな所に座って寛いでくれと言われるも、散らかった部屋に一同ドン引きしている。

「ドリューン、あなた少しは部屋を片付けなさい!! ガラクタだらけじゃない!!」
「何言ってるんだ!! ガラクタじゃない! 整理していつでも必要な物が分かるように置いてるんだ!!」

あ~、片付けられない人の典型だ…。
自分の中で必要な物をいつでも使えるように出しっぱなしにしてるから整理してると思ってはいるけど、実際の所、滅多に使う事の無いものまで出しっぱなしにしてる。
うん、気持ちは分かる。
ここまで広い家で無くワンルームマンションに住んでて手の届く範囲にいずれ使うかもしれない物が無いと何となく心配なんだよね…。
ただ自分の部屋はここまで散らかってなかったはずだ!!
そう言えば家にある薄い本とPCに入ってるエロ画像データってどうなったんだ?
今まで特に気にはしてなかったけど、多分親か妹が片付けをしてるはずだけど…。
…、最悪だ!!
絶対に酔って階段から落ちて死んだだけじゃなく、人を巻き込んだうえ、部屋の片づけをしたら薄い本やエロ画像が詰まったPCを見られてる。

「カツヒコ、どうしたの? 何か壊しでもしたの? だったら気にしなくても良いわよ、どうせここにあるのはガラクタばかりなんだから」
「いや、前世の事を思い出してて…」

「そう、前世で既にやらかしてるんだから今更でしょ?」
まあそうなんでけどね…。
そうなんだけど、思い出してしまったら肉親にどう言われてるのかが気になるんだよね。
絶対に冥福を祈られてないだろうし、最悪棺に薄い本を詰め込まれて火葬されてそうだし…。
うん、忘れよう!!

「それでドリューンさんは、ここに引きこもって何してるんですか?」
前世の黒歴史を振り払い、ドリューンさんに素朴な疑問を投げかける。
うん、男には忘れたい事もあるんだ!! 忘れる為には他人と話をしてその事を忘れるに限る!!
そんな思惑を知らないドリューンさんは、いつも座って居るのであろうソファーの物が置いていない場所に腰を下ろした後、少し考えた後口を開いた。

「まあ俺はここでしてる事と言えば魔道具の開発だな、迷宮も育ちきったし、毎日宝箱が出現するからその中身を確認し魔道具の材料にして新たな魔道具を作る。 そんな所だ!!」
「それで、どんな魔道具があるんですか?」

「そうだな、最近の新作だと町の宿屋にコッソリ設置した極小魔法陣から送られてくる映像を見る事が出来る魔道具だ!! これがあれば女冒険者の入浴や着替えが見放題だぞ!!!」

「サイテーですね…」
「まあ見られても減るもんじゃないけど、覗きはな…」
「はぁ~、昔から思ってたけどもっとまともな物を作れないの?」

胸を張って自信満々に盗撮魔道具の存在を暴露したドリューンさんを女性陣が冷たい視線で見てる…。
迷宮の最下層に住み着いて盗撮魔道具開発って…。

「それはそうとして、迷宮が育ちきったってどういう事ですか? 迷宮が育ちきったってどうやったら分かるんですか?」
「んん? そんなもん、さっきも言ったが俺が育てたんだから成長が止まれば分かるに決まってるだろう!」

なんか凄い短気な人だ…。
短気なのに凄い?魔道具を製作する人ってなんか矛盾しているような。
直ぐにキレて魔道具制作を投げだしそうな気がするんだけど、これが職人気質という奴なのか?

「じゃあ迷宮を育てるってどうやって育てたんですか?」
「そんな事か? まあ秘密と言う訳じゃないから教えてやるが、単純な事だぞ?」

そう言いながらドリューンさんが迷宮の育て方について語り出した。
迷宮が産まれる原理は判明していないものの、迷宮には核となる魔力の結晶があり、その結晶が成長する事で段々と深く広くなり、結晶から流れ出る魔力により魔物が産まれるとの事らしい。
なので、ドリューンさんいわく、魔力の結晶を見つけそれを魔道具化して魔物など魔石に宿る魔力や自身の魔力を注ぎ着込み成長促進を促すとの事だ。
勿論、大地から流れ出る魔力も吸収するよう魔道具化している為、育て方によっては普通の迷宮の数十倍の速度で育つらしい。

そして魔道具化した事で、階層ごとに自然型、遺構型、洞窟型と階層ごとに異なる型にする事ができるとの事だった。
ドリューンさんはその魔道具を使い自給自足が出来る迷宮を育て最下層に住み着き誰にも邪魔をされず魔道具開発をしているとの事だ。

何故か遺構型階層に出現する宝箱から得られる物、洞窟型階層から取れる金属、自然型階層から取れる食料、そのすべてを一つの迷宮で得られる魔道具化された迷宮の核となる結晶。
ドリューンさんに頼んだらあっさりと見せてくれたけど、結晶が何重にも層のようになっており、話を聞くと、この層の1つ1つが増える度に階層の構造を決める事が出来るらしい。

「簡単じゃないですよね? そもそもそんな魔道具なんて普通…、いや、それこそ国のお抱え魔道具師でも作れませんよね? しかも階層の構造を決めるとか聞いてもどうやったらそんな事が出来るのか想像もつきませんよ!!」
「それはお前に知識と技術が無いからだろ!!」

なんて言えばいいんだろう、自分が凄い事をしているという認識がない人に、凄い事だと言っても信じて貰えない感覚だ。

「あと疑問なのが迷宮の中に町や村がありますけど、住んでいる人がここで生まれてここで死ぬのが普通って感じだったんですけど、それもその迷宮を育てる魔道具の力とかですか?」
「ああ~、それは魔道具の力と言えば力だが、どちらかと言うと迷宮で生まれる魔物と同じだな、あの人間達は元々、迷宮から生まれた人、いや魔物と言うべきか、それの子孫だからだろうな」

「迷宮から生まれた? 元々魔物だったんですか? そうは見えなかったんですけど…」
「当たり前だ、迷宮を育てるという事は階層ごとに生まれる魔物もある程度決められるし創る事も出来るんだから、人間と同じものを生み出すようにする事なんか簡単だろう。 まあ丁度良い階層に数百生み出された時点で別の魔物が生み出されるようにしたから永遠と生まれる事は無いがな」

「だから迷宮で生まれ育ちそこで一生を終えるのに疑問を持たないという事ですか? なんだか禁忌に触れているような…」
そう言う自分に、自分で農作業や製鉄などすべてをしてたら魔道具作りに集中できないだろう!!
平然と言い放つドリューンさん、自信満々に言われると確かにと思いそうになるけど、何か違う気がする。

そんなドリューンさん「今では迷宮に潜る冒険者なんかと結婚したりして血が混ざっているからそのうち外の世界に出て行く奴もいるだろうし特に問題はないだろ」と完全に他人事だ…。

まあ人を襲って食べたりしないし、迷宮の外に出ても普通に生きて行けるんだろうけど、まさか元々が迷宮から生まれた人間を模した魔物だったとは。

だけどドリューンさん、迷宮の育て方はどう考えても簡単じゃありませんよ!!
そもそもそんな魔道具なんか思いつきもしないし、運用方法も教えられても使いこなせるかどうか…。

この感覚が400年以上前に大勢いたと言われる魔道具師や錬金術師などの感覚なのかな。
だとしたらここ400年近くで相当技術レベルが衰退してるような。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...