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第一章

幕間:ジェライト君(アキラさん視点)

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「ただいま帰りました」

「おかえり、アキラ君。今日の夕飯はカレーライスだよ。辛口と中辛と甘口があるが、アキラ君はどれがいい」

「ナディール様、中辛でお願いします」

「わかった。19時には食卓についてくれ」

「いつもありがとうございます」

「こちらこそありがとう、アキラ君。毎日が楽しいよ」

「え…?」

「いや、今までも楽しかったんだが、キミが養子になってくれて、なんだか嬉しくてね」

「…僕も嬉しいです、」

「泣かないでくれ、アキラ君。僕はジェライト君に殺されたくない」

「すみません」

「ジェライト君は、なんだかピリピリしてるから挨拶してあげてくれるかい」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

「では、また」

僕はいま、サムソン伯爵家の王都の邸に住ませてもらっている。ケイトリン団長が引退した6年前、サムソン伯爵とケイトリン元団長、そしてジーク君の下の双子ちゃんにご執心過ぎるという理由で、ルヴィアさんのご両親、ジョージさんとマーサさんも辺境の領地に戻った。

今ここに住んでるのは、ジーク君、ルヴィアさん、ジェライト君、アルマディンちゃん、下の双子のエマちゃんとエヴァちゃん。そして、ナディール様と僕の8人だ。

ジーク君とジェライト君のたっての希望で、僕とナディール様が目覚めた後、各部屋の改装が行われた。今までお風呂は客人用も含めて2つだったのだが、各部屋にお風呂、トイレもつけるという…僕からすると、ホテルのような作りだ。しかも部屋のひとつひとつがデカくて応接間と寝室がドアでつながる仕組み。お城でジーク君が住んでた部屋と同じように作ったらしい。

なぜ一部屋一部屋が広いか?数を作ってないから。サムソン伯爵ご夫婦や、ルヴィアさんのご両親が来ることを配慮して、客間は5つあるのだが、ジーク君は、「俺とルヴィは二人きりの部屋にする!絶対!子供部屋は別!いいでしょ、ルヴィ、ね、ね、お願い、」と涙目で訴え勝利を勝ち取り、アルマディンちゃんはナディール様と今まで通り同じ部屋。エマちゃんとエヴァちゃんは二人でひとつの部屋を共有。子供部屋にはお風呂、トイレはつけてない。自分がルヴィアさんを好きにしたくせに、「エマとエヴァが万が一にも男に襲われる心配はなくしたい」と…キミの妄想はどうなってるんだ。そもそも、チェック厳しくて、男性は入れないシールド張ってるくせに。二人の部屋に。僕も入れないです。入る気ないですけど。

そして当然のようにジェライト君の部屋に僕が住んでいる。「一緒じゃないと寝れないんです、アキラさん、お願いします」とこれまた涙目のジェライト君に流されて、大きいベッドにふたりで寝ている。180cmあるジェライト君が3人は寝れるだろう大きさ。こんな大きいベッドに寝たことはないため、初めは落ち着かなかったのだが、ジェライト君が毎日後ろから抱き付いて寝るため、あまり気にならなくなった。ジェライト君は温かい。僕は冷え性ではないけど、その肌の温かさにいつでもぐっすり眠れるようになった。若返ったのも理由かな。年を重ねると眠りが浅くなる、少なくとも僕はそうだった。

ジェライト君の部屋は相変わらず蔵書だらけだが、「アキラさんが住むから」と邸のケイトリン団長の部屋に本を移していた。あの部屋は元々本だらけ、今はさらにすごいことになっている。

「ただいま、ジェライト君」

部屋は真っ暗だった。18時だと、もう暗い。明かりをつけようとすると、ふわりと抱き上げられた。

「…ジェライト君?」

「お帰りなさい、アキラさん。消毒しましょう」

「消毒ってなに、ん…っ」

ペロッとくちびるを舐めるジェライト君。

4月に僕が目覚めたあと、ジェライト君は「アキラさんを全部舐めたい」と言ったが、実際に舐めたのは僕の顔と、胸だけだった。あとは「なんかもったいない」と言って舐めなかった。いや、胸はかなり舐められてます。最近はキスマークをつけるのがジェライト君の中で流行っているらしく、「見えないからいいですよね、まさか、アキラさん、誰かの前で脱いだりしないですよね、見せないんだからつけてもいいですよね」と捲し立てられてあちこち付いてる。お風呂に入って肌を見るのが恥ずかしい。しかもお風呂も必ず一緒で、舐めないけど全身ジェライト君の手で洗われる。足の指の間とか、洗う前にクンクンされるし、もうやめて欲しいんだけど拒否権はないらしい。なぜだ。

「タオルで洗ったら、」と言ったら、「何を言ってるんですか!?アキラさんの肌に触れさせるタオルなんてありませんよ!タオルの分際で、そんなこと許しません!」と訳のわからない理論をぶちかまされた。薄々気付いてはいたけど、ジェライト君もやっぱりジーク君と同じ変質者なんだな。僕、生き抜けるだろうか。

「ジェライト君、なんで明かりをつけないの。暗くて見えないよ、キミの顔が」

「…アキラさんに見せられない顔をしてるからです」

「どうしたの、何かあったの。お昼に来たときはケガとかしてなかったでしょう。見せて、ジェライト君」

「アキラさん、」

するとジェライト君は口づけてきた。舌を入れられ、吸い上げられる。

「…っ、ジェライトく、…っ、ねぇ、」

「アキラさん、アキラさん、アキラさん…っ」

かなり激しく口づけられて、早くも息絶え絶えになる。いくら若返ったとは言え、魔術団で13歳から闘っているジェライト君とは体力が違う。もう少し手加減が欲しいんだけど。

「ジェライト君、…っ、ねぇ、待って…っ、暗いと怖いよ、ジェライト君、顔見せて…っ」

「…アキラさん」

パッと部屋が明るくなる。目の前にあるジェライト君の瞳は、涙で潤んでいた。

「どうしたの、ジェライト君、なんで泣きそうになってるの、何かあったの?成績で怒られ…るはずないよね、一番だったんだし、中間も期末テストも。ジーク君と、」

「アキラさん、隊長です」

「わかったよ、隊長と、何かあったの?でもまだ帰ってきてないでしょ、僕が出る前に団長室に来たよ」

「アキラさん」

「なぁに、どうしたの、話せるかい?」

ジェライト君は僕を抱いたままソファに移動し座った。潤んだ瞳は今にも涙がこぼれそうだ。

頬にそっと手を当てると、ビクッとして真っ赤な顔になる。すべすべした感触が気持ちよくてそのまま撫でていると、その手を掴まれて指をパクっとされた。

「甘い。アキラさん」

「僕は何もつけてないよ、ジェライト君」

「でも甘いんです」

指を一本ずつ、根元まで含み吸い上げ、舌でねっとり舐めあげる。ジェライト君の美しい顔とあまりにもミスマッチで僕は恥ずかしくなってきた。

「ジェライト君、ねぇ、どうしたのか教えて」

「アキラさん、俺、明日から夏休みなんです」

「うん、そうだね」

「アキラさんは夏休みありますか」

「僕は、8月に2週間とる予定だよ。団長が取る時に合わせるから。何かあるかい?」

「…その時に、アキラさんを全部舐めていいですか」

「…え?」

「俺、たぶん、もう、抑えがきかないんです。今、すごく我慢してるけど、アキラさんを全部俺のものにしたいんです。でも、俺、アキラさんを壊しちゃうかもしれない。自分の欲望のままにしたら、アキラさんを痛くしちゃうかも…っ」

そう言って、ジェライト君は声をあげて泣き出した。ボタボタと涙が落ちて、僕の顔を濡らす。

「ジェライト君」

「…っ、」

「ジェライト君、泣かないで、」

「アキラさん、ごめんなさい、アキラさん…っ」

「なんで謝るの。謝らないで、ジェライト君」

「だって、俺が勝手に、自分のためにアキラさんを若くしちゃって、アキラさんを、」

「あのね、ジェライト君。僕は、そのことについてもう受け入れたんだよ。確かにびっくりしたけど、怒ったり、悲しんだりしてないよ。ジェライト君は、逃がしませんよって言ったのにやっぱり僕を手放すことにしたのかい」

涙をこぼしながらブンブン首を横に振るジェライト君。首もげちゃうよ。

「僕はね。ジェライト君が思ってるように覚悟はできてないかもしれない。だけど、キミと一緒に生きて行くことは決めたんだよ。キミがしたいことは全部受け入れるつもりだよ。だから、心配しないで。自分で自分を責めたりしないで。ね、ジェライト君」

「アキラさん…」

「ジェライト君、さっき、僕の夏休みの間にって言ったね。なんでなの」

「アキラさんが、眠れないかもしれないからです」

「え?」

「俺、アキラさんを眠らせてあげられないかもしれない。だから、休みならいいかなって、」

「じゃあ、今日しようよ」

「え、」

「今日水曜日だけど、団長に言伝てるから。明日と明後日と休みをもらうようにするよ。そしたら、日曜日まで…まぁ、日曜日はゆっくり寝たいけど、今日から4日はできるでしょ。ジェライト君がよければだけど」

「アキラさん、なんで、仕事はいいんですか」

「ジェライト君、僕はね、アホ団長とは違うんだよ。一応それなりに仕事はできるつもりだよ、自惚れではなく」

「アキラさん…っ」

「ね、だから、泣かないで、ジェライト君。痛い時は痛いって言うし。あの時、セックスはしないって言ったけど、」

「アキラさん、セックスってなんなんですか」

「…え?」

「あの時も言ってましたけど、どんなことをするんですか」

「ちなみにジェライト君は、僕に何をしようとしてるの」

「全部…アキラさんの、アキラさんのを舐めて、飲みたいんです。たくさん。あと、俺のをアキラさんのカラダに擦りつけて、出したいんです。たくさん」

「たくさんは無理かな」

「アキラさん、お願いします」

「ご飯は食べていいんだよね」

「もちろんですけど、部屋に運んで食べます」

「なんでかな」

「アキラさんを見せたくないんです」

監禁コースかな。やっぱりジーク君の息子なんだな、ジェライト君。

「アキラさん、セックスって何をするんですか」

僕は説明するのが恥ずかしくて、ボーイズラブのマンガを出した。日本語はわからなくても、絵を見ればわかるだろう。

「『ここを、まずゆっくりほぐしてあげようね、俺の舌で、』」

「わぁーっ」

「アキラさん、どうしました」

「ねぇ、ジェライト君、なんで日本語読めるの」

「アキラさんが使ってた言葉なんですよ。勉強するに決まってるじゃないですか」

「…どうやって勉強したの」

「俺が小さい時に、アキラさん、絵がかわいいからって日本語の絵本出してくれたでしょう」

「なんで漢字読めるの!?」

「これ、読み仮名ついてますよ」

本当だ。

「なるほど、」

ペラペラめくっていくうちに真っ赤になるジェライト君。

「…だからアキラさん、痛いのはイヤだって言ったんですね」

「…はい」

「アキラさん、俺、セックスしたいです」

「ジェ、ジェライト君、」

「でも、今はしません」

「え、」

「俺が20歳になったらします」

します、って宣言された。

「それまで勉強しますから、こういう本をたくさん出してください」

「え、あの、」

「アキラさん、この本で使ってるこういう液体も出してください」

「え、」

「あと、ほら、こういうのも。これから慣らしていけば痛くないんですね。だって、気持ちよさそうな顔してます、この挿れられて」

「わーっ!」

「アキラさん、どうしました」

「あの、ジェライト君、」

ジェライト君はペロリと自分の舌でくちびるを舐めると、「すごく楽しみです。たくさん勉強しますね、アキラさんが痛くないように」と言った。

「僕、やっぱり明日仕事に行くね」

「あ、もう出しちゃいましたよ、団長に」

「え!?」

「逃がしませんよ、アキラさん。大丈夫です、20歳までは挿入しませんから」

僕、月曜日仕事に行けるのかな。
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