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自分が小学校に入学し、同時に直樹が中学生になった時、真が最も心掛けたことは、直樹と会う頻度を減らさないことだった。
出会ったばかりの頃、直樹がこんなことを言っていたからだ。
「このマンションもなぁ、ちょっと前までは遊ぶ友達がいっぱいいたんだ。けど、中学生になって制服を着て学校に行くようになると、なぜか一緒に遊ばなくなっちゃうんだよなぁ。あんなに仲良かったのに、今は他人みたいになったヤツ、いっぱいいるよ」
中学になると遊ばなくなり、他人みたいになる。
冗談じゃない、と真は思った。
大好きな直樹と会えなくなって遊ばなくなるなんて、真にしてみればこの世の終わりと同義である。
だから真は、ことあるごとに直樹の家に遊びに行った。
「直樹くん、学校で初めて漢字を習ったよ。でも、上手く書けないんだ。どうやったらキレイに書けるのか教えて?」
「引き算が難しくて」
「僕、走るのが遅いんだ。どうやったら早く走れるようになるかなぁ」
「新しいゲームを買ってもらったんだ。一緒にやろうよ!」
「リコーダーでドの音が上手く出ないんだよ。僕って体が小さいから手も小さいみたいで、音が漏れちゃんだ。ドーじゃなくってピーってなっちゃうんだよ」
直樹は顔は整っているものの、やや強面といった見た目をしている。しかし、それに反して優しいし、面倒見もかなり良いらしい。中一の直樹からすれば小一の真と遊ぶことなんて面倒なだけだろうに、直樹はどんな時でも自分を慕ってくる真のことを邪険にしたりしなかった。
頼まれれば勉強を教えてくれるし、宿題だって一緒に考えてくれる。難しい問題が解けた時には「頑張ったな」と真の頭を撫でて、笑顔で褒めてくれるのだ。
そんな毎日を過ごしているのだから、真の中の直樹を好きだと想う気持ちは大きくなるばかりである。その想いを、真はことあるごとに言葉や行動で伝えまくった。
勉強を教えてもらう時やゲームをする時は、いつもおねだりして直樹の膝の上に座りたがった。難しい問題が解けて褒めてもらえた時は、直樹の首に腕をまわして抱きつき「直樹くんのおかげだよ」と体をぴったりとくっつけてお礼を言った。出かける時はいつだって手を繋いでもらいたがったし、どんな時でも絶対的な信頼と尊敬と愛情の想いを込めた目で直樹を見た。会った時は必ず「大好き!」と言った。
中学で直樹が部活に入らなかったのは、真にとってかなり都合のいいことだった。直樹は近所の合気道の道場に通っているため、特に部活に入る必要性を感じなかったらしい。
おかげで、直樹は毎日だいたい同じ時間に学校から帰宅した。その時間を見計らって、真は勉強道具やゲームやお菓子を持って、直樹の家のチャイムを鳴らしていたのである。
ちなみにではあるが、直樹が通う合気道の道場に、真は当然のごとく自分も入門した。だから、週に二度は必ず直樹と一緒に道場まで手を繋いで歩けた。帰りも同じように手を繋いで帰るのだが、その時に共通の話題として合気道のことは話すことは、真にとってとても楽しいことだった。
とにかく、なにをしていてもどういう時でも、真にとって直樹と一緒に過ごせる時間は、なにものにも代えがたいほど楽しく、幸せな時間だったのである。
そんな真に対して直樹はと言うと。
そこまで熱烈に自分に懐いてくる真のことが、かわいくてかわいくて仕方なかった。
「僕、直樹くんと一緒にいる時が一番楽しい。直樹くん、大好き!」
そんなことを言いながら、胡坐をかいた膝の中にすっぽりお尻を入れて座り込む真は、安心しきったように背中を預けてくる。たまにそのまま寝てしまうこともあって、そんな時はスース―と下から聞こえてくる真の寝息に、ついつい庇護欲が掻き立てられた。
また、真はスキンシップが好きらしく、ことあるごとに手を繋ぎたがったり、肩や背中など、身体の一部を触れさせていることを好んだが、不思議と面倒臭いやら気持ち悪いやら直樹が思うことはなかった。
初めて出会った時、悲しそうに泣いていた大人しくて引っ込み思案で人見知りの真が、少しずつ元気に明るくなっていく姿が堪らなく嬉しかった。
我儘を言うことがほとんどなく、いつでも直樹の言うことをよくきく真。
だからこそ、たまに言うおねだりは、自分にできることならなんだって叶えてあげたいと思ってしまうのだ。
真のおねだりなんて、言ってしまえば直樹にとって些細なものでしかない。道場に行く時に手を繋ぎたいだとか、読んで面白かった本を教えて欲しいだとか、定期考査のための試験勉強期間でも、ほんの十分でいいから会って話しがしたいだとか、その程度のかわいらしいものばかりだ。
当然、直樹はそれらをすべて叶えてあげた。そのたびに真は、かわいい顔に満面の笑みを浮かべて嬉しそうに喜んだ。その笑顔を見ると、いつだって直樹の心は温かくなる。
いつの間にか真からのお願い事を聞くことは、直樹にとって楽しみのようなものになっていた。どうせ真のおねだりなんて、簡単なものばかりなのだ。だったらすべて受け入れて聞いてあげたい。喜ばせてあげたい。
そう考えることが、直樹の中で当たり前になっていたからかもしれない。キスしてみたいと真から言われた時、悩みはしたものの、そのお願いをつい叶えてしまったのは。
出会ったばかりの頃、直樹がこんなことを言っていたからだ。
「このマンションもなぁ、ちょっと前までは遊ぶ友達がいっぱいいたんだ。けど、中学生になって制服を着て学校に行くようになると、なぜか一緒に遊ばなくなっちゃうんだよなぁ。あんなに仲良かったのに、今は他人みたいになったヤツ、いっぱいいるよ」
中学になると遊ばなくなり、他人みたいになる。
冗談じゃない、と真は思った。
大好きな直樹と会えなくなって遊ばなくなるなんて、真にしてみればこの世の終わりと同義である。
だから真は、ことあるごとに直樹の家に遊びに行った。
「直樹くん、学校で初めて漢字を習ったよ。でも、上手く書けないんだ。どうやったらキレイに書けるのか教えて?」
「引き算が難しくて」
「僕、走るのが遅いんだ。どうやったら早く走れるようになるかなぁ」
「新しいゲームを買ってもらったんだ。一緒にやろうよ!」
「リコーダーでドの音が上手く出ないんだよ。僕って体が小さいから手も小さいみたいで、音が漏れちゃんだ。ドーじゃなくってピーってなっちゃうんだよ」
直樹は顔は整っているものの、やや強面といった見た目をしている。しかし、それに反して優しいし、面倒見もかなり良いらしい。中一の直樹からすれば小一の真と遊ぶことなんて面倒なだけだろうに、直樹はどんな時でも自分を慕ってくる真のことを邪険にしたりしなかった。
頼まれれば勉強を教えてくれるし、宿題だって一緒に考えてくれる。難しい問題が解けた時には「頑張ったな」と真の頭を撫でて、笑顔で褒めてくれるのだ。
そんな毎日を過ごしているのだから、真の中の直樹を好きだと想う気持ちは大きくなるばかりである。その想いを、真はことあるごとに言葉や行動で伝えまくった。
勉強を教えてもらう時やゲームをする時は、いつもおねだりして直樹の膝の上に座りたがった。難しい問題が解けて褒めてもらえた時は、直樹の首に腕をまわして抱きつき「直樹くんのおかげだよ」と体をぴったりとくっつけてお礼を言った。出かける時はいつだって手を繋いでもらいたがったし、どんな時でも絶対的な信頼と尊敬と愛情の想いを込めた目で直樹を見た。会った時は必ず「大好き!」と言った。
中学で直樹が部活に入らなかったのは、真にとってかなり都合のいいことだった。直樹は近所の合気道の道場に通っているため、特に部活に入る必要性を感じなかったらしい。
おかげで、直樹は毎日だいたい同じ時間に学校から帰宅した。その時間を見計らって、真は勉強道具やゲームやお菓子を持って、直樹の家のチャイムを鳴らしていたのである。
ちなみにではあるが、直樹が通う合気道の道場に、真は当然のごとく自分も入門した。だから、週に二度は必ず直樹と一緒に道場まで手を繋いで歩けた。帰りも同じように手を繋いで帰るのだが、その時に共通の話題として合気道のことは話すことは、真にとってとても楽しいことだった。
とにかく、なにをしていてもどういう時でも、真にとって直樹と一緒に過ごせる時間は、なにものにも代えがたいほど楽しく、幸せな時間だったのである。
そんな真に対して直樹はと言うと。
そこまで熱烈に自分に懐いてくる真のことが、かわいくてかわいくて仕方なかった。
「僕、直樹くんと一緒にいる時が一番楽しい。直樹くん、大好き!」
そんなことを言いながら、胡坐をかいた膝の中にすっぽりお尻を入れて座り込む真は、安心しきったように背中を預けてくる。たまにそのまま寝てしまうこともあって、そんな時はスース―と下から聞こえてくる真の寝息に、ついつい庇護欲が掻き立てられた。
また、真はスキンシップが好きらしく、ことあるごとに手を繋ぎたがったり、肩や背中など、身体の一部を触れさせていることを好んだが、不思議と面倒臭いやら気持ち悪いやら直樹が思うことはなかった。
初めて出会った時、悲しそうに泣いていた大人しくて引っ込み思案で人見知りの真が、少しずつ元気に明るくなっていく姿が堪らなく嬉しかった。
我儘を言うことがほとんどなく、いつでも直樹の言うことをよくきく真。
だからこそ、たまに言うおねだりは、自分にできることならなんだって叶えてあげたいと思ってしまうのだ。
真のおねだりなんて、言ってしまえば直樹にとって些細なものでしかない。道場に行く時に手を繋ぎたいだとか、読んで面白かった本を教えて欲しいだとか、定期考査のための試験勉強期間でも、ほんの十分でいいから会って話しがしたいだとか、その程度のかわいらしいものばかりだ。
当然、直樹はそれらをすべて叶えてあげた。そのたびに真は、かわいい顔に満面の笑みを浮かべて嬉しそうに喜んだ。その笑顔を見ると、いつだって直樹の心は温かくなる。
いつの間にか真からのお願い事を聞くことは、直樹にとって楽しみのようなものになっていた。どうせ真のおねだりなんて、簡単なものばかりなのだ。だったらすべて受け入れて聞いてあげたい。喜ばせてあげたい。
そう考えることが、直樹の中で当たり前になっていたからかもしれない。キスしてみたいと真から言われた時、悩みはしたものの、そのお願いをつい叶えてしまったのは。
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