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273 かわいいおみみ
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村を出て四日目の朝。
空は薄っすらと曇っていて、いつもよりも肌寒い。
幌の隙間から入ってくる風もひんやりとしていた。
「ちゃむぃねぇ~」
「ゆぅくん、かぜひいちゃう。これきて?」
「ん! えてぃちゃん、ありぁと!」
「うん!」
馬車の中では、ユウマに猫耳ポンチョを着せるレティちゃんの姿が。
アイラさんお手製のふわふわのポンチョ。暖かいのか、ユウマもにっこり笑みを浮かべる。僕もコートを持ってるけど、猫耳なんだよなぁ……。
「まぁまぁまぁ……! 皆とっても可愛いわ!」
「とっても、あったかいです!」
「ね! ぽかぽかする!」
オリビアさんも耳付きポンチョを着たハルトたちを見てご満悦。
メフィストも兎耳ロンパースを着てぬくぬくだ。
「クルルル……?」
すると、ドラゴンがポンチョを着たユウマを見て首を傾げている。
「どらごんしゃん、どぅちたの~?」
「……あ、もしかしたらユウマに耳が生えてビックリしたんじゃない?」
「おみみ~?」
ユウマはフードに着いた黒い猫耳を触ると、何かを思い付いた様にハイハイしながらドラゴンの前に移動する。僕たちは何をするんだろうと首を傾げながらそれを見ていた。
そしてドラゴンの前に座ったユウマが勢いよく猫耳フードを取ると、ドラゴンは驚いたように目を見開く。そしてユウマがまたフードを被ると、今度は耳らしきものを立てて驚いていた。
「んふふ~! いいでちょ! おみみ、にぃにとおしょろぃなの!」
「クルルル!」
ドラゴンは耳が生えたユウマが不思議なのか、鼻先でクンクンとユウマの匂いを嗅いでいる。擽ったそうにきゃあきゃあと身じろぐユウマに、オリビアさんはにっこり破顔していた。
*****
「あら……、寝ちゃったみたいね……?」
「ホントですね……」
ユウマはドラゴンのお腹を背もたれにして絵本を読んでいたけど、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。ドラゴンもユウマがいて温かいのか、ユウマを包む様に丸まって寝ていた。
「おばぁちゃん、めふぃくんも、ねちゃいました……」
「うふふ、ホントねぇ。ハルトちゃんもレティちゃんも寝る? まだ停まりそうにないし……」
「ん~ん。ぼく、おべんきょします」
「わたしも。もうちょっと」
「あら、頑張るのね?」
「ね、れてぃちゃん!」
「ね!」
ハルトとレティちゃんは、ユウマのスキルの事を知ってからカトエール語の勉強を始めた。……と言っても、教えてくれるのはユウマ。それにユウマみたいに完全に読める訳ではないし、たまに三人で、ん~? と首を傾げているんだけど。
「おばあちゃんも簡単な挨拶しか話せないのよねぇ……。あ、そうだわ! カビーアさんに会ったら少し教えてもらおうかしら?」
「かびーあさん! ぼく、かりー、たべたいです!」
「あぁ~! 僕も食べたいなぁ~!」
「やだ、言わないでぇ~! 私も食べたくなってきちゃった……」
オリビアさんとハルトと三人でカリーの味を思い出していると、ふと隣から視線を感じる。
「かびーあさん……?」
首を傾げ、だぁれ? と尋ねてくるレティちゃん。
あ、そう言えばレティちゃんはまだ会った事無かったっけ……?
「うん、カビーアさんってね、隣の国の行商人さん。美味しい調味料を売ってくれるんだよ。次の行商市にも来るはずだから、レティちゃんも一緒に行こうね?」
「ぎょうしょういち……? うん! わたしもいきたい!」
「その人の作るカリーがすっごく美味しくってね、お店にいっぱいお客さんが並んだんだよ」
「あの時は大変だったわね~! でも楽しかったわ!」
あの時は列を捌くのに必死で、結局カリーは食べ損なっちゃったんだよなぁ……。だけど皆、美味しそうに食べてて嬉しかったなぁ~!
「……おにぃちゃんは、おみせしないの?」
「お店?」
「うん。ぎょうしょういち……。おみせ、だすんでしょ?」
だったらおにぃちゃんと、おばぁちゃんは?
そう訊かれて、僕もオリビアさんも顔を見合わせる。
そんな事、考えた事も無かったし……。
「さんどいっちとか、くっきーとか……。そとでもたべれるの、いっぱいあるよ?」
レティちゃんに言われて、確かに……、とオリビアさんと二人で納得してしまった。確かに屋台は楽しそう……。
だけどお店の営業もあるしなぁ……。それに、行商市に行ったら買い物もしたいし……。
「……ちょっと、面白そうねぇ……」
「え、オリビアさん?」
オリビアさんはスヤスヤ眠るメフィストを抱えながら、何かを考えている様子。
レティちゃんもハルトも、ワクワクしながらオリビアさんを見つめていた。
「でも~、次のには間に合わないかも知れないから、もし出店するなら色々調べなきゃいけないわね……!」
「ほんとう? わたし、おてつだいしたい!」
「ぼくも! したいです!」
「ふふ! 楽しみな事、また増えちゃったわね?」
「「うん!」」
何やら、もう決定している気がしないでもないんだけど……?
「ユイトくんも! 楽しそうでしょう?」
「そ、そうですね……!」
……うん、僕も参加だよね。
だけどレティちゃんもハルトも楽しそうだし、考えてみるのもありかも……。
王都から帰っても、まだまだ楽しい事がありそうだな、なんて。
僕も今のうちから、何がいいか考えておこうかな。
空は薄っすらと曇っていて、いつもよりも肌寒い。
幌の隙間から入ってくる風もひんやりとしていた。
「ちゃむぃねぇ~」
「ゆぅくん、かぜひいちゃう。これきて?」
「ん! えてぃちゃん、ありぁと!」
「うん!」
馬車の中では、ユウマに猫耳ポンチョを着せるレティちゃんの姿が。
アイラさんお手製のふわふわのポンチョ。暖かいのか、ユウマもにっこり笑みを浮かべる。僕もコートを持ってるけど、猫耳なんだよなぁ……。
「まぁまぁまぁ……! 皆とっても可愛いわ!」
「とっても、あったかいです!」
「ね! ぽかぽかする!」
オリビアさんも耳付きポンチョを着たハルトたちを見てご満悦。
メフィストも兎耳ロンパースを着てぬくぬくだ。
「クルルル……?」
すると、ドラゴンがポンチョを着たユウマを見て首を傾げている。
「どらごんしゃん、どぅちたの~?」
「……あ、もしかしたらユウマに耳が生えてビックリしたんじゃない?」
「おみみ~?」
ユウマはフードに着いた黒い猫耳を触ると、何かを思い付いた様にハイハイしながらドラゴンの前に移動する。僕たちは何をするんだろうと首を傾げながらそれを見ていた。
そしてドラゴンの前に座ったユウマが勢いよく猫耳フードを取ると、ドラゴンは驚いたように目を見開く。そしてユウマがまたフードを被ると、今度は耳らしきものを立てて驚いていた。
「んふふ~! いいでちょ! おみみ、にぃにとおしょろぃなの!」
「クルルル!」
ドラゴンは耳が生えたユウマが不思議なのか、鼻先でクンクンとユウマの匂いを嗅いでいる。擽ったそうにきゃあきゃあと身じろぐユウマに、オリビアさんはにっこり破顔していた。
*****
「あら……、寝ちゃったみたいね……?」
「ホントですね……」
ユウマはドラゴンのお腹を背もたれにして絵本を読んでいたけど、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。ドラゴンもユウマがいて温かいのか、ユウマを包む様に丸まって寝ていた。
「おばぁちゃん、めふぃくんも、ねちゃいました……」
「うふふ、ホントねぇ。ハルトちゃんもレティちゃんも寝る? まだ停まりそうにないし……」
「ん~ん。ぼく、おべんきょします」
「わたしも。もうちょっと」
「あら、頑張るのね?」
「ね、れてぃちゃん!」
「ね!」
ハルトとレティちゃんは、ユウマのスキルの事を知ってからカトエール語の勉強を始めた。……と言っても、教えてくれるのはユウマ。それにユウマみたいに完全に読める訳ではないし、たまに三人で、ん~? と首を傾げているんだけど。
「おばあちゃんも簡単な挨拶しか話せないのよねぇ……。あ、そうだわ! カビーアさんに会ったら少し教えてもらおうかしら?」
「かびーあさん! ぼく、かりー、たべたいです!」
「あぁ~! 僕も食べたいなぁ~!」
「やだ、言わないでぇ~! 私も食べたくなってきちゃった……」
オリビアさんとハルトと三人でカリーの味を思い出していると、ふと隣から視線を感じる。
「かびーあさん……?」
首を傾げ、だぁれ? と尋ねてくるレティちゃん。
あ、そう言えばレティちゃんはまだ会った事無かったっけ……?
「うん、カビーアさんってね、隣の国の行商人さん。美味しい調味料を売ってくれるんだよ。次の行商市にも来るはずだから、レティちゃんも一緒に行こうね?」
「ぎょうしょういち……? うん! わたしもいきたい!」
「その人の作るカリーがすっごく美味しくってね、お店にいっぱいお客さんが並んだんだよ」
「あの時は大変だったわね~! でも楽しかったわ!」
あの時は列を捌くのに必死で、結局カリーは食べ損なっちゃったんだよなぁ……。だけど皆、美味しそうに食べてて嬉しかったなぁ~!
「……おにぃちゃんは、おみせしないの?」
「お店?」
「うん。ぎょうしょういち……。おみせ、だすんでしょ?」
だったらおにぃちゃんと、おばぁちゃんは?
そう訊かれて、僕もオリビアさんも顔を見合わせる。
そんな事、考えた事も無かったし……。
「さんどいっちとか、くっきーとか……。そとでもたべれるの、いっぱいあるよ?」
レティちゃんに言われて、確かに……、とオリビアさんと二人で納得してしまった。確かに屋台は楽しそう……。
だけどお店の営業もあるしなぁ……。それに、行商市に行ったら買い物もしたいし……。
「……ちょっと、面白そうねぇ……」
「え、オリビアさん?」
オリビアさんはスヤスヤ眠るメフィストを抱えながら、何かを考えている様子。
レティちゃんもハルトも、ワクワクしながらオリビアさんを見つめていた。
「でも~、次のには間に合わないかも知れないから、もし出店するなら色々調べなきゃいけないわね……!」
「ほんとう? わたし、おてつだいしたい!」
「ぼくも! したいです!」
「ふふ! 楽しみな事、また増えちゃったわね?」
「「うん!」」
何やら、もう決定している気がしないでもないんだけど……?
「ユイトくんも! 楽しそうでしょう?」
「そ、そうですね……!」
……うん、僕も参加だよね。
だけどレティちゃんもハルトも楽しそうだし、考えてみるのもありかも……。
王都から帰っても、まだまだ楽しい事がありそうだな、なんて。
僕も今のうちから、何がいいか考えておこうかな。
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