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成人編
勇者だって怒ります!①
しおりを挟むオレオールに教えて貰いながら、アントニオ王子の元へと駆け続ける。森の中は魔獣が生息しているから危険だけれど、なぜだか襲われることはなかった。
境界線近くまで辿り着いた頃には、夜が明けて朝日が上りきっていた。目的地らしき場所が見えてきて、肩を上下させながら息を整える。沢山いる衛兵の一人声をかけると、剣を向けられてしまった。
「ここで何をしている!」
「アントニオ王子に会いに来たんだ」
「何者だ!答えろ!!」
騒ぎを聞きつけて、沢山の衛兵が集まり、僕を囲う。一度深呼吸をすると、剣と盾を見えるように前に突き出し、勇者だと名乗った。
「勇者だと!?」
「死んだのではなかったのか」
「しかし……あの剣と盾は……」
衛兵達だけでは判断できないのか、困惑や驚きが綯い交ぜになった声が飛び交う。数分の間、衛兵達の声で溢れていたその場に、突如静寂が訪れて不思議に思う。衛兵の波を掻き分けて、誰かがこちらへと歩るいてくるのが見えた。
「これはこれは、十年もの間、行方知れずだった勇者様がわざわざこの場所に足を運んで下さるとは」
白髪混じりの黒髪に、皺の深く刻まれた顔をした初老の男性が話しかけてきた。爬虫類を思わせる鋭い黒目は、どこか淀んだ印象をうける。
「誰?」
「これは失礼。私は宰相を務めているサリバンという者です。貴方が勇者ということは、その盾と剣が証明しているようですね。ささ、こちらへ。アントニオ王子の元へご案内致しましょう」
胡散臭い雰囲気を纏うサリバンに着いていくのは気が引ける。でも、アントニオ王子に会うには彼に着いていくしかない。頷けば、サリバンが再び二手に分かれた衛兵の間を歩いていく。数歩離れた距離を着いていくと、一番大きなテントの中に入るように促される。
一度立ち止まると、腰に挿しているオレオールを握りしめて中へと足を踏み入れた。思ったよりもしっかりとした内装のそこは、王族の住居らしくタペストリーや獣の頭の剥製などで豪華に飾り付けされている。その真ん中に置かれた椅子に、アントニオ王子が退屈そうに頬杖を着いて腰掛けていた。
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