ヴェスパラスト大陸記

揚惇命

文字の大きさ
上 下
54 / 71
最終章 真実をその手に掴み悪を討て

反乱した魔物の第二陣

しおりを挟む
 オズマリア帝国の王オズモンドこと現魔王マリアナの父デイモンとデイモンを信奉する魔物たちの第二陣を任されたのは、親友のシープスと兄貴と慕うゴーブを殺されたサイクロプスのサイプスである。そして付き従うのはナーガのナーガロイ・そしてインプ・コカトリスである。第二陣を迎え撃っていたのは、元傭兵で現魔王マリアナに忠誠を誓った土蜘蛛のスパーダ・四天王でありカイルの女となったサキュバスのリリス・ラミアのクスネ・ハーピーのコノハである。
「全くやれやれだ。タタンの奴は間に合わなかったか。あの腕前なら参戦してくれると助かったんだがな。俺の妻は、情報収集に徹してて、マリアナ様は一度魔王城に戻られたのだったな。この場は俺たちでなんとかするぞ」
「新参者が仕切らないでくれるかしら。この場は、この四天王の1人であるリリスが仕切るんだ・か・ら」
「力でいえばスパーダ殿が総大将を務め、軍師としてリリス様が率いるのが良いので無いですか?」
「うんうん。クスネさんの言う通り、リリスちゃんは参謀のが良いよ~」
「えっそう。それならスパーダ、ちゃんと総大将やってよね」
「なんで、俺が怒られるのかわからんが、敵の情報だが総大将は俺がこの前コテンパンにしてやったサイクロプスだ。軍師をインプが務め。厄介なコカトリスと力のあるナーガが先鋒ってところだな」
「ちょっとちょっと、スパーダ。全部言わないでよ。私が軍師なんだから」
「リリス様、敵の情報を聞いて策を考えるのが軍師ですわよ。スパーダ殿は、敵の情報しか言ってませんよ。クスクス」
「リリスちゃん、しっかりして~」
「えっ?うん。わかってる」
「大丈夫だろうか、、、、この面子」
 女3人の呑気さに自分が頑張るしか無いと奮起するスパーダである。その一方で攻めるサイクロプスのサイプスは、デイモンから新たな力を授かっていた。
「あの土蜘蛛は絶対に許さん。その次は、ゴーブの兄貴を殺したあの雪女だ。この俺の新たな力、身体を金にする前回のをさらに強くしてもらい、身体を白金にし、より硬くなった。これならあの土蜘蛛野郎も俺に攻撃を通すことなどできん。マテリアルチェンジ、この物質を変化させる力を持って、必ず我が親友シープスの仇をとらせてもらうぞ」
「自分語りは程々にしてもらえるとありがたいです。そもそも、貴方は総大将、勝手に動かれては困る。俺の指示に従え武一辺倒の雑魚」
「貴様、デイモン様から信頼されてるからと調子に乗るなよ。インプル」
「フン。ゴーブの馬鹿に知恵を授けたところで所詮馬鹿は馬鹿、治るはずもない。宝の持ち腐れという奴だ。智慧の冠まで敵に奪われて、計画の邪魔をするだけの馬鹿だ。それにシープスだったか。雪女直属の諜報部隊蜘蛛女衆まで逃したらしいじゃねぇか。で、雪女と土蜘蛛に殺された。死んで当然だ。役目を果たしきれなかったんだからな」
「キシャシャシャシャ。それぐらいにしておいてやれ。あの人間の男のせいでここまで雪女側の魔物が結束したのだ。個人行動をしていたシープスが遅れを取ったのも仕方あるまい。酷いのは、雪女を襲撃したゴーブの方がよっぽど馬鹿であろうよ」
「やめよ。インプルもナーガロイも言い過ぎであろう。インプル、貴様は四天王であるサキュバスのリリスよりも自分が優れていると思い込みたいだけであろう。それにナーガロイよ。お前がラミアを懐柔できて居れば、今我らは有利になったのではないか。サイプスを虐めるのはお門違いであろう。そのようなことをして隊列を乱すお前らこそ馬鹿の極みよ」
「コカットス様、申し訳ありません」
「デイモン様の側近を務めておられたコカットス様の協力を得られているのだ。負けるはずも無かったですなぁ」
「だと、良いのじゃがなぁ」
 コカットスは懸念していた。傭兵稼業を生業としていた土蜘蛛のスパーダは、歴戦の猛者であり、策略家でもある。知力も武力も超一流。しかし、好きな女が絡むと凡人以下になる。かつて、デイモンが懐柔しようと何度も勧誘したが断った。そんな男がマリアナに忠誠を誓っているのである。
「お前が仕えるに値すると認めた現魔王と前魔王に縛られた我ら、どちらが勝つのであろうな」
「何か言いましたかコカットス様」
「なんでもないわい。それよりもインプルよ。策は滞りなくせよ」
「勿論です。先ずは、小手調べと行こう。ナーガロイ、ラミア共を駆逐してやれ」
「キシャシャシャシャ。任せておけ。俺のこのヘビーホッグの力を使って、殺してやるぜ」
 ナーガロイがナーガを率いて、ラミアを急襲する。
「流石、スパーダ殿ですね。アラクミーが絡まないとその知が冴え渡っていますね。ナーガロイの力は霧を生み出す能力よ。我が子たちよ。スパーダ殿からの策を伝える。交互左右に腕を組み組んだ腕に槍を持ち目の前に突き出せとのことです」
「はっママ上」
 この戦場を見つめるスパーダの目には、敵の行動が手に取るようにわかっていた。歴戦の猛者であり、全滅した土蜘蛛の唯一の生き残り、自分が死ねば土蜘蛛は滅ぶ。だからこそ、彼は死なないために武を磨き。効率よく倒すために策を磨いた。齢150歳を超えるがその武も知も冴え渡っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...