信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
133 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる

133話 ルルーニ進軍

しおりを挟む
 サブロー・ハインリッヒがスエモリ城へと向かったとの報告を受けたルルーニ・カイロは、ゼンショウジ砦を捨て、ショバタ城へと進軍を進める。
 その目的は、ルルーニ・カイロが恋しているマーガレット・ハインリッヒにより、まもなくレーニン・ガロリングが討ち取られ、それがサブロー・ハインリッヒの懐刀であるロー・レイヴァンドの仕業であることを聞き、及び腰になるであろう反乱貴族を決起させ、ショバタ城の後方にあるワシヅ砦へと向かわせるためである。
 ルルーニ・カイロは、自分と共に生きてくれることを誓ってくれたマーガレット・ハインリッヒのため、いやこのオダ郡のために反乱貴族のフリをしたピエロを演じる。
 それこそ、オダ郡を守るためにだけに何度も裏切りを重ねてきたカイロ家の真骨頂である。

「カイロ卿、レーニン様に何度も動くように言われても今まで動かなかったのにどうしてこのタイミングなのだ!」

 ルルーニ・カイロに詰め寄るこの男は、レーニン・ガロリングに心酔している反乱貴族の1人、ワメク・イヌ男爵である。

「イヌ卿、マーガレット様が待っていた好機がやってきたと説明したはずですが?」

「好機かどうかを決めるのは、レーニン様でありマーガレットではない!」

「ハァ。この反サブロー連合の盟主はマーガレット様でありガロリング卿ではありませんよ」

「それは表向きであって、全てを決めるのはレーニン様だ。女のマーガレットは、それに従っていれば良いのだ!」

「それではまるでマーガレット様がお飾りのように聞こえますが」

「その通りだが何か?」

「言葉には気をつけられた方が良いですよイヌ卿。そのような言い方を私以外にはなさらないことです。この連合には、マーガレット様が上に立つから参加した貴族の方も多い」

「フン。おどしのつもりか?レーニン様が上だと言い切るのなら出て行くぞと」

「そんなことは言ってませんよ」

「相変わらず澄ました顔して俺を苛立たせる男だ」

「それは失礼しました。ですがこういう顔ですので悪しからず。それにガロリング卿に従っていたら今よりもっと酷い戦となっていたはずですが」

「今の方がよっぽど酷いであろうが!ハルト卿は、レーニン様の思い通りにならないクソガキ如きに討ち取られ、マルネキャッスルにナルミキャッスルだけでなく堅牢と謳われたオオタカキャッスルまで、クソガキ如きの手に落ちたのだぞ」

「そうやって、ハインリッヒ卿のことをクソガキなどと侮った貴方達に問題があるのでは?マーガレット様は、ハインリッヒ卿のことを油断しないようにと再三に渡って伝えたはずですが」

「フン。ああ言えば。こう良いよって。だからお前はムカつくのだ。俺より立場が上であることも気に食わん!」

「イヌ卿、立場が上だと思っているのなら従うべきではありませんか?」

「フン。俺は俺で勝手にやらせてもらう。ここから絶対に動かんからな」

「わかりました。構いませんよ」

 こうして、ルルーニ・カイロは、時期を見計らって、ショバタ城を強襲。
 兵も食糧も置いてないショバタ城は、無人であり簡単に落城させることに成功する。
 するとゼンショウジ砦から血相を変えて、ワメク・イヌがショバタ城へとやってきた。

「カイロ卿、貴様はこの大変な時に何をしておったのだ馬鹿者!このような城、今となっては不必要だ!直ぐに下がれ!アヅチキャッスルと連携して、クソガキに対するのだ」

「イヌ卿、そんなに顔色を変えてどうされたのです?」

「お前は何も知らんのか!スエモリキャッスルにて、我らが主君、レーニン様がクソガキの教育係のジジイ如きに討ち取られたのだ!だが、マーガレットな奴が直ぐに取り返したらしく、クソガキがこちらに逃げ帰ってくるそうだ」

 ワメク・イヌは、ロー・レイヴァンドのことをジジイなどと呼んでいるが確かに老け顔ではあるが歳はまだ30代後半であり、ジジイなどと言われる歳ではない。

「それなら、尚のことここを抑えておくほうが良いでしょう?」

「お前は馬鹿か!馬鹿なのか!お前程度で落とせる平凡なキャッスルにクソガキを閉じ込めたほうが良いに決まってるだろうが!」

「ならもっと平凡な後方に造られたキャッスルに行かせるほうが良いでしょう」

「やっぱりお前は馬鹿か!馬鹿なのか!後方のキャッスルはどんなカラクリか知らんが連合軍を撃退している。こんな安っぽいキャッスルより後方のキャッスルがクソガキの本命なのは確かだろうが!わかったらとっとと言うことを聞け!」

 そこにサブロー・ハインリッヒの動向を探っていたであろう伝令が駆けつける。

「報告します!サブロー・ハインリッヒは、真っ直ぐに後方のキャッスルを目指し、入城したとのこと!」

「馬鹿な!?レーニン様が討ち取られたとの報告を聞いたのは昨日のことだ。いくらなんでも早い早すぎる。その話に、間違いないのか?」

「はっ!ロー・レイヴァンドに抱えられ、僅かに残った2千程の兵と共に入城するのをこの目でしかと」

「こうなってはやむを得まい。カイロ卿、直ぐに全軍で、後方のキャッスルを急襲する。良いな?」

 ワメク・イヌの提案は、ルルーニ・カイロにとっても願ったり叶ったりである。

「良いでしょう。ここはイヌ卿の顔を立てることにしましょう」

「フン。最初から素直に従っていればよかったのだ」

 こうして、ワシヅ砦へと進軍を開始することとなったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...