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2章 オダ郡を一つにまとめる
45話 押し寄せる人の波
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反サブロー連合の発足を知って、数日後サブロー・ハインリッヒの居城では、皆口々にサブロー様のために戦いますと民が押し寄せてきたのだ。
話は数日前に戻る。
サブローの居城がある大広場では、民たちが世間話をしていた。
「おい、聞いたか。サブロー様にクーデターを起こそうって輩がいるそうだぞ」
「聞いた聞いた。サブロー様の母君を担いだんだろ確か?」
「いや、サブロー様の祖父に当たるガロリング卿が裏で手を回してるとかなんとか」
「サブロー様は大丈夫かね?」
「タルカとナバルの連合軍を相手取って完封したって聞くし、腐敗した貴族の反乱とか。そもそも成功しねぇだろ」
「でもな。こうやって広場で自由に商売させてもらってる俺たちが恩恵に預かるだけってのもな」
「そういや。マルケス商会がサブロー様のために兵を派遣するって聞いたぞ」
「流石、俺たち商会の希望だよな」
「話は聞かせてもらったでごわす。今、次男坊組合ってのを作って、有志を集めてるでごわす。サブロー様のお陰で暮らしが豊かになりつつあるでごわす。しかし、長男は跡取りとして必要でごわす。そこで、我ら次男坊組合の出番というわけでごわす。どうでごわすか?サブロー様のために一緒に戦わないでごわすか?」
「おっおぅ。ていうかにいちゃん。ずいぶん独特な言葉とガタイの良さだな。その組合を作る前は、何してたんだ?」
「なんのなんの、ただの農民でごわす。毎日、畑を耕して、土をいじっていただけでごわすよ」
「そ、そうか。でも、確かにな。うちの次男坊でも役に立つならサブロー様のためって言いてぇのは山々なんだけどな。流石に戦争だろ。死ぬかとしれないところに息子を行かせるのはな」
「そうでごわすか。残念でごわすが仕方ないでごわすな」
「父ちゃん、俺行くよ。前は、この辺りはグラン商会が幅を効かせて、他の商会を弾圧してた。それに抗ってたのがマルケス商会だ。彼らが矢面に立ってくれたからこそ。僕たちの暮らしは、慎ましくも守られていた。そして、彼ら悪徳商人を追い出して、平和をもたらしてくれたのは、サブロー様だよ。恩を返さないのに商売はしたいだなんて、我儘だよ」
「そうか。お前が決めたなら何も言えねぇな。でもよ。父親として、死ぬかもしれない所に送ることができないって気持ちは理解してくれねぇか」
「ここで手を貸さなくてサブロー様が万が一負けたらこの平和が崩れるんだよ。そんなの俺嫌だよ。父ちゃんも母ちゃんも兄ちゃんもくたびれた表情からやっと解放されたんだ」
「決意は固いみてぇだな。全く誰に似たんだか。行くからには、絶対に勝手なことして死ぬんじゃねぇぞ。このにいちゃんの言うことを聞いて、しっかり務めを果たしてこい」
「父ちゃん!ありがとう。俺、頑張るよ。宜しくお願いします。ガタイの良い人」
「ガタイの良い人でごわすか。それいいでごわすな。そう名乗るでごわすよ。元より名前なんてないでごわすからな」
「そうなの?」
「商人の人や貴族の人みたく、正式な名前があるわけでないでごわすからな。まぁ家族からは、いつもタボっとした外套を羽織ってるからかポンチョと呼ばれているでごわすが。まぁそんな感じで渾名はあるでごわすが正式な名前はないでごわすよ」
「僕たちって農民さんよりは恵まれてたんだね。農民さんが作った食べ物を売ってるのに、その農民さんに決まった名前が無いなんて、不平等だよ」
「それが今までまかり通っていたでごわす。だからサブロー様には、期待してるのでごわすよ。サブロー様にクーデターを起こそうとするやつを見過ごせないでごわす」
「そうだね。俺も頑張るよ」
「頼りにしているでごわす。ようこそ次男坊組合へ、、、、」
「あっ俺の名前は、セル・マーケット。商人らしい名前でしょ」
「そうでごわすな。セル殿のこと歓迎するでごわすよ」
動物を狩るハンターを生業としている集落でもサブロー様に手を貸すべきだと立ち上がった男がいた。
「頭領、動物を狩ることも確かに大事だ。だが、今この時俺たちの生活を良くしてくれたサブロー様に手を貸さないって選択はちょっとあり得ないんじゃねぇのか?」
「話は済んだはずだよ。アタイらは、民のために動物の肉を安価で市場に下ろす。それで十分貢献してるだろうってね」
「それとこれとは話が違うだろう。頭領、確かに戦争だ。人を射ることに抵抗があるのはわかる。でもよ。オダ郡には、弓を専門的に扱える奴は少ないって聞く。その点、俺たちは弓の扱いにかけては長けてる。俺たちが手を貸すことによって、救われる人の命ってのもあるんじゃねぇのか?」
「スナイプ、アンタの言い分もわかる。でもアタイの考えは変わらないよ。どうしてもって言うなら、ここで有志を募って行きな。個人の判断にアタイは任せるさ」
「頭領、感謝する。必ず生きて帰るって約束するよ母さん」
「全く、親を困らせるなんて、とんだ親不孝者だよアンタは。サブロー様のお陰で、商人からのピンハネも無くなった。アタイらの暮らしが良くなってのも確かさ。それに協力したいって有志が居るならアタイは止めないよ。それにアンタの弓の腕前はこの集落で随一だ。遅れを取ることはないだろうさ。気張ってきな」
「あぁ、サブロー様にスナイプありって轟かせてやる」
「大きく出たもんだね。誰に似たんだか」
こうして、いろんな集落や街からサブローが治める直轄地の居城に民が押し寄せたのである。
その数、千。
この数を少ないと思うか多いと思うか。
千人もの民兵が死ぬことも厭わずサブローのため駆けつけたのだ。
それも身分も全く異なる人たちがサブローのためにと心を一つにして集まったのだ。
これは、民からサブローが絶大な信頼を得ている証拠である。
寄せ集めと侮ることなかれ。
話は数日前に戻る。
サブローの居城がある大広場では、民たちが世間話をしていた。
「おい、聞いたか。サブロー様にクーデターを起こそうって輩がいるそうだぞ」
「聞いた聞いた。サブロー様の母君を担いだんだろ確か?」
「いや、サブロー様の祖父に当たるガロリング卿が裏で手を回してるとかなんとか」
「サブロー様は大丈夫かね?」
「タルカとナバルの連合軍を相手取って完封したって聞くし、腐敗した貴族の反乱とか。そもそも成功しねぇだろ」
「でもな。こうやって広場で自由に商売させてもらってる俺たちが恩恵に預かるだけってのもな」
「そういや。マルケス商会がサブロー様のために兵を派遣するって聞いたぞ」
「流石、俺たち商会の希望だよな」
「話は聞かせてもらったでごわす。今、次男坊組合ってのを作って、有志を集めてるでごわす。サブロー様のお陰で暮らしが豊かになりつつあるでごわす。しかし、長男は跡取りとして必要でごわす。そこで、我ら次男坊組合の出番というわけでごわす。どうでごわすか?サブロー様のために一緒に戦わないでごわすか?」
「おっおぅ。ていうかにいちゃん。ずいぶん独特な言葉とガタイの良さだな。その組合を作る前は、何してたんだ?」
「なんのなんの、ただの農民でごわす。毎日、畑を耕して、土をいじっていただけでごわすよ」
「そ、そうか。でも、確かにな。うちの次男坊でも役に立つならサブロー様のためって言いてぇのは山々なんだけどな。流石に戦争だろ。死ぬかとしれないところに息子を行かせるのはな」
「そうでごわすか。残念でごわすが仕方ないでごわすな」
「父ちゃん、俺行くよ。前は、この辺りはグラン商会が幅を効かせて、他の商会を弾圧してた。それに抗ってたのがマルケス商会だ。彼らが矢面に立ってくれたからこそ。僕たちの暮らしは、慎ましくも守られていた。そして、彼ら悪徳商人を追い出して、平和をもたらしてくれたのは、サブロー様だよ。恩を返さないのに商売はしたいだなんて、我儘だよ」
「そうか。お前が決めたなら何も言えねぇな。でもよ。父親として、死ぬかもしれない所に送ることができないって気持ちは理解してくれねぇか」
「ここで手を貸さなくてサブロー様が万が一負けたらこの平和が崩れるんだよ。そんなの俺嫌だよ。父ちゃんも母ちゃんも兄ちゃんもくたびれた表情からやっと解放されたんだ」
「決意は固いみてぇだな。全く誰に似たんだか。行くからには、絶対に勝手なことして死ぬんじゃねぇぞ。このにいちゃんの言うことを聞いて、しっかり務めを果たしてこい」
「父ちゃん!ありがとう。俺、頑張るよ。宜しくお願いします。ガタイの良い人」
「ガタイの良い人でごわすか。それいいでごわすな。そう名乗るでごわすよ。元より名前なんてないでごわすからな」
「そうなの?」
「商人の人や貴族の人みたく、正式な名前があるわけでないでごわすからな。まぁ家族からは、いつもタボっとした外套を羽織ってるからかポンチョと呼ばれているでごわすが。まぁそんな感じで渾名はあるでごわすが正式な名前はないでごわすよ」
「僕たちって農民さんよりは恵まれてたんだね。農民さんが作った食べ物を売ってるのに、その農民さんに決まった名前が無いなんて、不平等だよ」
「それが今までまかり通っていたでごわす。だからサブロー様には、期待してるのでごわすよ。サブロー様にクーデターを起こそうとするやつを見過ごせないでごわす」
「そうだね。俺も頑張るよ」
「頼りにしているでごわす。ようこそ次男坊組合へ、、、、」
「あっ俺の名前は、セル・マーケット。商人らしい名前でしょ」
「そうでごわすな。セル殿のこと歓迎するでごわすよ」
動物を狩るハンターを生業としている集落でもサブロー様に手を貸すべきだと立ち上がった男がいた。
「頭領、動物を狩ることも確かに大事だ。だが、今この時俺たちの生活を良くしてくれたサブロー様に手を貸さないって選択はちょっとあり得ないんじゃねぇのか?」
「話は済んだはずだよ。アタイらは、民のために動物の肉を安価で市場に下ろす。それで十分貢献してるだろうってね」
「それとこれとは話が違うだろう。頭領、確かに戦争だ。人を射ることに抵抗があるのはわかる。でもよ。オダ郡には、弓を専門的に扱える奴は少ないって聞く。その点、俺たちは弓の扱いにかけては長けてる。俺たちが手を貸すことによって、救われる人の命ってのもあるんじゃねぇのか?」
「スナイプ、アンタの言い分もわかる。でもアタイの考えは変わらないよ。どうしてもって言うなら、ここで有志を募って行きな。個人の判断にアタイは任せるさ」
「頭領、感謝する。必ず生きて帰るって約束するよ母さん」
「全く、親を困らせるなんて、とんだ親不孝者だよアンタは。サブロー様のお陰で、商人からのピンハネも無くなった。アタイらの暮らしが良くなってのも確かさ。それに協力したいって有志が居るならアタイは止めないよ。それにアンタの弓の腕前はこの集落で随一だ。遅れを取ることはないだろうさ。気張ってきな」
「あぁ、サブロー様にスナイプありって轟かせてやる」
「大きく出たもんだね。誰に似たんだか」
こうして、いろんな集落や街からサブローが治める直轄地の居城に民が押し寄せたのである。
その数、千。
この数を少ないと思うか多いと思うか。
千人もの民兵が死ぬことも厭わずサブローのため駆けつけたのだ。
それも身分も全く異なる人たちがサブローのためにと心を一つにして集まったのだ。
これは、民からサブローが絶大な信頼を得ている証拠である。
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