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2章 オダ郡を一つにまとめる
38話 感心するセーバス
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セーバスの元にもサブロー・ハインリッヒが広く商人を求めているという御触れが届いていた。
「ほほぉ。サブロー様は、こう来ましたか。恐らく、この意図は、旧来の御用商人を一度に集める策であろう。その目的は、民を虐げてきた彼らの地位の失墜。いやはや。こんな小さな文字で、参加するように求めているところにグラン商会が居ては、契約書を良く読み込む商人たちは何か裏があると見て、動かぬ。よもやそこまで考えるとは。8歳の子供と侮っていたのは、ワシもかの。サブロー様は、間違いなくラルフ様を超える才覚の持ち主じゃ。とするとナバルにも攻め込める口実がありつつタルカに狙いを定めたのも。その先を見据えてのことか。いやはや、全く面白い。ワシももう少し若ければ、お側でお支えしたかったものよ」
サブロー・ハインリッヒの楽市・楽座という新たな施策に深く感銘を受け、悪徳商会の取り潰し、陛下からタルカを攻める大義名分を得た鮮やかさに驚嘆したセーバス。
「それにしても養父上。サブロー様も商売の独占禁止というのは、大きく出ましたね。オダ郡では、グラン商会が長年ロルフ様に賄賂を送り、便宜を図ってもらって幅を聞かせて、他の商会に嫌がらせをしていましたからね」
孫と話すかのようにゆったりとした口調で話すセーバスの前に座っている17歳ぐらいの少年が今期のマルケス商会の収支決算報告書を纏めながら顎に手を当て、冷静な口調で答えた。
この青年の名前をルカ・マルケスという。
元少年奴隷であり、セーバスに買い取られなければ、非力な身体で戦場でこき使われて死んでいただろうと深く感謝し、セーバスのためにマルケス商会を盛り立てることに力を注ぐ青年である。
「それにしても、奴隷の扱いが最低であったロルフ様からあのような傑物が産まれるとは、いやはや長生きはするもんじゃな。ルカや。それが済んだら休むのじゃ」
「お気遣い感謝致します。あの養父上?」
「ルカ、浮かない顔をして、どうしたのじゃ?」
「私は、サブロー様のお力になるのが良いかと思います。養父上が残りの人生をかけて、お支えするに足る人物かと」
「なんじゃ。背中を押しているのかルカよ」
「やらないで後悔するよりもやって後悔する方が良いかと」
「こりゃ一本取られたわい。確かにそうじゃ。しかし、何度も訪ねてくれたレイヴァンド卿を無碍にしているのじゃ。それに悪徳商人の呼び出しから顔を見せておらん。恐らく諦めたのじゃろう」
「なら、こちらから!」
「それはできん。ワシは、判断を間違えたのじゃ。サブロー様をまだまだ小さな子供だと。もう立派にこのオダ郡を治める領主であったのにな。レイヴァンド卿は、サブロー様をよく育ててくれなさった。ラルフ様も喜んでおられよう」
「養父上」
それ以上は何も言えないとルカは黙り込む、そこにレオが駆け込んでくる。
「親父!兄者!さ、さ、さ、サブロー・ハインリッヒが来た!」
「「サブロー様が!?」」
全く、予想だにしていないセーバスとルカだが話は、サブロー・ハインリッヒがグラン商会を含む悪徳商人を一切排除した時に戻る。
「やはり、マルケス商会は、来なかったか」
「若、その事で」
「ハッハッハッハ。いやぁ愉快愉快。子供ばかりを買う奴隷商人、いやはや。その実在は、子供を守る商人だったか」
「若、それは待ってください。ってえっ?子供を守る商人とは、どういう事ですか若?」
「ロー爺よ。勿論、あの御触れにも細工をしていたのだ」
「まさか!?」
ローは、御触れを丁寧に読み込み、小さな文字のところに行き着いた。
「尚、この召集に応じてくれた商会の中にグラン商会、、、、、、、、、、、、」
「若、これはどういう事ですか!?ここに書かれている今回召集に応じてくれた商会の全てが此度集まった者たちばかり」
「ロー爺よ。ワシがただ遊んでいただけとでも思っておったのか?情報は宝だ。ゆえにワシも市場に出て、民から話を聞いて回ったのだ。案外変装すると皆分からんものだな。ペラペラと噂話を聞かせてくれたものだ」
「若には、驚かされてばかりですな。では、粛清対象の全てが今回応じたわけですな」
「うむ。そもそも商人たるものどんなに小さく書かれていても契約書は読み込むものだ。読み込まなかった時点で商人かぶれ、所謂、商人を隠れ蓑にして、悪さをしていた奴らという事よ。まぁ、その中で、歯ごたえのある奴が出てきてくれた方が楽しめたのだがな。簡単すぎて、実に暇であったな」
「若、付き合ってもらいたいところがあります」
「うむ。行くかマルケス商会に」
「全く、若には敵いませんな」
「ロー爺よ。自信を持て、お前には人を見る目がある。まぁマッシュの奴は例外だがな」
「若、まさか本当に面白いってだけで登用したんじゃないでしょうな」
「さぁな」
マッシュの奴は、仕える男に恵まれなかっただけのことだ。
あれだけ部下に人望があるのだ。
まぁ、名前が面白かったのは、大きな採用基準ではあったがな。
こうして、サブロー・ハインリッヒはロー・レイヴァンドと共にマルケス商会を訪れたのである。
「ほほぉ。サブロー様は、こう来ましたか。恐らく、この意図は、旧来の御用商人を一度に集める策であろう。その目的は、民を虐げてきた彼らの地位の失墜。いやはや。こんな小さな文字で、参加するように求めているところにグラン商会が居ては、契約書を良く読み込む商人たちは何か裏があると見て、動かぬ。よもやそこまで考えるとは。8歳の子供と侮っていたのは、ワシもかの。サブロー様は、間違いなくラルフ様を超える才覚の持ち主じゃ。とするとナバルにも攻め込める口実がありつつタルカに狙いを定めたのも。その先を見据えてのことか。いやはや、全く面白い。ワシももう少し若ければ、お側でお支えしたかったものよ」
サブロー・ハインリッヒの楽市・楽座という新たな施策に深く感銘を受け、悪徳商会の取り潰し、陛下からタルカを攻める大義名分を得た鮮やかさに驚嘆したセーバス。
「それにしても養父上。サブロー様も商売の独占禁止というのは、大きく出ましたね。オダ郡では、グラン商会が長年ロルフ様に賄賂を送り、便宜を図ってもらって幅を聞かせて、他の商会に嫌がらせをしていましたからね」
孫と話すかのようにゆったりとした口調で話すセーバスの前に座っている17歳ぐらいの少年が今期のマルケス商会の収支決算報告書を纏めながら顎に手を当て、冷静な口調で答えた。
この青年の名前をルカ・マルケスという。
元少年奴隷であり、セーバスに買い取られなければ、非力な身体で戦場でこき使われて死んでいただろうと深く感謝し、セーバスのためにマルケス商会を盛り立てることに力を注ぐ青年である。
「それにしても、奴隷の扱いが最低であったロルフ様からあのような傑物が産まれるとは、いやはや長生きはするもんじゃな。ルカや。それが済んだら休むのじゃ」
「お気遣い感謝致します。あの養父上?」
「ルカ、浮かない顔をして、どうしたのじゃ?」
「私は、サブロー様のお力になるのが良いかと思います。養父上が残りの人生をかけて、お支えするに足る人物かと」
「なんじゃ。背中を押しているのかルカよ」
「やらないで後悔するよりもやって後悔する方が良いかと」
「こりゃ一本取られたわい。確かにそうじゃ。しかし、何度も訪ねてくれたレイヴァンド卿を無碍にしているのじゃ。それに悪徳商人の呼び出しから顔を見せておらん。恐らく諦めたのじゃろう」
「なら、こちらから!」
「それはできん。ワシは、判断を間違えたのじゃ。サブロー様をまだまだ小さな子供だと。もう立派にこのオダ郡を治める領主であったのにな。レイヴァンド卿は、サブロー様をよく育ててくれなさった。ラルフ様も喜んでおられよう」
「養父上」
それ以上は何も言えないとルカは黙り込む、そこにレオが駆け込んでくる。
「親父!兄者!さ、さ、さ、サブロー・ハインリッヒが来た!」
「「サブロー様が!?」」
全く、予想だにしていないセーバスとルカだが話は、サブロー・ハインリッヒがグラン商会を含む悪徳商人を一切排除した時に戻る。
「やはり、マルケス商会は、来なかったか」
「若、その事で」
「ハッハッハッハ。いやぁ愉快愉快。子供ばかりを買う奴隷商人、いやはや。その実在は、子供を守る商人だったか」
「若、それは待ってください。ってえっ?子供を守る商人とは、どういう事ですか若?」
「ロー爺よ。勿論、あの御触れにも細工をしていたのだ」
「まさか!?」
ローは、御触れを丁寧に読み込み、小さな文字のところに行き着いた。
「尚、この召集に応じてくれた商会の中にグラン商会、、、、、、、、、、、、」
「若、これはどういう事ですか!?ここに書かれている今回召集に応じてくれた商会の全てが此度集まった者たちばかり」
「ロー爺よ。ワシがただ遊んでいただけとでも思っておったのか?情報は宝だ。ゆえにワシも市場に出て、民から話を聞いて回ったのだ。案外変装すると皆分からんものだな。ペラペラと噂話を聞かせてくれたものだ」
「若には、驚かされてばかりですな。では、粛清対象の全てが今回応じたわけですな」
「うむ。そもそも商人たるものどんなに小さく書かれていても契約書は読み込むものだ。読み込まなかった時点で商人かぶれ、所謂、商人を隠れ蓑にして、悪さをしていた奴らという事よ。まぁ、その中で、歯ごたえのある奴が出てきてくれた方が楽しめたのだがな。簡単すぎて、実に暇であったな」
「若、付き合ってもらいたいところがあります」
「うむ。行くかマルケス商会に」
「全く、若には敵いませんな」
「ロー爺よ。自信を持て、お前には人を見る目がある。まぁマッシュの奴は例外だがな」
「若、まさか本当に面白いってだけで登用したんじゃないでしょうな」
「さぁな」
マッシュの奴は、仕える男に恵まれなかっただけのことだ。
あれだけ部下に人望があるのだ。
まぁ、名前が面白かったのは、大きな採用基準ではあったがな。
こうして、サブロー・ハインリッヒはロー・レイヴァンドと共にマルケス商会を訪れたのである。
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