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1章 第六天魔王、異世界に降り立つ
10話 マジカル王国の思惑
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マジカル王国がガルディアン王国とアイランド公国の連合軍とショアランド平原にて、戦をする少し前のこと。
「宰相殿がお呼びとのことで、こちらに参りました。入ってもよろしいでしょうか?」
ドアをノックして、めんどくさそうな声で入出の有無を尋ねる男に柔和な声で入出を促すレベゼンスター。
「お入りください。メルセン殿」
一国の宰相が外交関係を務める文官を呼び出す必要がある案件が発生したということだ。
メルセンは、恐らく此度も新兵の訓練のために攻め込んできたガルディアン王国との事かと考え、思案しながら入る。
「失礼します」
入出したメルセンは驚いた。
そこには、マジカル王国に似つかわしくない身体中傷だらけで隻眼の男が得物であろう偃月刀を手に、立っていた。
知らないものからしたらまるでレベゼンスター宰相を襲っているように見えるだろう。
実際は違う、この男はマジカル王国に産まれながら魔力に愛されなかったはみ出しものだがその圧倒的武力を持つことからレベゼンスターの持つ一撃必殺の槍と呼ばれているバルダル将軍だ。
「バルダル将軍も御一緒でしたか」
メルセンは、この男が苦手だ。
それは何故か?
レベゼンスター以外に向けられるその視線は鋭く、まるで敵か味方かを測っているかのように疑い深い目を向けているかのような圧迫感を感じるからだ。
「メルセン、俺が居たら不服か?」
野太い声で、お前は有能か無能かどっちだと言わんばかりで、萎縮してしまう。
「いえ、そのようなことは、ですが、これでハッキリしました。バルダル将軍が居られるということは、此度のガルディアン王国との事で、呼ばれたのでしょう?」
「まぁ、そう怯えないでください。リラックスして、先ずは椅子に座ってください」
24歳で宰相という地位に登り詰めたレベゼンスターは、相変わらず柔和な声色で、二回りも年上のメルセンに敬意を払いつつソファーに座るように促す。
「失礼します」
メルセンもレベゼンスターの事は、若いのに類稀なる知恵ととんでもない魔法力を持ち、最年少で宰相という国政を補佐する立場に付いても尚、誰に対してもこのように落ち着いて柔和に応対しているところに好感を持っている。
「メルセン殿のお察しの通りです」
「では、ガルディアン王国と戦後処理ということですね。喜んでお受けしましょう」
「勝手に話を進めるな」
レベゼンスターの後ろに立ちこちらにずっと圧力をかけているバルダルに制される。
「全く、バルダル、君は顔が怖いんだからメルセン殿が怯えさせてはダメだと言いましたよね?約束が守れないのなら同席は遠慮して貰いたいのですが」
「それはならん。いつ何処で誰が我が主の首を狙っているかわからぬからな」
大きくため息を付くレベゼンスター。
「はぁ。とにかく、邪魔はしないでくれるかな?口も挟まないこと、わかったかい?」
まるで駄々っ子を言いくるめるようにバルダルに言う姿を見ているとシュールな光景だ。
「そろそろ、ガルディアン王国とアイランド公国にうんざりしてきまして、ね。ここらで楔を打ち込もうかと思っています。その後始末をメルセン殿にお願いしたいのです」
「あの両国はズブズブの関係です。楔を打ち込むなど可能なのですか?」
「それは、可能です。オダ郡の領主、ロルフ・ハインリッヒの暗殺を考えています。暗殺といっても、僕の剣は隠れるには不向きですけどね」
「我が主よ。それ程でもない」
「いや、褒めてはないんだけどなぁ。まぁ、失敗はないと思っているけどね」
「ふむ。しかしロルフ・ハインリッヒの暗殺でアイランド公国に楔を打ち込めるとは俄かに信じられません」
「いえ。正確には、きっかけにしようかと考えています。ロルフ・ハインリッヒは、先代のラルフ殿と違い、徹底的な階級社会を作り出しました。その結果、奴隷たちの待遇はどの国よりも最悪。女もまるで子供を産むための道具とでもいうばかり、30を超えても結婚していない女性には、高い税金を課し奴隷へと身を堕とさせ貴族や士族が使用人と称して、閉じ込めて子を産ませ続けているとも言われています。そして、奴隷の身分の者が産んだものも奴隷。この悪循環に対して、鬱憤を募らせている者も数多くいるでしょう」
「まさか!?宰相殿は、内乱を起こさせてアイランド公国を弱らせようと?」
「えぇ、国力が弱くなれば、ガルディアン王国として、価値のなくなったアイランド公国も攻撃対象となるでしょう。ガルディアン王国は、定期的な新兵の訓練と称して、我が軍の領土に侵攻しアイランド公国の国力を低下させているのですから」
「では、私に何をせよと?」
「此度の戦が終わる頃合いを見計らって、オダ郡を訪ねてください。メルセン殿には、新しく領主となるロルフ・ハインリッヒの嫡男サブロー・ハインリッヒを見極めてもらいたいのです」
「見極めるとは、どういうことでしょうか?」
「そんな事は、自分で考えろ。何でもかんでも我が主に求めるな」
「黙っていなさいと言いましたよね。全く、悪気は無いのです。そう怯えないでください」
怯えるなと言われても無理である。
筋肉隆々の男がこちらを射殺すような視線をずっと向けているのだから。
「わかっています」
「私にできるか分かりませんがお受けしましょう」
「えぇ、宜しくお願いします」
こうして、メルセンがオダ郡に向かうこととなり、こうして扉をノックすると先程、若様に聞いてきますと走って行ったフリフリのエプロンを付けた女性に案内されて、サブロー・ハインリッヒと対面を果たしたのである。
「宰相殿がお呼びとのことで、こちらに参りました。入ってもよろしいでしょうか?」
ドアをノックして、めんどくさそうな声で入出の有無を尋ねる男に柔和な声で入出を促すレベゼンスター。
「お入りください。メルセン殿」
一国の宰相が外交関係を務める文官を呼び出す必要がある案件が発生したということだ。
メルセンは、恐らく此度も新兵の訓練のために攻め込んできたガルディアン王国との事かと考え、思案しながら入る。
「失礼します」
入出したメルセンは驚いた。
そこには、マジカル王国に似つかわしくない身体中傷だらけで隻眼の男が得物であろう偃月刀を手に、立っていた。
知らないものからしたらまるでレベゼンスター宰相を襲っているように見えるだろう。
実際は違う、この男はマジカル王国に産まれながら魔力に愛されなかったはみ出しものだがその圧倒的武力を持つことからレベゼンスターの持つ一撃必殺の槍と呼ばれているバルダル将軍だ。
「バルダル将軍も御一緒でしたか」
メルセンは、この男が苦手だ。
それは何故か?
レベゼンスター以外に向けられるその視線は鋭く、まるで敵か味方かを測っているかのように疑い深い目を向けているかのような圧迫感を感じるからだ。
「メルセン、俺が居たら不服か?」
野太い声で、お前は有能か無能かどっちだと言わんばかりで、萎縮してしまう。
「いえ、そのようなことは、ですが、これでハッキリしました。バルダル将軍が居られるということは、此度のガルディアン王国との事で、呼ばれたのでしょう?」
「まぁ、そう怯えないでください。リラックスして、先ずは椅子に座ってください」
24歳で宰相という地位に登り詰めたレベゼンスターは、相変わらず柔和な声色で、二回りも年上のメルセンに敬意を払いつつソファーに座るように促す。
「失礼します」
メルセンもレベゼンスターの事は、若いのに類稀なる知恵ととんでもない魔法力を持ち、最年少で宰相という国政を補佐する立場に付いても尚、誰に対してもこのように落ち着いて柔和に応対しているところに好感を持っている。
「メルセン殿のお察しの通りです」
「では、ガルディアン王国と戦後処理ということですね。喜んでお受けしましょう」
「勝手に話を進めるな」
レベゼンスターの後ろに立ちこちらにずっと圧力をかけているバルダルに制される。
「全く、バルダル、君は顔が怖いんだからメルセン殿が怯えさせてはダメだと言いましたよね?約束が守れないのなら同席は遠慮して貰いたいのですが」
「それはならん。いつ何処で誰が我が主の首を狙っているかわからぬからな」
大きくため息を付くレベゼンスター。
「はぁ。とにかく、邪魔はしないでくれるかな?口も挟まないこと、わかったかい?」
まるで駄々っ子を言いくるめるようにバルダルに言う姿を見ているとシュールな光景だ。
「そろそろ、ガルディアン王国とアイランド公国にうんざりしてきまして、ね。ここらで楔を打ち込もうかと思っています。その後始末をメルセン殿にお願いしたいのです」
「あの両国はズブズブの関係です。楔を打ち込むなど可能なのですか?」
「それは、可能です。オダ郡の領主、ロルフ・ハインリッヒの暗殺を考えています。暗殺といっても、僕の剣は隠れるには不向きですけどね」
「我が主よ。それ程でもない」
「いや、褒めてはないんだけどなぁ。まぁ、失敗はないと思っているけどね」
「ふむ。しかしロルフ・ハインリッヒの暗殺でアイランド公国に楔を打ち込めるとは俄かに信じられません」
「いえ。正確には、きっかけにしようかと考えています。ロルフ・ハインリッヒは、先代のラルフ殿と違い、徹底的な階級社会を作り出しました。その結果、奴隷たちの待遇はどの国よりも最悪。女もまるで子供を産むための道具とでもいうばかり、30を超えても結婚していない女性には、高い税金を課し奴隷へと身を堕とさせ貴族や士族が使用人と称して、閉じ込めて子を産ませ続けているとも言われています。そして、奴隷の身分の者が産んだものも奴隷。この悪循環に対して、鬱憤を募らせている者も数多くいるでしょう」
「まさか!?宰相殿は、内乱を起こさせてアイランド公国を弱らせようと?」
「えぇ、国力が弱くなれば、ガルディアン王国として、価値のなくなったアイランド公国も攻撃対象となるでしょう。ガルディアン王国は、定期的な新兵の訓練と称して、我が軍の領土に侵攻しアイランド公国の国力を低下させているのですから」
「では、私に何をせよと?」
「此度の戦が終わる頃合いを見計らって、オダ郡を訪ねてください。メルセン殿には、新しく領主となるロルフ・ハインリッヒの嫡男サブロー・ハインリッヒを見極めてもらいたいのです」
「見極めるとは、どういうことでしょうか?」
「そんな事は、自分で考えろ。何でもかんでも我が主に求めるな」
「黙っていなさいと言いましたよね。全く、悪気は無いのです。そう怯えないでください」
怯えるなと言われても無理である。
筋肉隆々の男がこちらを射殺すような視線をずっと向けているのだから。
「わかっています」
「私にできるか分かりませんがお受けしましょう」
「えぇ、宜しくお願いします」
こうして、メルセンがオダ郡に向かうこととなり、こうして扉をノックすると先程、若様に聞いてきますと走って行ったフリフリのエプロンを付けた女性に案内されて、サブロー・ハインリッヒと対面を果たしたのである。
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