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5章 天下統一

追われる劉備、驚く呂壱

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 劉備軍が呉に差し掛かった頃、その背を追うように孫静率いる軍が現れた。

 孫静「蜀漢がここに何のようだ!」

 劉備「だから呉王に呼ばれたと言っているだろう!」

 孫静「生憎、そのような話を呉王様からお聞きしていない!捕えさせてもらうぞ」

 勿論、演技である。
 しかし、この騒ぎに驚いているのは呂壱と孫暠である。

 孫暠「これは、俺は隠れておくべきでは無いか呂壱?」

 呂壱「そうですな。俺が用意した離れの方に」

 孫暠「うむ」

 追われている劉備を援護するかのように呉城の門が開く。

 徐薊「この騒ぎは何です?孫静」

 孫静「奥方様。劉備が呉王様に招待されたなどと言うので、その背を追っていたのです」

 徐薊「その話は事実です。そうですね呂壱?」

 呂壱「はい。呉王様より、劉備殿と和解したという申し出があり、御足労願ったのです。劉備殿、こちらの不手際で怖い思いをさせたこと、申し訳なく」

 孫静「そういう大事なことは、全領地に周知するべきだろう!孫匡様や孫朗様は知っているのか?」

 呂壱「手紙にて。孫静殿にも、お越しいただくように手紙を出したはずですが」

 孫静「そのような手紙などいただいて居ない!」

 呂壱「それは申し訳ございませんでした。あの、劉備殿?この大きな木像の姿は、孫翊様ではなく俺なのですが」

 劉備「はい。尚香から呂壱殿は、こういうのを喜ぶとお聞きしたので、お近づきの印に」

 呂壱「しかし(何と見事な木像であろう。それもワシを模った。欲しい。喉から手が出るほど欲しいが。それはそれはと受け取れば、まるで、この呉の支配者がワシだと認めることとなる。正確には、この後の政変で、孫暠にする予定だが)」

 孫尚香「何よ。しばらく会わないうちに偉くなったものね呂壱。玄徳様の御厚意が受け取れないって言うの?随分なこと」

 呂壱「姫様。相変わらずお美。ゴホン。しかし、このようなものを貰っては、民たちが呉の支配者が孫翊様ではなく、俺だと勘違いするかも知れません。それは、色々と不味いので」

 孫尚香「そんなの知らないわ。こっちは、呂壱が喜ぶものを持ってきただけよ。それに、あっちの知らない男は、もう一つの木像に興味津々じゃない」

 劉備「こちらはおしどり夫婦と聞いていた孫翊様への貢物だったのだが。困ったな」

 徐薊「あれは、私ですか?」

 劉備「はい。尚香から呉王様の性格を聞いていまして、喜ぶのでは無いかと。ちなみにあの方はどなたです?」

 徐薊「嬀覧よ。叔弼の部下よ」

 劉備「そうでしたか。徐薊様も苦労されていらっしゃるようですね」

 徐薊「えぇ。ホントに。いや、そんなことないわ。あんな奴でも叔弼の大事な部下ですもの(危ない危ない。危うく同意しかけたわ。ここには、呂壱の目もあるし、ボロを出さないようにしないと)」

 嬀覧「なぁ、劉備。この木像、俺にくれよ。なっ。貢物なんだから誰にくれても良いだろ?」

 劉備は、この言葉を待ってましたとばかりに耳打ちする。

 劉備「実は、嬀覧殿に特別にお見せしたいものが後で、邸宅に伺っても?」

 嬀覧「それより、これくれんのかよ?どうなんだよ」

 劉備「これの等身大の木像があります。そちらも呉王様への貢物の予定でしたがまだ誰にも見せていませんから角も立たないかと」

 嬀覧「何だよ。そうならそうと言ってくれよ。おぅおぅ。後で、邸宅に来てくれや劉備」

 徐薊「嬀覧、お客様に馴れ馴れしいですわよ!」

 嬀覧「おっと。そうでした。そうでした。ようこそ呉へ。劉備殿。歓迎しますよ」

 劉備「ありがとう。ところで呉王様の姿が見えませんが、体調でも崩されたのですか?」

 呂壱「そ、それは」

 徐薊「御安心ください。叔弼は、劉備殿をお迎えする準備をしているのです」

 劉備「そうでしたか。では、御案内をお願いできますか?妻も義父も久々に再会できると喜んでいますので」

 徐薊「かしこまりました。こちらへどうぞ」

 案内された呉城内では、遠くを虚な目で見つめている孫翊がまるで定型文を言わされているかのように話す。

 孫翊「この度は、こちらが仕掛けた戦についての謝罪で、蜀漢の首相を呼び寄せたこと、真に申し訳なく思う。このような」

 劉備「いえいえ、構いませんよ。仲良くしたいと思って、こちらに来るのは当然のことですから」

 孫翊「このような提案を受けてくれたこと嬉しく思う。今日が」

 劉備「だから堅苦しいのは大丈夫ですよ」

 孫翊「今日が双方にとって、良き日となれば幸いだ。ささやかだが」

 劉備「いえいえ、お気遣いなく」

 孫翊「ささやかだが宴の準備をさせてもらった。飲んで騒いで楽しんでくれると幸いだ」

 劉備「あの、先程から話が噛み合ってない気がするのですが」

 呂壱「呉王様は過度な緊張で、自分の言いたいことを忘れないうちに言い切ったのです」

 徐薊「叔弼、もう大丈夫よ。辛かったわね。尊厳の塊のような貴方が先に喧嘩ふっかけて、謝るのですから。偉かったわね」

 その言葉を聞くとふっと椅子にもたれかかって、退室の言葉を述べる。

 孫翊「後は、任せる。俺は疲れたので、休む。薊、付いて来い」

 徐薊「はい(取り敢えず、呂壱から叔弼を遠ざけるのは成功ね)」

 呂壱「呉王様は、寝ずに歓迎の準備をしていたのです。休ませてもらえますか劉備殿?」

 劉備「えぇ。そういうことでしたら、我々も今日のところは、宴は、呉王様が元気になってからで」

 孫堅「少し見ない間に、弱くなったようだな翊」

 孫権「呉王として、立派に責務を務めているのでしょう」

 孫尚香「昔の孫翊兄様ならもっと頑張ってたわ」

 呂壱「ハハハ。これは痛いことを。確かに最近疲れからか遠くを見つめることが多いのです。こちらのことは気にせずせっかくの料理と酒も無駄になりますから皆様で、楽しんでください」

 こうして、宴は普通に終わり、夜を迎える。
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