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4章 三国鼎立

孫権の処遇

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 文聘が捕らえた孫権は捕虜として丁重に扱われていた。そこに孫尚香が訪ねてくる。
 孫尚香「御苦労様。少し良いかしら?」
 門番「これは奥方様!はい、勿論です」
 扉が開かれて中に入っていく孫尚香。
 孫権「フン。すっかり簒奪者の嫁と成り下がったな尚香」
 孫尚香「権兄様、どうしてわかってもらえないのです。玄徳様と戦をするなど無駄なことです。父上も共存を願って私を玄徳様の元に」
 孫権「煩い!父上を長沙から追い出したのは誰だ。劉備だ。兄上が血を流してまで守り抜いた長沙を簡単に手放したんだぞ!我ら兄弟はそのことを知っている。お前もそこにいたではないか!」
 孫尚香「えぇ。でも、あの後袁術の本隊が来てたら母様や叔母様は連れていかれたかもしれないわ。そしたら袁術の尖兵にされて父上が命を失っていたかもしれない。そんなことがわからない権兄様じゃないでしょう!」
 孫権「そんな起こってもいないことを申して、何の意味がある。結果が物語っているでは無いか。劉備は徐州を取り、揚州の北部を袁術から強奪し、そして此度は交州をも奪ったのだぞ!」
 孫尚香「違うわ!玄徳様はどこも奪ってなんか居ない!徐州は曹操の虐殺から民を助けるため。揚州北部は、悪戯に皇帝を名乗り民を混乱させた袁術を討つため。交州は、助けを求めた父様を助けるためよ!簒奪なんて酷い言い方しないで!」
 孫権「すっかり毒されたみたいだな。お前も父上も家族を裏切ったのだ!兄上だけが家族を守ろうと頑張っているのだ!」
 孫尚香「それは違う!家族を守ろうとして玄徳様と戦ってどうなった?権兄様だってこうやって今捕まってるじゃない!殺すこともできるのにどうして殺されないと?」
 孫権「兄上が交渉しているからに決まっているだろう。で、俺の釈放はいつだ」
 孫尚香「何も連絡なんか来てないわよ!玄徳様が私と父様のために、処罰しないで待ってくれてるからよ!」
 孫権「そんなのは嘘だ。そうかそうか今度は俺を抱き込むつもりか。劉備め。俺は絶対に屈さぬぞ」
 孫尚香「どうしてわかってくれないのよ!家族が争って何の意味があるのよ!」
 孫権「お前など家族ではない!俺の家族は、兄上と弟たちだけだ!さぞかし劉備との夜が気持ちよかったのであろうな。この売国奴が!」
 孫尚香「まだ、まだやってないわよ!玄徳様は誠実な方なの権兄様と違ってね。そっ、私のことをそんな風に思ってたのね。聞いたかしら練師」
 歩練師「はい。姫様」
 孫権「その綺麗な女性は誰だ?」
 孫尚香「私の侍従を務めてくれているの」
 歩練師「歩練師ホレンシと申します。お見知り置きくださいませ」
 孫尚香「もう、違うでしょ。私と同じく玄徳様の」
 歩練師「姫様、それはまだその。姫様がまだですので、私なんかが」
 孫尚香「もう可愛いんだから。どう歩練師は?あらあら見惚れちゃって、権兄様の好みよね。でもね権兄様は何一つ手に入れられないの。だって、男として魅力的じゃ無いんですもの。全部全部、玄徳様に取られちゃうのよ。だって玄徳様は男として権兄様なんかよりも何倍も優秀なんだから。でもねそれじゃあ可哀想でしょ。だから権兄様に提案なんだけど。玄徳様の義息子にならない?」
 孫権「何を言っている?劉備が俺より何倍も優秀だと。そんなことはありえん!ふざけるなこの売女が」
 孫尚香「あらあら妹に対して売女だなんて酷いじゃない。あっ、もっと心を折らないとダメかしら。そうね。じゃあ、権兄様の前で玄徳様に初めてを奪ってもらうのも良いかもね。好みの女性と妹が目の前で散らされる姿。男としてこれ以上の屈辱は無いでしょ。でも玄徳様ってものすごい優しい御方だから」
 歩練師「姫様。それならゴニョゴニョしては如何ですか?」
 孫尚香「それ最高よ練師」
 孫権「何を企んでいる」
 孫尚香「楽しみにしててね権兄様。家族じゃないって言ったことを死ぬ程後悔させてあげるから。それが嫌ならわかってるわよね。答えが出たら言いなさい」
 歩練師「姫様を怒らせすぎましたね。それでは」
 2人が出ていくと項垂れている孫権。
 門番「全く姫様もお人が悪いですなぁ」
 孫尚香「そう。これも紅ちゃんのためだから。あんな男でも好きな人がいるんだから仕方ないじゃない。それに、お似合いでしょ袁術の娘で玄徳様の養女なんだから。しっかり見張ってるのよ黄蓋」
 門番に変装していた黄蓋が現れる。
 黄蓋「まぁ、それは殿にもキツく言われてますからな。ですが、あそこまで心を折らなくても良かったのではないですかな?」
 孫尚香「もう2度と家族が争ってほしくないのよ。そのためなら心を鬼にもするわ」
 歩練師「流石、姫様です。男としての尊厳も踏み潰しちゃいましょう」
 孫尚香「そうならないことを祈りたいものね。父様は、また祖茂のところかしら?」
 黄蓋「えぇ、一命を取り留めたとはいえ、復帰できるまでには暫くかかるでしょうからな。ですが無事でこちらも安堵致した」
 孫尚香「そうね。ところで父様が交州を任されることになって、玄徳様に仕えるという話は本当なの?」
 黄蓋「お耳が早いですなぁ。残りの人生を漢室復興に捧げるためには劉備殿と協力するのが1番だと御心を決められたようですな」
 孫尚香「そう。貴方たちはどうするの?」
 黄蓋「我々は殿の行くところが居場所ですからな。劉備殿に仕えるというわけではなく。あくまで殿の臣下として供をしようかと」
 孫尚香「それは心強いわ。これからも宜しくね」
 黄蓋「はっ」
 孫尚香が去っていって、孫権の返答を待って、数ヶ月立っても、孫策から捕虜となっている孫権のことについて接触はなかった。これは孫権の心を完全に折るには十分な時間であった。孫権は、孫策に見捨てられたと絶望し、同等の力を持ちながら劉備の臣下となった父孫堅と劉備の正妻の1人で妹の孫尚香を通して劉備に頭を垂れることとなる。何故、孫策が行動を起こさなかったか。それは、揚州が大きく割れていたからである。意識を取り戻さない孫策を巡って、武断派と文治派による争いを誰も止めることができなくなっていた。
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